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第七話 サブレ
しおりを挟むそれから数日。
毎日働きづめだったが、今日は週に一回設けられる通常の労働時間より一時間短く働ける日だった。
といっても大体いつも通りの労働時間にさせられるのだが……。
今日は幸いそのようなことはなく、いつもより早く上がることができた。
「サブレ一つかい? 180ビルだよ」
「ありがとうございます!」
たまにはご褒美が欲しくて、俺はセーレと一緒に菓子屋でサブレを購入した。
村にある唯一の菓子屋で、休日は繁盛している。まぁ、俺たちに休日はないんだけど……。
いつも通りアギオ湖に行って、サブレを食べることにした。
「持ちますよ、カトレア」
「ありがと、セーレ」
「その荷物でサブレの袋まで持っては、転んでしまいますから」
またもし彼に会えたら、と俺は殿下のハンカチを紙袋に入れて毎日仕事をしていた。
仕事中は荷物置き場に入れて、終わったあとはこうして手に持っている。
中にはハンカチだけでなく、こないだの礼として果物と手紙も入れていた。
もう会うことはないとわかっていても、また会えるんじゃないかと期待してこの紙袋を持ってきている。
アギオ湖に着き、泥や汚れを落としてから傍にある白いベンチに座った。
「セーレも食べるよね?」
「いいんですか?」
「いいよいいよ、いつも守ってくれるお礼」
金色のリボンをほどいて袋を開ける。
中から甘いサブレの香りがしてきて、プレーン、チョコ、ラズベリーの色がなんとも美味しそうだった。
プレーンを一口食べるとサクサクとした素朴な味とナッツの食感が舌をくすぐり、程よい甘さでやみつきになる。
「んー! 美味しい! はい、セーレも」
「……!」
セーレの口元に、ラズベリーのサブレを差し出す。
セーレは何故か顔を赤くして、サブレを見つめていた。
「……それ、僕以外の人にもやってるんですか?」
「え? うーん、セーレ以外話す人いないし、特には」
「……。それじゃあ、いただきます」
俺が差し出したサブレを口に含む。
しばらく咀嚼したあと、「甘いです」の一言が返ってきた。
俺もラズベリー味はどんなものなのかと袋から取り出して口に運ぶ。
んー! 美味しい!
ラズベリーの酸っぱさと生地の甘さが相まって、口の中が甘酸っぱさで満たされる。
これは、プレーンより食べやすいかも。
次にチョコを食べようとしたとき、後ろから足音が聞こえてきた。
ザク、ザクと土を踏む音がだんだんと近づいてくる。
後ろを振り返ると、そこには……。
「……殿下」
「久しいな。……といっても、数日ぶりか」
ベンチに座っている俺たちを、低く澄んだ声の殿下が見下ろしていた。
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