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レオニード王子の元へ

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ヴァレンティーナはレオニードの部屋に入った。

部屋には所狭しと並べられた本棚に本の数々。

部屋は柑橘系の香が焚かれている。


「レオニード王子殿下」

「なんだい? ヴァレンティーナ」

「王子殿下は本がお好きなんですか?」

「ああ、そうだよ」

「実はわたくしも本が大好きなんです」

「そうか。やっぱり趣味も一緒だったんだね」

レオニードはウインクした。


トントン。

「はい」

メイドが中に入ってきた。

「レオニード王子殿下、お茶とお菓子をお持ち致しました」

「ありがとう、ティサ」

メイドはレオニードとヴァレンティーナの前にお茶とお菓子を置いた。

お菓子はレーズンが挟まったパンケーキだった。

「では、失礼致します」

メイドは踵を返した。


「これ、美味しいんだ。食べると良いよ」

レオニードはお菓子を食べるように促してきた。

「いただきます!!」

ヴァレンティーナはお茶を飲んだ。

ほんのり甘い。酸味がする。

美味しい……。

そっとティーカップから手を離した。


「美味しいです!!」

「そう言ってくれて嬉しいよ。最高のハーブティーなんだ」

レオニードは笑顔を見せた。


次はお菓子を口に運んだ。

レーズンの歯ごたえが良い。

「お菓子も美味しいですわ」

「お菓子はお菓子職人が作った最高のお菓子さ」

レオニードは続けた。


「きみに食べてもらいたいものをティサ……メイドに頼んだんだ」

「本当ですか? ありがとうございますわ」 


「僕はね……その」

「はい?」

「ヴァレンティーナ。きみが好きになってしまった」

唐突の告白に固まってしまった。


「きみがジュリアンではないのはわかっている。でも、今はどこにもいない、二人といないヴァレンティーナ、きみを好きになってしまったんだ」

「あ……ありがとうございますわ」


「嘘偽りは無い。誓って」

「あ……はい」


「さあ……隣に来て」

ヴァレンティーナは躊躇いながらもレオニードの隣に座った。


そして、レオニードは頭を愛撫した。

「こうしたかったよ、ヴァレンティーナ」

ヴァレンティーナはされるがままだった。


「レオニード王子殿下」

「なんだね?」

「本当にわたくしで良いのですか?」

「ああ……きみしかいない」


ふと、レオニードはテーブルの上に乗せられていた、小さな箱を取り出した。

そして、箱の蓋を開けた。


中から眩いばかりの光を放つ指輪が出てきた。


「それ……何ですの?」

「ああ……。ヴァレンティーナ。きみへのプレゼントだ。そうだ。このためにきみを王宮に呼んだんだ」

レオニードはヴァレンティーナの左手薬指に指輪をはめた。

そして、口づけをしてきた。

    
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