本当にそれ、鑑定ですか?

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第19話 告白しちゃいますか?

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 葉月ちゃんと手を繋ぎ、映画館へ向けて歩いていく。いつもよりゆっくりと、出来るだけ一緒に居られるように歩いていく。

 葉月ちゃんの手は小さく、柔らかい。やっぱり女の子なんだなぁって思ってしまう。

 辺りを見渡せば、街は休日ということもあって、多くの人で溢れていた。カップルが多い気がするけど、葉月ちゃんの方が可愛いな!

「どうしたんですか先輩、キョロキョロしちゃって。もしかして迷子ですか?」

「大丈夫、道は間違ってないよ。ちょっと人が多かったから、ちょっと考え事をしちゃった」

「……考え事ですか?」

 葉月ちゃんが首を傾げてこっちを覗き込んできた。可愛い!

「カップルがいっぱいいるな~って思って見てたんだけどさ、やっぱり葉月ちゃんが一番可愛いね! ちょっと優越感を覚えてました」

「もう、またそんな事言って! ……でも、先輩もカッコイイですよ♪」

「葉月ちゃんの方が可愛いよ!」

「ふふ、ありがとうございます」

 そう言って、葉月ちゃんが手を強く握りしめてくれた。手を通じて気持ちが伝わって来たような気がする。

 何か周りから視線を感じるけど、気のせいだよね? でも、葉月ちゃんが可愛いからしょうがないね!

「あっ! あの喫茶店ちょっとオシャレじゃない? 映画観終わったらあそこで休憩しようか?」

 道路の反対側に、白を基調とした木造建築の喫茶店が見えた。マスターのお店と少し似ていた。

「いいですね! マスターさんのお店しか行ったことないので楽しみです」

 ……ふう、なんとか映画の後の予定が出来た。今のところデートは順調そうな気がする。葉月ちゃんも笑顔だし、このまま楽しもう!

 そうして僕らは映画館へ向けて歩き出し、途中で雑貨屋さんを覗いたりしながらゆっくりと進んだ。

 どうやら葉月ちゃんもゆっくりと行きたいようだ。それでも映画館はそう遠くないため、すぐに着いてしまった。

 映画館は大手百貨店ビルの5階に位置していた。百貨店に入り、エレベーターで5階へ向かう。

 エレベーターから降りると、薄暗い照明とポップコーンの匂い、ワクワクする音楽が流れ、映画館に来たことを知らせてくれる。

「……着いちゃいましたね。先輩と一緒に居ると、時間が経つのが早い気がします」

「映画終わってからぶらぶらしようか。うーん……映画いっぱいあるね。どれか見たいのある?」

 カウンターの上方や通路脇に、上映されている映画のポスターがずらっと並んでいる。見たところ、恋愛映画やアクション映画、アニメに特撮映画と何種類もある。確か占いによると迷ったら『ちびっ子ぐらし』が良いって書いてあったな。

「そうですね~。あ、ちびっ子ぐらしがありますよ! クラスの子が面白かったって言ってたので見たいと思ってたんですよね。これでも良いですか?」

「もちろん! じゃあチケット買って来るから待っててくれる?」

「……ふふ、先輩と一緒に行きますよ」

「そう? じゃあ行こうか」

 カウンターには大勢のお客さんが列を作っていた。聞こえてくる声によると、金曜日から始まったばかりの有名な新作映画が2本あるらしく、お目当てはそれっぽいです。何やら恋愛映画とアクション映画で、話題作とのことだ。

 そうしてカウンターまで進み、店員のお姉さんにちびっ子ぐらしのチケットを注文した。もちろん僕がお金を払いますよ!

「上映開始は40分後となります。座席はこの中からお好きなところを選んでください」

「葉月ちゃんどこがいい? 好きなところ選んでいいよ」

 液晶モニターに表示されている座席を見ると、ほとんどの席が空いていた。お客は話題作に集中しているようで、これなら選び放題だ。

「じゃあ、この席でお願いします」

「かしこまりました」

 そうして葉月ちゃんが選んだ席を見てみると……、最上段のど真ん中にあるカップルシート?

「じゃあ先輩、ドリンクとか買いに行きましょう! 今日はたくさんご馳走になったので、私が払いますね」

「あ、うん。ありがとう」

 カップルシートとはなんぞ? と疑問に思っているうちに、葉月ちゃんに手を引かれ売店に連れて行かれてしまった。

 レジに並び、僕たちに順番が回ってきた。

「先輩は甘いポップコーンでも大丈夫ですか?」

「全然大丈夫だよ。甘いの好きなんだ」

「じゃあこのチョコキャラメルポップコーンにしましょう。ドリンクは何がいいですか?」

「僕はコーラにしようかな。映画館で飲むコーラって美味しいよね」

「ふふ、いいですね。私はメロンソーダにしようかな~」

 そうしてドリンクとポップコーンを受け取り、上映までロビーのソファーに座って待つことにした。

 でも両手が荷物で塞がっているため、葉月ちゃんと手を繋げないのが寂しいな。葉月ちゃんも同じことを思ったのか、手を見て、僕の顔を見て小さく笑ってくれた。

「なにやら話題作が上映されてたようですね。先輩はそっちの方が良かったですか?」

「そんなことないよ。そもそも話題作が上映開始したって事すら知らなかったからね。本当に話題作なのかな?」

「ふふ、そうですね。私も知らなかったです。映画を見るのなんて、子どもの頃にお母さんと来た以来です」

「僕もそうかもしれない。子どもの頃、母親に連れられて兄貴とアニメ映画を見たのを覚えているよ」

「……先輩はお兄さんがいるんですね。仲がいいんですか?」

 僕から兄貴という単語が出た瞬間、葉月ちゃんの目がキュピーンと光った気がした。気のせいかな?

 兄貴か……。

「仲は良い方だと思うよ。兄貴は2歳年上で地元の大学に通ってるんだ。今年卒業だから就職活動中かな? この前連絡取ったけど、まだ就職決まって無いって言ってた」

「そうなんですね。じゃあお正月は実家に帰るんですか?」

「お正月くらいは戻ろうかなって思ってるよ。ゴールデンウイークや夏休みも実家に帰ってないからね。埼玉の田舎の方に実家があるんだけど、夏とかすごく蒸し暑くて帰りたくないんだ」

「埼玉ならすぐ帰れますね。うちはおじいちゃんの家が京都にあるので、連休で帰ったりしてます。年末は毎年どこかの海外に行くんです。お父さんが普段忙しい人なので、お正月くらいは家族で過ごしたいって張り切っているんですよ」

「すごいね! 海外なんて行ったことないよ」

 さすがお嬢様だ! お正月を海外で過ごすとか、芸能人みたいでカッコイイな。

 そんなことを話していたら、入場開始のアナウンスが聞こえて来た。

「入場開始だってさ、そろそろ行こう」

 葉月ちゃんと並んで進み、チケットを見せて5番スクリーンへ進む。部屋に入ると、防音が効いていて耳が不思議な感覚になる。

 最上段に進んでみると、カップルシートというものがどういったものなのか、やっと理解した。

 基本的に一人用の座席が並んでいる中で、最上段だけがカップルシートになっていた。カップルシートとは、まさにカップル専用席で二人掛けのソファーが配置されていた。しかもソファーの両サイドは小さくではあるが間仕切りがしてあって、二人だけの空間を演出していたのです。

「な、なんかすごい席だね。映画館も進化してるんだなぁ」

「ふふ、一度座って見たかったんです。楽しそうですよ」

 僕が右側に座り、葉月ちゃんが左側に座った。ソファーは余り大きくないようで、二人がかなり密着するような感じになった。

 館内は薄暗く、良く見ると周りのカップルシートは誰も座っていない。そう、最上段は僕たちの貸し切り状態なのでした。

「やっぱりみんな話題作の上映に行っているんですね。ほら見て下さい、私たち以外は前の方に居る家族連れだけですよ?」

「ほ、ほんとだ。なんか貸し切りみたいでお得だね」

 やばい、ドキドキする。この薄暗い雰囲気に当てられてしまったのか、いつも以上に葉月ちゃんを意識してしまう。

 そうしていたら、葉月ちゃんが腕を絡ませて手を繋いできた。これが所謂、恋人繋ぎというやつだろうか……。

 もうここまで来たら男を見せるしかないな。玲子先生が言っていた教えを思い出す。そう、告白するには雰囲気が大事だと!

 左を向けば、葉月ちゃんが目を潤ませて見つめていた。

 ボクは覚悟を決めて、気持ちを伝えました。

「葉月ちゃん、僕は葉月ちゃんが好きです。付き合って下さい!」

「……ふふ、やっと言ってくれましたね! ずっと待っていたんですよ?」

「っ! じゃあ!」

「はい。私も先輩の事が大好きです。よろしくお願いしますね、先輩♪」

 葉月ちゃんが満面の笑みを浮かべ、僕に寄りかかって来た。葉月ちゃんの甘い匂いに包まれながら、映画の開始ブザーの音を聞いた。

 部屋が暗くなり、映画が始まった。内容は、小さいデフォルメされた動物たちが画面を走り回り、ナレーションがストーリーを盛り上げていく映画のようである。

 でも正直なところ、左腕から伝わる葉月ちゃんの体温と、葉月ちゃんの甘い匂いを意識してしまい、僕はもう映画どころでは無くなってしまった。

 一人でドキドキしていると、葉月ちゃんが軽く起き上がり、ポップコーンを食べてメロンソーダを飲んでいた。

 僕はもうメロメロになってしまい、ついつい葉月ちゃんに視線が向いてしまう。スクリーンから発せられる微かな明かりが葉月ちゃんを照らし、葉月ちゃんの加えたストローに目が釘付けである。

 そんな視線を感じたのか、葉月ちゃんがこっちを向き、目を閉じた。

 手に力が入ってしまい、一瞬、葉月ちゃんの手を強く握ってしまった。でも、葉月ちゃんは更に強く握り返して来た。

 葉月ちゃんのプルプルとした唇に、僕の震える唇を合わせた。

 初めてのキスは、メロンソーダの味がした。

「ふふ、ファーストキスですよ? 先輩もそうですか?」

「……うん。人生で初めてのキスです。きっと、葉月ちゃん以外にすることはないと思うよ」

「もう、またそんな事言って。そんなこと言う恋人のお口は塞いじゃいます♪」

 そうして僕は、葉月ちゃんからキスをされた。二度目のキスは、さっきより長く、唇の柔らかさを感じることが出来た。

 唇が離れ、葉月ちゃんと見つめ合う。

「葉月ちゃんの事が好きっていう気持ちが溢れ出して、爆発しちゃいそうです」

「私も同じです。先輩が好きです。私なんて半年以上前から好きってアピールしてたのに、全然気が付いてくれないんですもん」

「い、いや、僕もずっと葉月ちゃんの事が好きだったよ? それこそ初めて会ったバイトの日から……」

「本当ですか? でも、私の方が先に先輩の事を好きになりましたから、私の勝ちです♪」

「いやいや、僕の方が先に好きになったんだ。これは譲れないね」

「ダメです。私の方がさ……」

 それ以上言わせないように、葉月ちゃんの唇をキスで塞いだ。今度はさっきよりも更に長いキスになった。

「……もう! 酷いじゃないですか。私の方が先に好きになったんですよ?」

「まだ言うね? そんなこと言う恋人のお口は塞がないといけないね……」

 そしてまたキスをした。

 もう何度目のキスか分からない。スクリーンに浮かぶ小さな動物たちが見守る中、僕たちは薄暗い館内でキスをした。

 気が付けば、映画が終わっていた。急に部屋の照明が付き、僕たちは現実世界に戻って来た。

「ごめん葉月ちゃん、興奮しちゃって……」

「恋人同士なんですから、当たり前の事ですよ? これからもっともっとキスしましょうね♪」

 もしかしたら葉月ちゃんは肉食系なのかもしれない。でも、すごくうれしい。

 そんなことを考えていたら、葉月ちゃんが耳元に口を寄せ、小さな声で囁いた。

「……でも、エッチなのは私が卒業するまで待ってて下さいね」

「う、うん、もちろんだよ」

 そうして、またキスをした。キスが終わり館内を見ると、前の方に座っていた小さな子供がこっちを見ていた。葉月ちゃんも子供に気が付いたのか、顔を赤くしていた。

「そろそろ行こうか。さっきの喫茶店に行こう」

「……はい」

 どうやら葉月ちゃんは薄暗い映画館の雰囲気に当てられて、積極的になっていたようだ。恥ずかしそうにしていて、すごく可愛い!

 映画館に来るまでは普通に手を繋いだだけだったけど、今は腕を組んで恋人繋ぎになっている。

 腕に柔らかい感触が伝わり、女の子という生き物が男とは全然違う生き物であると実感した。

 僕はこの小さな女の子を、守りたいと強く思った。
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