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第一話 悪魔と契約した少年
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「ほら、さっさと運べ!」
「もたもたするな! 絶対に防具に触るなよ!」
照りつける太陽が、俺の額をじりじりと焼いていく。
夏の月が終わった秋の月でも、太陽の威力はほとんど変わらない。
アイボリーの七分丈のシャツは鉄屑の汚れに塗れ、その色がわからないくらいに薄黒い。
鉄屑を目的地まで運んでまた戻ってを繰り返すうちに、額から流れる汗は増え、シャツは汗ばみ不快感を覚えていく。
「大丈夫ですか、カトレア。少し、休んだ方が……」
「いや、平気だよ。休憩は勝手に取れないし」
俺の肩に座っているセーレが心配そうな声音を零す。
無理もない。八時間、休みを挟まずに働いているのだ。
それでも彼らは休憩しろと言わないし、俺たちも許可が出ないと休めない。
それに、俺だけ休みを取るのも不公平だ。
俺が休憩するのなら、ほかの悪魔契約者たちもベンチでジュースを飲んだり食事を摂ったりしてほしい。
「カトレア、水だけでも飲んだ方がいいと思います」
「大丈夫だよ。死にゃしないって」
「ですが……」
「おい! 私語を慎め!」
「す、すみません」
「……」
セーレが返事をせずに上官を睨みつける。
上官の前を、俺は頭を下げながら通りすぎて大量の鉄屑を目的地へと運んだ。
目的地までは徒歩二十分と遠く、運んでいる最中にすれ違う仲間たちは、みんな虚ろな瞳でぜえはあと荒い息をしながら必死に運んでいる。
みんな、一分一秒も休んでいないのだろう。
仕方がないのだ。
――俺たちは悪魔契約者なのだから。
妖精(フェアリー)、精霊(スピリット)たちの階級によって差別される国、ルーナエ王国。
この国では人が生まれたとき、精霊、もしくは妖精、悪魔が舞い降りてくる。
その者と契約を交わすと、守護者となって死ぬときまで守ってくれる。
精霊は豊かな富と国の平穏をもたらし、妖精は人々を支える役目をし、悪魔は呪いと死をもたらすものとされる。
そのため、婚姻は精霊同士、もしくは精霊と妖精、悪魔同士を推奨している。
何故なら、悪魔契約者(コントラクト)と婚姻を結ぶと、子供が流産や死産をしてしまったり、妻が死んでしまったりするからだ。
また、妻が悪魔契約者である場合も、こういうことは起こる。
悪魔は古代から呪いの証と言われていて、そういったケースが非常に多い。
だから悪魔契約者と婚姻は結ぶなって、よく言われている。
もし悪魔契約者が精霊契約者や妖精契約者と結婚して流産や死産になった場合は、罰として流刑に遭い、この国の最北端にあるデモニオ島に行かされ、こちらに戻ることは一切許されなくなる。
デモニオ島は悪魔が大量に棲みつく島で、食料もほとんどないし、治安も悪いし、とても寒い。もって一か月くらいだという。
悪魔契約者と結婚したら、妻が死んでしまった、子供が死んでしまったというケースがこの国ではすごく多い。
だから、悪魔契約者は蔑まれる対象にあるのだ。
「カトレア、水を持ってきました。飲んでください」
「あ! ありがとう、セーレ」
仕事終わりのへとへとになった俺に、身体を大きくしたセーレがペットボトルの水を持ってきてくれた。
悪魔や妖精、精霊は身体をミニサイズにできるし、人間と同じくらいの身長にもできるのだ。
早く飲めと目で訴えられて、蓋を開けて一気に半分くらい飲み干す。
数時間ぶりに飲んだ水はあり得ないくらいおいしくて、無限に飲める気がした。
「やっぱり、喉渇いてたんじゃないですか」
「あはは。まぁ、そうなんだけどね。でも休ませてくださーいなんて、言えないだろ」
「はぁ……」
セーレは俺が生まれたときに銀色の馬に乗って舞い降りてきたらしい。
髪は見事な金髪でとても長く、三つ編みに結わいている。
大きな赤い瞳は宝石みたいで、鼻が高く、口が小さい。
女の子だって言われたら信じちゃうくらいに美青年だ。
セーレはいつでも俺の味方をして守ってくれるし、全然嫌なやつじゃない。
俺に危害を加えそうなやつには怖い顔をして牽制したりするけど、基本いつも優しく守ってくれる。
俺はセーレを良き守護者かつ、良き友人だと思っていた。
「もたもたするな! 絶対に防具に触るなよ!」
照りつける太陽が、俺の額をじりじりと焼いていく。
夏の月が終わった秋の月でも、太陽の威力はほとんど変わらない。
アイボリーの七分丈のシャツは鉄屑の汚れに塗れ、その色がわからないくらいに薄黒い。
鉄屑を目的地まで運んでまた戻ってを繰り返すうちに、額から流れる汗は増え、シャツは汗ばみ不快感を覚えていく。
「大丈夫ですか、カトレア。少し、休んだ方が……」
「いや、平気だよ。休憩は勝手に取れないし」
俺の肩に座っているセーレが心配そうな声音を零す。
無理もない。八時間、休みを挟まずに働いているのだ。
それでも彼らは休憩しろと言わないし、俺たちも許可が出ないと休めない。
それに、俺だけ休みを取るのも不公平だ。
俺が休憩するのなら、ほかの悪魔契約者たちもベンチでジュースを飲んだり食事を摂ったりしてほしい。
「カトレア、水だけでも飲んだ方がいいと思います」
「大丈夫だよ。死にゃしないって」
「ですが……」
「おい! 私語を慎め!」
「す、すみません」
「……」
セーレが返事をせずに上官を睨みつける。
上官の前を、俺は頭を下げながら通りすぎて大量の鉄屑を目的地へと運んだ。
目的地までは徒歩二十分と遠く、運んでいる最中にすれ違う仲間たちは、みんな虚ろな瞳でぜえはあと荒い息をしながら必死に運んでいる。
みんな、一分一秒も休んでいないのだろう。
仕方がないのだ。
――俺たちは悪魔契約者なのだから。
妖精(フェアリー)、精霊(スピリット)たちの階級によって差別される国、ルーナエ王国。
この国では人が生まれたとき、精霊、もしくは妖精、悪魔が舞い降りてくる。
その者と契約を交わすと、守護者となって死ぬときまで守ってくれる。
精霊は豊かな富と国の平穏をもたらし、妖精は人々を支える役目をし、悪魔は呪いと死をもたらすものとされる。
そのため、婚姻は精霊同士、もしくは精霊と妖精、悪魔同士を推奨している。
何故なら、悪魔契約者(コントラクト)と婚姻を結ぶと、子供が流産や死産をしてしまったり、妻が死んでしまったりするからだ。
また、妻が悪魔契約者である場合も、こういうことは起こる。
悪魔は古代から呪いの証と言われていて、そういったケースが非常に多い。
だから悪魔契約者と婚姻は結ぶなって、よく言われている。
もし悪魔契約者が精霊契約者や妖精契約者と結婚して流産や死産になった場合は、罰として流刑に遭い、この国の最北端にあるデモニオ島に行かされ、こちらに戻ることは一切許されなくなる。
デモニオ島は悪魔が大量に棲みつく島で、食料もほとんどないし、治安も悪いし、とても寒い。もって一か月くらいだという。
悪魔契約者と結婚したら、妻が死んでしまった、子供が死んでしまったというケースがこの国ではすごく多い。
だから、悪魔契約者は蔑まれる対象にあるのだ。
「カトレア、水を持ってきました。飲んでください」
「あ! ありがとう、セーレ」
仕事終わりのへとへとになった俺に、身体を大きくしたセーレがペットボトルの水を持ってきてくれた。
悪魔や妖精、精霊は身体をミニサイズにできるし、人間と同じくらいの身長にもできるのだ。
早く飲めと目で訴えられて、蓋を開けて一気に半分くらい飲み干す。
数時間ぶりに飲んだ水はあり得ないくらいおいしくて、無限に飲める気がした。
「やっぱり、喉渇いてたんじゃないですか」
「あはは。まぁ、そうなんだけどね。でも休ませてくださーいなんて、言えないだろ」
「はぁ……」
セーレは俺が生まれたときに銀色の馬に乗って舞い降りてきたらしい。
髪は見事な金髪でとても長く、三つ編みに結わいている。
大きな赤い瞳は宝石みたいで、鼻が高く、口が小さい。
女の子だって言われたら信じちゃうくらいに美青年だ。
セーレはいつでも俺の味方をして守ってくれるし、全然嫌なやつじゃない。
俺に危害を加えそうなやつには怖い顔をして牽制したりするけど、基本いつも優しく守ってくれる。
俺はセーレを良き守護者かつ、良き友人だと思っていた。
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