本当にそれ、鑑定ですか?

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第13話 通報案件ですか?

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 遠くから、目覚ましの音が聞こえる。スマホに最初から登録されている、無機質な音楽だ。別にこの音楽が好きというわけじゃないけど、変えるのも面倒くさいというのが本音である。

 だるい体を起こし、スマホを見つけた。液晶に表示されている時間は7時34分だった。

 正直なところ、まだ眠っていたかった。でも今日は1限から講義があるため、遅刻する訳にはいかないのである。重い頭を起こし、目覚ましを止めた。

 1限目の開始は9時だから、まだ時間に余裕がありそうだ。昨日は飲み過ぎてしまった。帰宅してからの記憶がないし、頭が重い。このままボーっとしていたら、二度寝してしまいそうだ。でも起き上がる元気もない。

 何となく……、声が聞きたくなった。昨晩、二人に囃し立てられたからだろうか? 積極的になってきたのかもしれない。

 スマホを操作し、気になるあの子へ通話ボタンを押した。朝から電話を掛けるのは迷惑かと思ったが、そこまで頭が回らなかった。

 発信から数秒で気になるあの子が電話に出てくれた。

『……もしもし先輩? おはようございます。どうしたんですかこんな時間に?』

「おはよう葉月ちゃん、ちょっとだけいいかな?」

『……だいじょうぶですけど……』

 普段から葉月ちゃんと連絡を取っているが、基本的にはチャットアプリだ。電話で話すことはほとんどない。ましてや、朝から電話するなんて今まで一度も無かった。

 だからだろうか、葉月ちゃんの声に、少し戸惑いを感じる。何を話したら良いのだろうか? 勢いで電話してしまったが、ちょっと後悔してきた。

 そういえば昨晩、上級者の先生方に言われたっけ。ありのままを伝えれば良いって。

 寝ぼけた頭から、スッと言葉が出てきた。

「スマホの目覚ましの音楽あるでしょ?」

『……ありますね。いっぱい』

「朝の目覚めが快適になるやつが無くてさ、困ってるんだよね」

『ちょっと分かります。ビクッてなりますよね』

 やっぱり葉月ちゃんの声は癒される。可愛い。ちょっとした幸せを感じる。もしかしてアルファ波でも含んでいるんじゃないかな?

 よし、ちょっと気合を入れてお願いしてみよう。

「そうなんだよね。だからさ、葉月ちゃんの可愛い声を録音させて欲しいんだ。優しく起こしてくれる感じで……」

 ……ツーツーツー。

 切られてしまった。電池が切れたのかとスマホを見たがバッテリー残量は98%だった。うん、しっかりと充電して寝ていましたよ。

 昨晩、修二達と飲み会をした時、日付が変わってから占った今日の運勢に『朝いちばんにあの子へお願いしてみよう♪』と表示されていたはずだ。もしかして、お願いする相手を間違ったのか?

 焦っちゃだめだ、こういう時こそ先生方にアドバイスを求めよう。

 だが、良く考えよう。僕は修二先生と玲子先生の、どちらに聞けば良いのだろうか?

 恋愛ゲームだったら、選択肢が出そうな展開だ。



1.修二先生に電話をかける。
2.玲子先生に電話をかける。
3.葉月ちゃんに電話をかける。



 何故か3択になっている。3番を選んだらバッドエンディングに突入しそうな気がする。よし、無難に1番にしよう。朝から玲子先生は、ドキドキしちゃうからね。

 修二先生、おねがいします!!

 修二に電話を掛けてみた。発信してから10コール目くらいでやっと通じた。

『……あーい……』

 先生、死にそうな声ですよ大丈夫ですか!? 

「おーい、起きろ~! 緊急事態だ!!」

『……うる……せぇ……あたま……いたい……』

「占い通りに葉月ちゃんにお願いしてみたんだ。そうしたら無言で電話切られた! どうしよう!?」

『……知らんがな……』

……ツーツーツー。

 使えねぇ! 何が先生だよ。やっぱ修二は修二だな。昨日あんなに日本酒をがぶがぶ飲んでたから、今日は使い物にならないかもしれないな。

 はぁ、2番が正解か……。正直なところ、朝から玲子さんに電話掛けるのは気まずい。

 でも今はそんな事を言ってる余裕なんてないのです。助けて玲子先生!

 通話ボタンを押してから、すぐに繋がった。

『……なんですの薫さん?』

 あれ? めっちゃ声が低い。まるで修二の合コン参加を責めているときのようだ。やっぱり朝っぱらから電話掛けてご機嫌斜めなのかな? よし、これ以上機嫌を損ねないように丁寧に行こう!

「あ、おはようございます。先生にご相談がありまして、お電話させて頂きました」

『……先ほど、葉月ちゃんから連絡がありましたの』

「えっ!?」

 まさかの展開だ。僕がセクハラまがいの電話を掛けたから、玲子さんにクレームが入ったのかもしれない。どうしよう……。

『相手が誰とは言ってなかったのですけど、朝っぱらから電話で、キミの可愛い声を聞かせて欲しいと言われたそうですわ』

「え? ……あ、その……可愛い声を聞かせて欲しいじゃなくて、録音させて欲しいって言いました」

『もっと悪いですわ!! 何か言う事はありまして?』

 言われた瞬間、寝ぼけた頭が覚醒した。覚醒を通り越して、冷や汗が出て来た。

 これ、やばいかも?

 普通に考えてみよう。



 ここで問題です。

 バイト先でちょっと親しくなった女子高生に朝っぱらから電話かけて、可愛い声を録音させて下さいってお願いしたらどうなるでしょうか?



 答えは通報されます。

 やばい、変な汗が出てきた。もう過去には戻れない、正直に話そう。

「朝起きたら……葉月ちゃんの声が聞きたくなって……勢いで……電話しちゃいました……」

『……それで?』

「う、占いにも書いてあったし……昨晩イケイケでGOって先生に言われのもあって……何も考えずに……寝ぼけ頭で……その、お願いしちゃいました……」

『はぁ……』

 先生のため息が重い。

『焚きつけた責任もありますし、こっちでフォローしておきますわ』

 さすが玲子先生だ。修二とは違うね!

「ありがとう玲子さん!!」

『じゃあまた学校で。あ、そうでした、昼食はカフェテリアに集まりましょう。修二さんも呼びますわ』

「わかりました!」

 命拾いしたようだ。朝から変な汗をかいてしまった。シャワー浴びてこよう。

 やはり玲子先生は頼りになる。

 それにしても、今日の運勢は正しかったのだろうか?



【中野薫】

※今日の運勢※
 朝いちばんにあの子へお願いしてみよう♪



 あの子って葉月ちゃんだよなぁ……。

 時計を見ると8時5分だった。急いで準備をして学校へ行こう。

「どうか一日、平和でありますように……」

 この特別な力を授けてくれた神様に、祈りを捧げた。
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