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第三十話「三人でランチです!」
◇◇◇
今日、私は休みの日でミルさんとナジェリさんとランチをする約束をしている。
元々ランチをしようと話していて、一か月前にシフトを合わせたのだ。
今は他の従業員がレビィで働いているのだろう。
仕事仲間とランチに行くのは初めてで、私は張り切ってお気に入りのワンピースを着た。
ライトグリーンのワンピースで、レモネードの刺繍が施されている。
胸の前には煌めくブローチがつけられていて、品があって綺麗めに着れるのだ。
「アイリスさん! こっちですー!」
「お待たせしてしまってすみません……!」
「いえ、私たちも今来たところよ」
ミルさんは白いブラウスにイエローの花柄スカートという可愛い服装で、ナジェリさんはブラウンのブラウスに白いフレアパンツと大人っぽい服装だ。
ミルさんは兎の耳にリボンを巻きつけている。
兎の獣人のアクセサリーなのだろう。ガーリーで可愛い。
ナジェリさんは耳に大きなピアスをつけていて、彼女っぽい。
私はエリオットからプレゼントで貰った腕時計を身に着けている。
……そういえば見送るとき、エリオットもしていた。
「それじゃあ、行きましょう! もうすぐ予約の時間になっちゃいますよ!」
「はい! 行きましょう!」
私とミルさん、ナジェリさんと三人で広い歩道を歩く。
今日のご飯が楽しみだとか、まだまだ寒いね、なんて他愛のない会話をしながらカフェへと向かった。
今日行くカフェは、ナチュラルな内装のパンケーキが有名なところだ。
ミルさんがよく行くカフェらしくて、私たちを連れて行きたかったらしい。
狭い階段を一列になって上っていくと、甘い匂いのする広い店内が姿を現す。
店員は獣人も人間もいて、笑顔で出迎えてくれる。
カウンターからはキッチンも覗くことができ、棚にはグラスや調味料が置かれている。
店員に案内されて白い椅子に座ると、レモン水を出されて一息つけた。
「わー、私どれにしようか迷っちゃいます」
「私はブランチプレートにしようかしら」
「私はベーコンエッグパンケーキにします」
「え! それ美味しそう~! 私もアイリスさんと同じにしていいですか?」
「大丈夫です! 一緒に頼みましょう」
私とミルさんはベーコンエッグパンケーキ、ナジェリさんはソーセージとベーコン、目玉焼きとパンケーキが乗っているブランチプレートを注文した。
ミルさんがそわそわとしながら、私に声をかける。
「ねえねえ、アイリスさん。『運命の番』さんとはどんな感じなんですか?」
「え、ど、どんな感じ……?」
「ええ、私も気になるわ」
突然やってきた私を中心とした恋バナに、前世でも今世でも話したことがなかった私は戸惑ってしまう。
「かっこいいんですか?」
「えっと……はい、かっこいいですよ」
「きゃーっ! アイリスさんもデレデレなんですね!」
「そ、そんな、私は別に……」
私が顔を赤くして俯くと、「照れてる! 可愛い~!」なんてからかわれる。
エリオットの話をぽつぽつとしている間に、料理を店員が運んできた。
ベーコンエッグパンケーキはシフォンパンケーキで、ぷるぷると揺れている。
ああ、やっぱりパンケーキのこの揺れ具合が好きなのよね……。
三人で挨拶をして一口食べれば、夢のような味が広がった。
ナジェリさんのパンケーキはしょっぱい味らしいけれど、私とミルさんのパンケーキは甘い。
ベーコンも甘く味付けされていて、だけどスイーツではなく食事の味で不思議な感覚だ。
パンケーキを食べ進めると、ベーコンとパンケーキの間にナッツが姿を現した。
キャラメルのほろ苦い味が舌に絡まって、とても美味しい。
「アイリスさんのその番の方って、何のお仕事をされている方なの?」
ナジェリさんが目玉焼きの黄味をナイフでとろけさせながら聞いてくる。
「仕事は、獣人騎士団をしていて」
「「ええっ!」」
ミルさんとナジェリさんは二人で驚きの声を上げた。
二人で顔を見合わせ、にこにこと笑い、再び私に視線を合わせて身を乗り出した。
「じゃあ今度、見に行きなよ!」
「何を、ですか?」
「何をって……模擬戦!」
「週に一、二回はやってると思いますよ! せっかくですから、見に行ってみたらどうでしょう?」
「アイリスさんは彼の職場に行ったことがないんでしょう?」
「は、はい。ないですけど……」
「きっと見たら感動するわよ! 模擬戦!」
「めっちゃかっこいいんですよ! 獣人の騎士団さんが本気で戦うんです! 真剣ではないですけど、きっと見に行って損はないと思います!」
二人が半ば興奮気味に模擬戦を語っている。
ナジェリさんに言われて気付いたけれど、そういえば私ってエリオットの職場に行ったことがなかったな。
確かにエリオットが戦っているところを見たことがないから、模擬戦は気になる。
「ちなみに番さんのお名前って、聞いても……?」
「エリオットと言います。エリオット・イルベルク」
「エリオット!?」
「あの副団長の!?」
再び二人が驚嘆する。
「そんなに有名なんですか?」
「有名も何も、団長と同じくらい剣技が上手いってこの辺じゃみんな知ってますよ! それにスタンピードを一人で抑えたり、ドラゴンだって心臓を一突きして倒した方でしょう!? 最強の獣人騎士って呼ばれている方ですよ!」
エリオットから聞いたからスタンピードを一人で抑えたりした話は知っていたけれど、まさかここまで有名な人だったなんて。
獣人のことが一切耳に入らなかった私の世間知らずさが思い知らされる。
貴族の話題ばかり拾っていた私は、本当に獣人界隈のことを知らなすぎたのだろう。
「エリオット様に申し出て、ぜひ模擬戦を見学してみてください! きっと驚くと思いますよ」
「ええ、今日にでも言おうかと思います」
「ぜひぜひー!」
模擬戦って、どんなのなんだろう。
エリオットはどんな風に戦うのだろう、と気になってしまう。
今頃エリオットはお昼休憩だろうか。
お弁当、食べているかな。
食べていたとしたら、美味しかったかな……。
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