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第二十五話「彼氏ですか?『運命の番』ならいます」
◇◇◇
次の日、エリオットを見送った後レビィへとやってきた。
ちょうどルウィーナさんがドアに『臨時休業』の看板を飾るところで、私に気づくと手を振ってくれた。
「アイリスちゃん! 待ってたよ! 昨日紹介した四人もいるけどいいかい?」
ルウィーナさんが呼ぶと、店内から昨日の四人――ミル、ナジェリ、ルザック、ルトさんがやってきた。
「こんにちは! アイリスさん。今日は一緒に家具とか小物、買いにいきましょうね」
「はい。よろしくお願いします」
兎の獣人のミルさんがにこっと笑う。
ミルさんは話しやすい人で、昨日もたくさん仕事を教えてくれ、ミスをしてもアドバイスしてくれた。
他愛ない話をしつつ、ルウィーナさん含め六人で家具屋へと向かった。
「あ、これ使えそうじゃない? 飾り棚」
家具屋に到着して数分。
ナジェリさんが壁に飾られている飾り棚を指さして言った。
ホワイトオークでできた飾り棚で、たくさん小物を飾れる場所がある。
ちなみに店内の家具は白のペンキで塗られた椅子やテーブルを除いて、ほとんどの家具をルウィーナさんの収納魔法でしまったらしい。
ルウィーナさんは以前の店長から、店を継ぐときに必要な無属性魔法を習得するよう教え込まれたそうだ。
おかげでピンクと白がいっぱいだった店内は、今では白い家具と多少の小物のみしか置かれていない。
「お、かっけー! 俺もこの飾り棚家に欲しい! ルトも欲しくない!?」
「……ああ」
ルザックさんがルトさんに話しかける。
ルザックさんは元気っ子という感じで、ルトさんは無口だけれど尻尾や耳で思ってることが伝わってしまうタイプの男性だ。
実際に飾り棚を見て顔は無表情だけれど、尻尾はぶんぶんと左右に振られている。
ルトさんも欲しいと思ってるのだろう。
「これいいですね。アクセントになりそうです。ルウィーナさん、購入してもいいですか?」
「ああ! これにしよう!」
飾り棚、大人っぽい照明、額縁などを購入し、転移魔法でお店まで送ってもらえるよう店員に頼んだ。
それから小物も購入して、レストランで昼食を摂ってからレビィに戻る。
転移魔法で送ってもらった家具や小物がちゃんと全てあるか確認していたら、ルザックさんが私の前にやってきた。
「俺さ、内装変えるの大賛成なんだ。俺も今までちょっと働きにくくて……。ラブリーな感じだったじゃん? そこにこんなガタイの良い男がいるのもどうかと思ってさー」
ルザックさんが頭を掻きながら言う。
「だから俺も内装作りで、男目線でアドバイスしてもいい? もちろんアイリスさんの指示に従うからさ!」
「ぜひ、アドバイスしていただけると嬉しいです! 私はここに入ったばかりですから、たくさん意見出してほしいです」
「任せろ! ルトもたくさんアドバイスしろよ!」
「俺は……まあ、気が向いたら」
ルトさんがそっぽを向く。
でも内装を変える気は満々みたいで、尻尾がバタバタ揺れていた。
それから数時間、私たちは内装を魔法を使いながら変えていった。
白とピンクの風船ではなく、爽やかな透けるタイプの白いカーテンに。
テーブルの上にはドライフラワーや貝殻の形のランプを。
窓側ではない壁には飾り棚を飾り、小さな観葉植物やオシャレなポストカードが入った写真立てを置く。
店内の隅に大きな観葉植物を飾って、他にも木製の時計や小物を装飾し……。
「すごい! 一気に雰囲気変わった!」
ナジェリさんが小さく拍手をするほど、店内はナチュラルな内装になった。
テーマ色は白、茶、アクセントに観葉植物で緑を加え、かなり自然を感じる雰囲気だ。
かといってシンプルすぎるわけではなく、テーブルに貝殻の形のランプやドライフラワーを飾って女子ウケを狙う。
大体私が案を出して、ルザックさんにこれはどうかと聞きながら――全て「最高! やろう!」と言われた――やってみたのだけれど、なかなかこれは良いんじゃないだろうか。
「さすがアイリスちゃん! これは明日から来るお客さんたちもびっくりするだろうね!」
ルウィーナさんがニコニコと笑う。
こんなに喜んで貰えるなんて、案を出した甲斐があったというか、なんというか……。
「お客さん、増えるといいですね」
「アイリスさんがこんなに頑張ってくれたんですから、絶対増えますよ!」
「男性客も絶対来るわ! 明日は店頭に立って宣伝してみるのもいいかもしれないわね」
ミルさんとナジェリさんがはしゃいでいる。
ルウィーナさんが「シフトを作ったり内装の後処理をしてくるから、みんなは帰ってて!」と言ってくれたため、お言葉に甘えて帰ることにした。
ナジェリさんたちとは別れたけれど、ミルさんと帰り道が一緒になり、なんとなく一緒に歩く。
ミルさんは兎の獣人だからか小柄で足も腕も細くて、顔も小さい。
すごく可愛い見た目の人で、隣にいるだけで緊張してしまう。
私みたいなデブと一緒に歩いて嫌じゃないだろうか、と思ってしまうくらい。
「アイリスさん、アイリスさん」
「は、はい、なんでしょう」
「アイリスさんって、彼氏とかいるんですか?」
「えっ!?」
突然顔を覗き込まれてそんな話を振られてしまい、素っ頓狂な声を出してしまった。
「その顔は、いるって顔ですね~! いいなぁ、羨ましい」
「彼氏っていうか……『運命の番』が見つかったんです」
「えっ!? 『運命の番』!? 一生出会えるかわからないのに! アイリスさん、すごいですね……」
ミルさんが目を見開いて両手を口元にあてる。
そのあと笑みを浮かべながら「いいなぁ」「私も番に出会ってみたいなぁ」と呟いていた。
「……番ってそんなに重要なことなんですか?」
「そりゃあもう、一度巡り遭ったら離れられないって話ですよ。浮気だって絶対しないし! 独占欲だって強い!」
「……」
ミルさんが喜々として語っているのを見て、思わず俯いてしまった。
翳った私の顔を、ミルさんが心配そうに覗きこむ。
「どうしたんですか?」
「いえ……」
「番の方のことで、何か悩んでるんですか? まさか妊娠しちゃったとか!?」
「ち、違います! その……番の方は、とても優しくしてくれるんですが……それは、番だからなのかなって思うんです」
「ふんふん」
「綺麗だって言ってくれるのも、頭を撫でたりしてくれるのも、全部番だからなのかなって……」
「……」
私が不安気にミルさんと視線を合わせると、何故かミルさんはにやにやしていた。
「これは自覚してないパターンなんですかね……」
「え? 今何か言いましたか?」
「いえいえ、なんでも。番だからっていうより、単純にアイリスさんを大事にしたいからじゃないですか?」
「大事?」
「ええ。出会えるかわからない『運命の番』に出会えて、しかもこんな可愛い女の子なんですもん。大事にするに決まってるでしょう」
「……」
ミルさんの笑顔に、私は戸惑ってしまい足元を見る。
可愛い、女の子。
視線の先は、大根のような足と、ぽっこりと膨らんだお腹。
「私、こんなに太っているのに?」
「え?」
「私、こんな体型なのに、可愛いでしょうか」
「可愛いですよ、何言ってるんですか」
間髪入れず即答したものだから、顔を上げてミルさんを見た。
ミルさんは赤色の目を西日でキラキラ輝かせて、真剣な表情をしていた。
「別に太ってようがガリガリだろうが可愛い女の子は可愛いですよ。今日家具屋に行った後、一緒にレストランでご飯食べたじゃないですか。そこで、アイリスさんが美味しそうに食べてて、私もついフォークが進んじゃいました。今日だってたくさん内装を手伝ってくれましたし、アイリスさんがアドバイスをくれてすごく助かったんですよ。いっぱい食べる女の子は可愛いですし、一生懸命働く女の子は可愛いですよ」
「……」
ミルさんの真摯な言葉に、胸を打たれる。
正直、ミルさんみたいな人は、私のような容姿の女を嫌ったりするのかと思っていた。
ああ……ミリアがトラウマになってるのかもしれない。
思っていたより、私はあの婚約破棄が傷ついていたのだろう。
だから嬉しくて、胸の内にあったドロドロとしたものが浄化されていくのを感じる。
「何か気になることでもあるんですか?」
「その、前の恋人に、太っているからと振られてしまって」
「えーっ! 失礼な奴! 許せない! そんな人、私が氷魔法で凍らせますよ! カッチカチのコッチコチにしてやります!」
そう言ってミルさんが右手から涼しく感じる程度の冷気を出してきた。
内装を作っているときに言っていたのだが、ミルさんは昔宮廷魔術師を目指していて、塾のような学校に通っていたそうだ。
だから、属性魔法が使えるらしい。
でも何度技術を学んでも氷魔法しか習得できなくて、宮廷魔術師になるのは諦めたと言っていた。
「……ふふ」
ぷんぷんと怒っているミルさんが可愛い。
このカフェで働くことができて、良かったかもしれない。
これからも、もっと頑張っていこう。
次の日、エリオットを見送った後レビィへとやってきた。
ちょうどルウィーナさんがドアに『臨時休業』の看板を飾るところで、私に気づくと手を振ってくれた。
「アイリスちゃん! 待ってたよ! 昨日紹介した四人もいるけどいいかい?」
ルウィーナさんが呼ぶと、店内から昨日の四人――ミル、ナジェリ、ルザック、ルトさんがやってきた。
「こんにちは! アイリスさん。今日は一緒に家具とか小物、買いにいきましょうね」
「はい。よろしくお願いします」
兎の獣人のミルさんがにこっと笑う。
ミルさんは話しやすい人で、昨日もたくさん仕事を教えてくれ、ミスをしてもアドバイスしてくれた。
他愛ない話をしつつ、ルウィーナさん含め六人で家具屋へと向かった。
「あ、これ使えそうじゃない? 飾り棚」
家具屋に到着して数分。
ナジェリさんが壁に飾られている飾り棚を指さして言った。
ホワイトオークでできた飾り棚で、たくさん小物を飾れる場所がある。
ちなみに店内の家具は白のペンキで塗られた椅子やテーブルを除いて、ほとんどの家具をルウィーナさんの収納魔法でしまったらしい。
ルウィーナさんは以前の店長から、店を継ぐときに必要な無属性魔法を習得するよう教え込まれたそうだ。
おかげでピンクと白がいっぱいだった店内は、今では白い家具と多少の小物のみしか置かれていない。
「お、かっけー! 俺もこの飾り棚家に欲しい! ルトも欲しくない!?」
「……ああ」
ルザックさんがルトさんに話しかける。
ルザックさんは元気っ子という感じで、ルトさんは無口だけれど尻尾や耳で思ってることが伝わってしまうタイプの男性だ。
実際に飾り棚を見て顔は無表情だけれど、尻尾はぶんぶんと左右に振られている。
ルトさんも欲しいと思ってるのだろう。
「これいいですね。アクセントになりそうです。ルウィーナさん、購入してもいいですか?」
「ああ! これにしよう!」
飾り棚、大人っぽい照明、額縁などを購入し、転移魔法でお店まで送ってもらえるよう店員に頼んだ。
それから小物も購入して、レストランで昼食を摂ってからレビィに戻る。
転移魔法で送ってもらった家具や小物がちゃんと全てあるか確認していたら、ルザックさんが私の前にやってきた。
「俺さ、内装変えるの大賛成なんだ。俺も今までちょっと働きにくくて……。ラブリーな感じだったじゃん? そこにこんなガタイの良い男がいるのもどうかと思ってさー」
ルザックさんが頭を掻きながら言う。
「だから俺も内装作りで、男目線でアドバイスしてもいい? もちろんアイリスさんの指示に従うからさ!」
「ぜひ、アドバイスしていただけると嬉しいです! 私はここに入ったばかりですから、たくさん意見出してほしいです」
「任せろ! ルトもたくさんアドバイスしろよ!」
「俺は……まあ、気が向いたら」
ルトさんがそっぽを向く。
でも内装を変える気は満々みたいで、尻尾がバタバタ揺れていた。
それから数時間、私たちは内装を魔法を使いながら変えていった。
白とピンクの風船ではなく、爽やかな透けるタイプの白いカーテンに。
テーブルの上にはドライフラワーや貝殻の形のランプを。
窓側ではない壁には飾り棚を飾り、小さな観葉植物やオシャレなポストカードが入った写真立てを置く。
店内の隅に大きな観葉植物を飾って、他にも木製の時計や小物を装飾し……。
「すごい! 一気に雰囲気変わった!」
ナジェリさんが小さく拍手をするほど、店内はナチュラルな内装になった。
テーマ色は白、茶、アクセントに観葉植物で緑を加え、かなり自然を感じる雰囲気だ。
かといってシンプルすぎるわけではなく、テーブルに貝殻の形のランプやドライフラワーを飾って女子ウケを狙う。
大体私が案を出して、ルザックさんにこれはどうかと聞きながら――全て「最高! やろう!」と言われた――やってみたのだけれど、なかなかこれは良いんじゃないだろうか。
「さすがアイリスちゃん! これは明日から来るお客さんたちもびっくりするだろうね!」
ルウィーナさんがニコニコと笑う。
こんなに喜んで貰えるなんて、案を出した甲斐があったというか、なんというか……。
「お客さん、増えるといいですね」
「アイリスさんがこんなに頑張ってくれたんですから、絶対増えますよ!」
「男性客も絶対来るわ! 明日は店頭に立って宣伝してみるのもいいかもしれないわね」
ミルさんとナジェリさんがはしゃいでいる。
ルウィーナさんが「シフトを作ったり内装の後処理をしてくるから、みんなは帰ってて!」と言ってくれたため、お言葉に甘えて帰ることにした。
ナジェリさんたちとは別れたけれど、ミルさんと帰り道が一緒になり、なんとなく一緒に歩く。
ミルさんは兎の獣人だからか小柄で足も腕も細くて、顔も小さい。
すごく可愛い見た目の人で、隣にいるだけで緊張してしまう。
私みたいなデブと一緒に歩いて嫌じゃないだろうか、と思ってしまうくらい。
「アイリスさん、アイリスさん」
「は、はい、なんでしょう」
「アイリスさんって、彼氏とかいるんですか?」
「えっ!?」
突然顔を覗き込まれてそんな話を振られてしまい、素っ頓狂な声を出してしまった。
「その顔は、いるって顔ですね~! いいなぁ、羨ましい」
「彼氏っていうか……『運命の番』が見つかったんです」
「えっ!? 『運命の番』!? 一生出会えるかわからないのに! アイリスさん、すごいですね……」
ミルさんが目を見開いて両手を口元にあてる。
そのあと笑みを浮かべながら「いいなぁ」「私も番に出会ってみたいなぁ」と呟いていた。
「……番ってそんなに重要なことなんですか?」
「そりゃあもう、一度巡り遭ったら離れられないって話ですよ。浮気だって絶対しないし! 独占欲だって強い!」
「……」
ミルさんが喜々として語っているのを見て、思わず俯いてしまった。
翳った私の顔を、ミルさんが心配そうに覗きこむ。
「どうしたんですか?」
「いえ……」
「番の方のことで、何か悩んでるんですか? まさか妊娠しちゃったとか!?」
「ち、違います! その……番の方は、とても優しくしてくれるんですが……それは、番だからなのかなって思うんです」
「ふんふん」
「綺麗だって言ってくれるのも、頭を撫でたりしてくれるのも、全部番だからなのかなって……」
「……」
私が不安気にミルさんと視線を合わせると、何故かミルさんはにやにやしていた。
「これは自覚してないパターンなんですかね……」
「え? 今何か言いましたか?」
「いえいえ、なんでも。番だからっていうより、単純にアイリスさんを大事にしたいからじゃないですか?」
「大事?」
「ええ。出会えるかわからない『運命の番』に出会えて、しかもこんな可愛い女の子なんですもん。大事にするに決まってるでしょう」
「……」
ミルさんの笑顔に、私は戸惑ってしまい足元を見る。
可愛い、女の子。
視線の先は、大根のような足と、ぽっこりと膨らんだお腹。
「私、こんなに太っているのに?」
「え?」
「私、こんな体型なのに、可愛いでしょうか」
「可愛いですよ、何言ってるんですか」
間髪入れず即答したものだから、顔を上げてミルさんを見た。
ミルさんは赤色の目を西日でキラキラ輝かせて、真剣な表情をしていた。
「別に太ってようがガリガリだろうが可愛い女の子は可愛いですよ。今日家具屋に行った後、一緒にレストランでご飯食べたじゃないですか。そこで、アイリスさんが美味しそうに食べてて、私もついフォークが進んじゃいました。今日だってたくさん内装を手伝ってくれましたし、アイリスさんがアドバイスをくれてすごく助かったんですよ。いっぱい食べる女の子は可愛いですし、一生懸命働く女の子は可愛いですよ」
「……」
ミルさんの真摯な言葉に、胸を打たれる。
正直、ミルさんみたいな人は、私のような容姿の女を嫌ったりするのかと思っていた。
ああ……ミリアがトラウマになってるのかもしれない。
思っていたより、私はあの婚約破棄が傷ついていたのだろう。
だから嬉しくて、胸の内にあったドロドロとしたものが浄化されていくのを感じる。
「何か気になることでもあるんですか?」
「その、前の恋人に、太っているからと振られてしまって」
「えーっ! 失礼な奴! 許せない! そんな人、私が氷魔法で凍らせますよ! カッチカチのコッチコチにしてやります!」
そう言ってミルさんが右手から涼しく感じる程度の冷気を出してきた。
内装を作っているときに言っていたのだが、ミルさんは昔宮廷魔術師を目指していて、塾のような学校に通っていたそうだ。
だから、属性魔法が使えるらしい。
でも何度技術を学んでも氷魔法しか習得できなくて、宮廷魔術師になるのは諦めたと言っていた。
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