召喚勇者はにげだした

大島Q太

文字の大きさ
15 / 29

15.騎士の誓い

しおりを挟む
無言でお互い天井を見ていた。

「タロウが可愛くて。がっつきました。辛くないですか?」

俺はリーンハルトの手を握って力を込めた。


「辛い。明日からリーンがいない。なのにリーンが乳首とちんこばかり夢中になって、キスしてくれなくて辛い」


リーンハルトはガバリと起き上がると、俺に覆いかぶさった。


「良いんですか?」

唇を尖らせてそっぽを向いた。我ながら子供っぽい仕草だ。


「いまさら? リーンはキスしたくないの?」

「……したい」


顎をとられ上を向かされる。リーンハルトの綺麗な目が薄闇の中でも青く輝いて見えるようだった。そうか、リーンハルトの目ってこんなに綺麗な青色だったんだ。

そのまま、ふにゅりと柔らかく唇が押し付けられた。手を握るのと変わらない。体の一部と一部の接触でしかないのに、なんでこんなに心が震えるんだろう。

目を閉じると、また、ふにゅりと唇が合わさる。目の裏にはリーンハルトの青が見える。

薄く口を開けると、リーンハルトがおずおずと舌を伸ばして侵入してきた。口内に感じる初めての柔らかさ。舌でチロチロとくすぐっていたかと思うと、だんだんと大胆に動き出した。ズクリと下半身が震えた。


唇を離したので目を開けると、リーンハルトの目からは涙がぼろぼろと流れていた。


「泣きたいのは俺だろ」

「ええ、今度はもっと鳴かせます」


いや、ギラギラすんな。

「俺のファーストキスだ。リーン。ケガすんなよ。さっさと帰って来いよ」


リーンハルトは俺の目尻をペロリと舐めた。


「ええ、あなたの為に戦います。私はあなたの剣となり、盾となりあなたを守ります。私はあなたに忠誠を誓います。一生をかけてあなたの側で尽くします」


「……おおげさだな」


「騎士の誓いです、ほんとはもっとちゃんとするんですが、魔獣討伐から帰ってきたら正式にタロウに誓いますから。覚悟しておいてください」


ってかそういうのフラグを立てるって言うんだぜ?って言おうとして言えなかった。俺は涙にのみこまれた。


ここに住み始めて1年。
なのに明日からリーンハルトがいなくなる1週間の方が長く感じそうだ。
どうせなら、胸のわだかまりを意識させないでほしかった。寂しさがましてしまう。


「そんな、顔されたらもっと触りたくなるのでやめてもらえませんか?」

「……うっせ、バカリーン」

リーンハルトはもぞもぞと体を寄せて、オレを抱きしめてくる。言葉とは裏腹に上下する手が優しくて、また涙が出そうになった。

「もう一度キスしていいですか?」

「聞くな、バカ……」

「では遠慮なく……タロウ」

「んっ……」

触れあっているのは唇だけなのに、なんでこんなにふわふわと心が動くのだろう。



翌朝、リーンハルトは山を下りて行った。持ち込まれていた荷物は預かることにした。布団も枕も枯れ草の匂いがして手放せない。それはリーンハルトの匂いだから。この匂いが消えてしまう前に帰ってきてほしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

孤独な青年はひだまりの愛に包まれる

ミヅハ
BL
幼い頃に事故で両親を亡くした遥斗(はると)は、現在バイトと大学を両立しながら一人暮らしをしている。 人と接する事が苦手で引っ込み思案ながらも、尊敬するマスターの下で懸命に働いていたある日、二ヶ月前から店に来るようになったイケメンのお兄さんから告白された。 戸惑っている間に気付けば恋人になっていて、その日から彼-鷹臣(たかおみ)に甘く愛されるようになり━。 イケメンスパダリ社長(攻)×天涯孤独の純朴青年(受) ※印は性的描写あり

さかなのみるゆめ

ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。

【完結】愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

雪解けに愛を囁く

ノルねこ
BL
平民のアルベルトに試験で負け続けて伯爵家を廃嫡になったルイス。 しかしその試験結果は歪められたものだった。 実はアルベルトは自分の配偶者と配下を探すため、身分を偽って学園に通っていたこの国の第三王子。自分のせいでルイスが廃嫡になってしまったと後悔するアルベルトは、同級生だったニコラスと共にルイスを探しはじめる。 好きな態度を隠さない王子様×元伯爵令息(現在は酒場の店員) 前・中・後プラスイチャイチャ回の、全4話で終了です。 別作品(俺様BL声優)の登場人物と名前は同じですが別人です! 紛らわしくてすみません。 小説家になろうでも公開中。

リオネル・デュランの献身

BL
落ち目の男娼リアンの唯一の趣味は、若きディオレア国王の姿絵を集めること。ある日久しぶりについた新規の客は、リアンに奇妙な条件を提示してくる。 執着君主×頑張る美人

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...