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乱入

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自嘲気味に笑った上原を、黒木は励ます。

「・・・それでもクオリティを保てるのがプロなんです。先生は凄いです」

それはお世辞でも何でもなく、黒木の本心からの言葉だった。
それを感じたのか、上原の表情が和らいだ。

「遅かったね」
「妙な娘が、ぬぼーっとした男と一緒に、「先生に会わせろ」と言って来まして」
「ほう」
「適当にあしらって追い返しました」
「その割には時間がかかったようだが」

黒木は一瞬ためらい、決心してから口を開いた。

「それがその娘・・・「サロメ」の一節を演じたんです」
「サロメを?」
「はい」

上原の顔にも、狼狽の表情が浮かぶ。

「・・・まさか、な」
「・・・先生・・・」
「・・・さあ、早いとここの歌詞を仕上げて、秋クールのドラマの執筆にかからなきゃ」
「はい・・・」

そこに入って来たのは、リュウタロウにカッターナイフを突きつけ、人質にした須磨子と佐々野だった!

「何するんですか!やめて下さいYО」

驚いて叫ぶ黒木。

「なんだ、君たちは!」
「動くな!我々は話がしたいだけだ。話をしてくれれば、乱暴はしない」
「乱暴しているじゃないか!?」
「助けて下さいYО!」
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