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クリスさんの正体
「パーシヴァルさんですね。アレクサンダー王子殿下を引き取りに来ました」
と、兵隊の一人。
「内乱は収束したのかい?」
「はい。反乱軍が降伏しました」
「はい」
とクリスさん。
「クリス……さん?」
わたくしは驚きました。
この漁師料理を作ってくれたのは紛れもなくクリスさん。
クリスさんはただの漁師では無いの!?
「アレクサンダー王子殿下を預かってくれてありがとうございます。あとは我々が報酬を与えます」
「セシルさん」
「ア……アレクサンダー王子殿下ご無事で」
「やはり、命を狙われていたから、身分も何もかも隠していたんですね?」
わたくしはポリーさんに話しかけました。
「そう。クリスは私達の本当の息子じゃないの」
「そう……だったんですね」
「私達夫婦はずっと子宝に恵まれなくて。隣国より兵士が来てクリス……いえ、アレクサンダー王子殿下を託されたの」
「アレクサンダー王子殿下は亡くなられたと」
「そう。アレクサンダー王子殿下は亡くなった事になっていたの」
「だから、遺体がみつからなかったわけですね?」
「そう言うことよ」
「アレクサンダー王子殿下。さあ、国に帰りましょう」
「セシル。でも、僕は彼女たちを置いていけない」
クリスさんはわたくしたちを指差しました。
「お世話になった上に……僕は彼女を気に入ってしまったんです」
「なっ……何ですと?」
「彼女たちも国に連れて帰って良いですか?」
「しかし……彼女たちこそなぜパーシヴァル夫妻の元へ?」
「セシル。彼女……いや、あの金髪の彼女は伯爵令嬢。家を追われたのです」
「何ですと?」
「そして、もう一人いる茶髪の女性は侍女のシンシア。二人で伯爵家から逃げてきたのです」
「そう……でしたか」
3人の兵士はしばし黙り込んでしまいました。
「彼女たちが放っておけない。そういう事だな?」
もう一人、太めの兵士。
「はい」
「やはり、アレクサンダー王子。困っている人が放っておけないのは平民になっても相変わらずですね」
「そういう事だ」
「わかった。彼女たちを王宮へ迎え入れよう」
「セシル、ありがとう」
「本当に良いのですか?」
わたくしはセシルと呼ばれる兵士に訊ねました。
「勿論ですとも。アレクサンダー王子殿下の頼みともなれば断ることはできない」
「ありがとうございます」
わたくしは胸がいっぱいでした。
「しかし、驚いたわ。クリスさんがヴェルグランドの王子様だったなんて」
シンシアも驚いています。
かくしてわたくしたちは隣国ヴェルグランド王国へ行く事が決まりました。
「伯爵家……もしかしてゲルソン伯爵家ですね?」
わたくしは驚きました。
なぜ、隣国の兵士がわたくしの家の事を知っているのでしょうか?
「なぜご存知で?」
「有名な外科医だからですよ。テオエール王国王室の医師。わがヴェルグランドでも有名な医師です」
そうだったんだ……とわたくしは思いました。
お父様がそこまで名のある人なんて……とは思いましたが、その人物に裏切られ、家を追われました。
「しかし、なぜゲルソン伯爵がご令嬢と縁を切るような事が?」
「はい、それですが。わたくしは今のゲルソン伯爵夫人の実子ではありません。その、ゲルソン伯爵夫人は義理の母です。その義理の母の連れ子で義理の妹に当たる人物と確執起こしてしまったのです」
「え!?」
相手は拍子抜けしていました。
それもそのはず。
実の親が血縁関係の無い人物を庇い、実の娘を家から追い出すのだから。
「で、わたくしは義理の妹に婚約者を略奪され、婚約破棄になったのです。それをお父様に告げたところ、お父様は今の伯爵夫人をたいそう気に入っていて、母を忘れ、現伯爵夫人の連れ子の味方をしたのです」
「それは理不尽だな。到底許される話ではない」
クリスさん……いや、アレクサンダー王子殿下は憤怒の表情を見せました 。
アレクサンダー王子殿下はわたくしの味方。ありがたい話ですわ。
「そうですよね。お父様は間違っています」
「家を追われたのなら、尚更王宮に来て欲しい」
「ありがとうございます。お兄さん……いえ、アレクサンダー王子殿下」
「いや、お兄さんでいいよ」
「シンシア。王宮へ行く?」
わたくしはシンシアに聞いてみる事にしました。
「はい。お姉さんが望むのなら」
「わたくしはアレクサンダー王子殿下のお言葉に甘え、王宮へ行く事にしますわ」
「是非来てください」
兵士の一人が言いました。
「受け入れ体制は万全だ。部屋ならいくつでも用意できるからね」
「わたくしはアレクサンダー王子殿下にお仕え申し上げますわ」
「私もです。私はゲルソン家に仕えていた身。何かしらできると思いますわ」
とシンシア。
「そうとなったら、二人共王宮へ向かいましょう」
わたくしの決意は決まりました。
王宮へ向かう事。
「お父さん、お母さん、お世話になりました。僕は国に帰ります」
「そうか。いつか別れの日が来るとは思っていたが、クリス……いや、アレクサンダー王子殿下。あなたは実の息子のようでした」
「クリス……」
ポリーさんとアレクサンダー王子殿下はハグをしました。
やはり、子供がいない夫婦。
アレクサンダー王子殿下は実の息子のような関係だったのでしょう。
「わたくしたちもヴェルグランド王国へ行きますわ」
「きみたちも行ってしまうんだね」
「はい。パーシヴァルさん、ポリーさんお世話になりました」
「あなたたちまで行くのはとても寂しいわ。あなたたちも私達夫婦の実の娘のようだったわ」
「短い間でしたがお世話になりました」
シンシアが頭を下げました。
「さあ、馬車にお乗り下さい」
わたくしは馬車に乗り込みました。
と、兵隊の一人。
「内乱は収束したのかい?」
「はい。反乱軍が降伏しました」
「はい」
とクリスさん。
「クリス……さん?」
わたくしは驚きました。
この漁師料理を作ってくれたのは紛れもなくクリスさん。
クリスさんはただの漁師では無いの!?
「アレクサンダー王子殿下を預かってくれてありがとうございます。あとは我々が報酬を与えます」
「セシルさん」
「ア……アレクサンダー王子殿下ご無事で」
「やはり、命を狙われていたから、身分も何もかも隠していたんですね?」
わたくしはポリーさんに話しかけました。
「そう。クリスは私達の本当の息子じゃないの」
「そう……だったんですね」
「私達夫婦はずっと子宝に恵まれなくて。隣国より兵士が来てクリス……いえ、アレクサンダー王子殿下を託されたの」
「アレクサンダー王子殿下は亡くなられたと」
「そう。アレクサンダー王子殿下は亡くなった事になっていたの」
「だから、遺体がみつからなかったわけですね?」
「そう言うことよ」
「アレクサンダー王子殿下。さあ、国に帰りましょう」
「セシル。でも、僕は彼女たちを置いていけない」
クリスさんはわたくしたちを指差しました。
「お世話になった上に……僕は彼女を気に入ってしまったんです」
「なっ……何ですと?」
「彼女たちも国に連れて帰って良いですか?」
「しかし……彼女たちこそなぜパーシヴァル夫妻の元へ?」
「セシル。彼女……いや、あの金髪の彼女は伯爵令嬢。家を追われたのです」
「何ですと?」
「そして、もう一人いる茶髪の女性は侍女のシンシア。二人で伯爵家から逃げてきたのです」
「そう……でしたか」
3人の兵士はしばし黙り込んでしまいました。
「彼女たちが放っておけない。そういう事だな?」
もう一人、太めの兵士。
「はい」
「やはり、アレクサンダー王子。困っている人が放っておけないのは平民になっても相変わらずですね」
「そういう事だ」
「わかった。彼女たちを王宮へ迎え入れよう」
「セシル、ありがとう」
「本当に良いのですか?」
わたくしはセシルと呼ばれる兵士に訊ねました。
「勿論ですとも。アレクサンダー王子殿下の頼みともなれば断ることはできない」
「ありがとうございます」
わたくしは胸がいっぱいでした。
「しかし、驚いたわ。クリスさんがヴェルグランドの王子様だったなんて」
シンシアも驚いています。
かくしてわたくしたちは隣国ヴェルグランド王国へ行く事が決まりました。
「伯爵家……もしかしてゲルソン伯爵家ですね?」
わたくしは驚きました。
なぜ、隣国の兵士がわたくしの家の事を知っているのでしょうか?
「なぜご存知で?」
「有名な外科医だからですよ。テオエール王国王室の医師。わがヴェルグランドでも有名な医師です」
そうだったんだ……とわたくしは思いました。
お父様がそこまで名のある人なんて……とは思いましたが、その人物に裏切られ、家を追われました。
「しかし、なぜゲルソン伯爵がご令嬢と縁を切るような事が?」
「はい、それですが。わたくしは今のゲルソン伯爵夫人の実子ではありません。その、ゲルソン伯爵夫人は義理の母です。その義理の母の連れ子で義理の妹に当たる人物と確執起こしてしまったのです」
「え!?」
相手は拍子抜けしていました。
それもそのはず。
実の親が血縁関係の無い人物を庇い、実の娘を家から追い出すのだから。
「で、わたくしは義理の妹に婚約者を略奪され、婚約破棄になったのです。それをお父様に告げたところ、お父様は今の伯爵夫人をたいそう気に入っていて、母を忘れ、現伯爵夫人の連れ子の味方をしたのです」
「それは理不尽だな。到底許される話ではない」
クリスさん……いや、アレクサンダー王子殿下は憤怒の表情を見せました 。
アレクサンダー王子殿下はわたくしの味方。ありがたい話ですわ。
「そうですよね。お父様は間違っています」
「家を追われたのなら、尚更王宮に来て欲しい」
「ありがとうございます。お兄さん……いえ、アレクサンダー王子殿下」
「いや、お兄さんでいいよ」
「シンシア。王宮へ行く?」
わたくしはシンシアに聞いてみる事にしました。
「はい。お姉さんが望むのなら」
「わたくしはアレクサンダー王子殿下のお言葉に甘え、王宮へ行く事にしますわ」
「是非来てください」
兵士の一人が言いました。
「受け入れ体制は万全だ。部屋ならいくつでも用意できるからね」
「わたくしはアレクサンダー王子殿下にお仕え申し上げますわ」
「私もです。私はゲルソン家に仕えていた身。何かしらできると思いますわ」
とシンシア。
「そうとなったら、二人共王宮へ向かいましょう」
わたくしの決意は決まりました。
王宮へ向かう事。
「お父さん、お母さん、お世話になりました。僕は国に帰ります」
「そうか。いつか別れの日が来るとは思っていたが、クリス……いや、アレクサンダー王子殿下。あなたは実の息子のようでした」
「クリス……」
ポリーさんとアレクサンダー王子殿下はハグをしました。
やはり、子供がいない夫婦。
アレクサンダー王子殿下は実の息子のような関係だったのでしょう。
「わたくしたちもヴェルグランド王国へ行きますわ」
「きみたちも行ってしまうんだね」
「はい。パーシヴァルさん、ポリーさんお世話になりました」
「あなたたちまで行くのはとても寂しいわ。あなたたちも私達夫婦の実の娘のようだったわ」
「短い間でしたがお世話になりました」
シンシアが頭を下げました。
「さあ、馬車にお乗り下さい」
わたくしは馬車に乗り込みました。
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