面倒くさがり屋の異世界転生

自由人

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第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~

第45話 2日目①

 今日のところは遅刻なしにちゃんと学院についた。社長出勤は許されているが、2日目からそれをしたら目立つことこの上ない。まずは影薄く馴染む感じで溶け込んでいこう。

(いてもいなくてもあまり気にならない、そんなポジションがベストだな。こんな時の為の【生命隠蔽 Lv.6】。じんわり使う感じでやれば、いてもいなくても気にならない存在になれる筈だ)

 基本的に努力は嫌いだが、自分の目的の為の努力は惜しまないつもりだ。

『マスター、そんなことに力を使わないで友達作りに力を入れましょうよ』

『サナ、聞いてくれ。これが成功すれば俺は気兼ねなくダラダラできると思うんだ。さすがにわかりきった授業を真面目に受ける自信が無い。そうなると次に考えるのは如何にサボるかだ。教室で寝ていようがバックれて何処かでサボっていようが、気にならない存在にならないといけない。それが出発点だと思うんだ』

『マスターって馬鹿ですよね』

『何を言う! 如何に授業中に創意工夫しバレずに寝れるか、それを試してみるのは男の浪漫だろ!』

『全世界の真面目に頑張っている男の子に謝ってください。そんなことに浪漫を求めているのは1部の人間だけです』

 そんなやり取りを2人がしていると、いつの間にか教室についてしまったのだった。

『さぁ、マスター。前か横の席の子に話し掛けて友達になるのです!』

『だが断る』

『そんなこと言ってないでさっさと朝の挨拶を済ませて下さい! おはようって言うだけでしょ。たった4文字ですよ』

「おはよう」

「なっ!?」

「な?」

「何でもない。おはよう」

(おいおい、誰だこいつ? いきなり喋りかけてきたぞ!?)

『マスター、やったじゃないですか! 朝の挨拶成功ですよ』

『いや待て、誰だよ? こんな奴知らないぞ』

『何言ってるんですか。昨日、自己紹介してたじゃないですか!』

「ケビン君でいいんだよね?」

「なっ!?」

「な?」

「名前は合っているぞ」

『おい、また喋りかけてきたぞ! どうなってやがる!』

『どうなってやがるのは貴方でしょ!』

『俺のどこがどうなってやがるんだ! 普通だろ!』

「考え込んでどうしたの?」

「なっ!?」

「な?」

「名前は何と言うんだ?」

「カトレア・リンドリーだよ」

『誰だよっ!?』

『だから昨日、自己紹介してたでしょ! マスター、初歩的な会話すらまともにできてないじゃないですか、コミュ障確定です!』

『ふざけるな! 俺は会話ぐらいしてのけるぞ!』

『じゃあ、今まで誰と会話しました?』

 そこで俺は考える……今まで会話した相手……

『まず、ソフィ、家族、使用人、ガイル司教、サナ、クリスさん、ジュディさん、学院長、あぁ、あとAランク冒険者ぐらいか?』

『身近な人を除くと、それって全部大人ですよね? しかも、話しかけられて返した程度の薄い関係』

『ん? そうなるな。周りに子供なんていなかったしな。自分から用もないのに話しかけないだろ』

『つまり人見知りをする人が初対面の人に対して事務的に返答しているようなものです! よって、ギルティ!』

『何故そうなる!?』

『真のコミュニケーション能力の高い人は、用がなくても話しかけるのです。何気ない会話をしてのけるのです!』

(な、なんだと……俺は、コミュ障だったのか? 別に不便なことがないから自分からは話しかけていなかったが、それがコミュ障の原因なのか? 前世ではどうだった? 普通に会話してなかったか? ちゃんと就職もしてたし仕事もこなしてた。それが、転生したらコミュ障になったのか?)

『もしかしたらラノベで出るんじゃないですか? 【転生したらコミュ障だった件】って』

(ヤバい、マジでありえそうで怖い。てか、サナのドヤ顔が想像できてなんかムカつく)

「ねえねえ、おーい、聞こえてる?」

 そこで、呼びかけられていることにケビンが気づく。

「どうした?」

「やっと反応した。さっきから声をかけていたのに上の空だったよ。座らないの?」

(あぁ、そうだった。席につかなければ。このまま突っ立っていては目立ってしまう。とりあえず座って落ち着こう)

 自分の席に座ると両肘をついて手を組み、口元へと持ってきて考える。果たして何を間違ってしまったのだろうか?

『勝ったな……』

『あぁ……』

『『……』』

『って、何言わせてんだ、違うだろ! つい反応して答えちまったじゃねぇか!』

『さぁ、マスター。隣の子と会話をするのです』

 すると、隣から不意に話しかけられる。

「どこか調子が悪いの?」

「い、いや、そんなことはにゃい」

『ハハハハハッ! “にゃい”だってぇ……“にゃい”! シリアス醸し出しながら噛んでるぅ。ハハハハハッ! マスターは猫の獣人さんなんですかぁ? あぁーお腹いたぁぁ……』

(くそっ、マジでこいつ腹立つわ! そもそもお前に腹なんてないだろうが。何か攻撃できる方法はないのかよ!)

『ざーんねーんでーしたー! そんな方法あっても教えませーん』

『【転生したらサポナビがウザかった件】を今度執筆するぞ』

『いやぁ、私が主役ですか? しょうがないですねぇ、この隠しきれない主役のオーラ、バリバリですからねぇ』

(今のこいつには皮肉すら通じないのか。ウザさが天元突破してるな)

 そんなこんなでケビンがサナのせいでイライラしていると、どうやら隣の女の子は会話を止める気はないようである。

「ねえ、ケビン君はダラダラするのが好きなの?」

「そうだが。何か問題でもあるのか?」

「いや、そんなことはないけど、学校での意気込みでは初めて聞いたから」

「そんなのは人それぞれだ」

「まぁ、そうだけど……普通は言わないよ? 先生の前なんだし目をつけられちゃうよ」

 目は既につけられているんだがな。監視目的で……そんなこと言っても始まらないしどうでもいいことだが。

 そこで初めて俺は彼女の顔を見た。コバルトブルーの瞳に明るい感じのブロンドヘアーだった。

「おっ、初めて目が合ったね。照れ屋さんだから目を合わせないのかと思ってた」

 俺は別に照れ屋などではないぞ。サナ曰く、コミュ障なだけだ。そう、サナ曰くだ。決して認めた訳では無い。

「お前の瞳って綺麗な青色だな」

「――ッ! そ、そんなことないよ。普通だよ」

「そうか?」

「そうだよ……(いきなり瞳のこと褒めてくるなんて、不意打ちすぎるよ)」

 まぁ、本人がそう言うならそうなのだろう。こちらの世界では普通なのかもしれないしな。

 なんやかんやでジュディさんが教室に入ってきたのだった。

「出席を取るぞ。みんな席につけ」
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