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18.ごめんってずるい
しおりを挟む魂の抜けた俺はサバラにお世話をされた。
山で生活していた時も週に2.3回は聖剣インフラで露天風呂っぽく洗ってはいたが、洗いが足りていないのをお湯の汚れで気づいてしまった。
山暮らしだったんだから仕方ないだろ。そして、髪はつやつや、肌もトゥルトゥルになった。これは何の下準備だ。思い浮かべるのは紳士と山猫の話だ。塗りこめられたのは塩じゃないけど。青い目の山猫の親分がいるんじゃないか。こんな事なら、白い犬も眷属にしとけばよかった。今度はポチとかそう言う名前にするけどな。
「タローきれいになったね」
分かってる、泥だらけの幼稚園児を洗って綺麗になったの綺麗だろ。清潔とかそう言う意味の。ほくほくと湯立った顔でそっぽを向いた。
サバラに用意されたミルク風味のすっぱい飲み物を飲んで一息ついた。
するとまた何もなかった壁に筋が入ってにぎやかに人が入ってくる。
クールと熱血とショタだ。違う、この国の三人の王子たち
後ろに護衛だろう騎士たちもついてきている。サバラはスタッと立ち上がり、騎士の一人の近くに行ってしまった。なんか、分かりやすくハートを飛ばしている、さては、あいつがサバラの恋人か。
「まぁまぁ、小汚いから、小綺麗にはなったんじゃないか?」
クールが鼻の頭を掻きながら言ってくる。いや、そういうのいらないから。
「君の黒髪きれいだね。僕は好きですよ」
ショタがにっこりと笑う。って、その年で半ズボンはやめとけ。
「ふん、見れるようになったな!それならきっと魔獣王様もお気に召すだろう」
ミスジだけ載ってる雑誌が違うな。ってか、急にゲームっぽいな。
「え!どういうこと……!タローは何をしたの?」
そこへサバラが割って入ってきた。
恋人の騎士が慌ててサバラの腕をひいた。それを身を捩るように振り払ってミスジに詰め寄る。
「魔獣王様がお気に召すってどういう意味だよ」
「こいつはコジン・ジョウホウ 異世界から召喚された勇者で、魔獣王様のいけにえだ」
ミスジは眉間に皺を寄せてサバラを睨む。サバラはショックを受けた顔で固まっていた。
「そんな、どうして。タンは知ってたの?」
あぁ、タンと呼ばれた騎士の隣に「タン:執着 抱き上げ サバラの恋人」と出ていた。鑑定のばか、BL作動させてる場合じゃないだろ空気読めよ。
タンはミスジからサバラを引きはがして肩を抱いた。
「いいや、サバラの話を聞いてもしかしてと思ったんだ。それで、ミスジ王子に相談したらやはり探していた勇者だった」
「え?じゃあ、タローはほんとうに勇者なの? ずっと、黙ってたの?」
サバラが瞳を揺らしながらこちらを見ている。俺は目を合わせる勇気が無くて反らした。
「……ごめん。言い出せなかった」
「ずっと、変な奴だと思ってたよ。だけどそこがおもしろかった。僕たち友達だと思ってたのに」
変な奴だと思われてたのか、地味に傷つく。でも、俺だって友達だと思ってたさ。あぁ、でもそうか。俺はどこかで信じ切れてなかった。サバラは出会った時から良い奴だった。もう非処女だったけど。いつもお腹を空かせてた俺に、声をかけてごはんに誘ってくれた。街のことや、どこの店が安いとか。どこの店が新鮮だとか。冒険者クランに高く売りつける小技なんかもサバラから教わった。
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