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街中へ

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エレオノーレは友人のジョヴァンナと街中へ買い物に行く事にした。

ジョヴァンナは仲良し3人グループの一人。

もう1人というのが勿論ヴィルジニアだ。


ジョヴァンナが新しいドレスが欲しいというのだ。

そのついでに今までサウルにもらった婚約指輪やピアスといった宝石を売ろうと考えた。

持っていても忌まわしいだけだからだ。


そういえば、あと10日後に王室主催の茶会が控えている。

ジョヴァンナにも婚約者はいた。

筆頭公爵、ボルゲーゼ家令息のレックスだった。


ジョヴァンナは事情を信じてくれた。

ヴィルジニアの裏切り、そして婚約破棄。


「ヴィルジニア……どうして? ヴィルジニアにも婚約者というか許嫁はいたじゃない」

エレオノーレはヴィルジニアの許嫁を思い出した。


相手はワトソン侯爵家令息のジョルジュだった。

ジョルジュはスポーツマンタイプでいつもクリケットの試合に出場していた。


また、背が高く、筋肉質で、スラッとしていて格好良かった。

おまけに整った顔立ち。

「ヴィルジニアはどうしてあんな素敵な人を振るのかしら?」

エレオノーレは甚だ疑問に思った。

「やっぱり、人から婚約者を奪うというスリルを味わいたかったんじゃないかしら?」

そうとしか思えない。

ヴィルジニアは好奇心旺盛な性格だった。

幼少時代は男子とつるんで冒険もしていた。

「でも、なぜ親友のわたくしを裏切るのでしょう?」

「自分の目的を達成するなら、手段を選ばないのかも?」

「そう……なんだね」

「残念ながら、ヴィルジニアとはそれまでの仲っだった……ってことよ」


二人は街中を歩く。

真夏の太陽は大地をも焦がす勢いだ。


突き当りを右に曲がったところにブティック『カリーナ』があった。

「ここに寄ってみるわ」

ジョヴァンナはお店の中に入った。


と、そこへ……。

「やあ、姉ちゃん」

若い背の低い男性が声をかけてきた。

姉ちゃん?

エレオノーレは辺りを見回した。

いるのは老女と男性だけ。

姉ちゃんとは紛れもなくエレオノーレのことだった。

「姉ちゃん。暇かい? 俺とお茶しない?」

「ナンパなら、ご遠慮願えますか」

そう言ったら、男は去っていった。

ナンパ……。

こんな太った自分でも声をかけてくれる男がいるんだ、と思った。


「あ、お待たせ!」

ジョヴァンナが中から出てきた。

「うん。大丈夫よ!!」

先程のナンパ男の話はしないでいた。


しばらく行くと、質屋があった。

「今度はわたくしが中に入るわね」

そう言ってお店の中に入った。


「あのー」

「はい、らっしゃい!」

中には初老の男性がいた。

「これ、売りたいんですけど」

エレオノーレは婚約指輪とピアスを男性に手渡した。

「どれどれ……」

男性は品定めを始めた。


小一時間して、男性は口火を切った。

「おう。これはかなり優れたモノだな。おいよ。15万ソトで買い取るよ!」

「はい」

エレオノーレは15万ソトを受け取った。


これで婚約の総精算をした。
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