華麗なるブルゴーニュ家とハプスブルグ家の歴史絵巻~ 「我らが姫君」マリー姫と「中世最後の騎士」マクシミリアン1世のかくも美しい愛の物語

伽羅かおる

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【第2章】赤い薔薇と白い薔薇

その48✤ベアトリスと結ばれるのは……

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※こちら本人ではありませんが、ラトランド伯エドワードのイメージはこんな風ではなかったかという記事の絵を見つけました。エドワードもエドムンドも美形の兄弟ではあったようです。


疲れているのに眠れない夜を過ごしていたエドムンドはふと胸騒ぎを覚えた。

 何故かはわからない、でもベアトリスが自分を呼んでいる気がしてならず、彼女の部屋の側まで行かなければ、と思った。

 城の中は宴の後で、城の階段や廊下の隅で丸くなって寝ている客人や使用人を起こさないよう忍び足で、家族が休んでいる塔の反対側の、女ばかりが休んでいる塔の中の彼女の部屋を目指した。

 石や煉瓦でできた城というのは冬には通常とても寒いのだが、今夜は宴で長い間どの部屋にも火が炊かれていたし、客人も多かったため、普段よりは幾分寒さは凌げ、皆にとって幸いだった。


 一方、ベアトリスはうとうとしてしまい、ドアの音にびっくりして目を覚ますと、大きい人影が立っていた。
叫びそうになるのをこらえ
「誰?!」と呼びかけるが返事はない。
その大柄の男は近づいて来て、寝ている彼女の手を掴み
「ベアトリス、私はお前を妻にするつもりだ」と言った。
心配していた通り、エドワードが来たのだ。
「エドワード、何故私を妻にするつもりなの? この事はあなたのお父上のリチャード様やお母上のセシリー様はご存知なの?」
「いや、知らない。でも私はいずれイングランド国王になるのだ。自分の結婚相手くらい自分で決めても良いだろう」
「いいえ、エドワード、だからこそあなたは自分が勝手に選んだ相手と結婚などできないということを、あなたは誰よりもよくわかっているはず。
 それにあなたのご両親が私達の結婚など認めるわけがないではないですか。私はランカスター家の人間なのよ」
「我らが母セシリーももともとはランカスター家ではないか、何が問題だというのだ」
「私はあなたの妻にはなりません」
「何故だ」
「あなたのことを愛することはできないからです」
「私はお前を愛している。だからそれで充分ではないか」
「いいえ、エドワード、私は!」
「何を言っても無駄だ、もう私が決めたのだから。始めて会った時から私はお前を見てきたのだ、そして今こそ私のものになる日が来たのだ。結ばれてしまえば、父や母が何を言えると言うのだ」
 エドワードは掴んだベアトリスの手を引っ張り、ベアトリスを胸に抱いた。
「声を出すな、皆が起きる」
「離して下さい、エドワード。私はあなたのものにはならない」
ベアトリスはエドワードの大きい胸から逃れようとするも、身長が190cmを超える大柄のエドワードの腕を振りほどくことができない。エドワードの手がベアトリスの顔を引き寄せ、彼女の美しい唇にエドワードの唇が触れた時、抵抗できないように見えたベアトリスは反撃に出た。エドワードの唇を噛んだのだ。

 一瞬のことに驚き、彼女を離したすきに、ベアトリスは部屋から飛び出そうとした。ドアを開けたその時、目の前にもう一人の男が立っていて、ベアトリスは危うく声をあげそうになった。
「ベアトリス!」
しかし、その声はベアトリスのよく知っている、大好きな声だった。
「あぁ、エド!!!」
「どうしたというのだ」
動揺するエドムンドが部屋の中を見ると、口から少し血を流したエドワードが立ちすくんでいた。

エドワードは言った。
「やはりこういうことか、ランカスター家がどうのこうのと言っているが、お前たちはもともとそういう仲だったのだろう」
「兄さん、何故、ベアトリスの部屋にいるのですか」
「ベアトリスは私の妻になるのだ」
「いいえ、私はあなたの妻にはならないと言ったわ!」
「兄さん、僕達は愛し合っていますが、でもただそれだけです」
「そうか、ではまだ私にもチャンスがあるのだな、私が先に彼女と結ばれれば、神に誓いを立てれば、我らが両親も反対はできないはず」
「兄さん、僕と彼女はお互いに愛し合っているのですよ!」

 その言葉を聞いたエドワードはエドムンドに掴みかかり、殴りつけた。
それを見たベアトリスはエドムンドに駆け寄り、エドワードを睨みつけ
「エドワード、あなたは昔からヨーク家の御曹司で大切に育てられて来たでしょう。でも私が愛するのはそんなあなたではなくて、小さい妹や弟達にもいつも優しかったエドムンドです。何度聞かれても私が愛するのは彼だけで、それは絶対に変わらない気持ちなの! だからどうか今すぐここから出ていって下さい」と静かな声で言う。

「このままでは終わらないと思え。私はベアトリスを諦めない」エドワードは2人に捨て台詞を残し、部屋から出ていった。

 エドワードに殴られてぐったりしているエドムンドをベッドに寝かせ、
「ベアトリス、兄さんは本気だ」とエドムンドが言うのを聞き、ベアトリスも彼の横に身を横たえた。寝室は寝具なしでいられるほど快適な室温ではなく、城の端に位置するこの塔の部屋部屋は凍えるくらいに寒かったのだ。
「なぜこんなことに……」
ベアトリスは返事と共に、エドムンドの頬を自分の方へ向けて、口づけを交わすのだった。

 そう実はこの時、何故かベアトリスは胸の中に”急がなければ”、という気持ちが沸き起こったのだ。それがエドワードのせいか、あるいは違う理由からなのか、よくわからない胸騒ぎを覚え、ベアトリスの中に不安な気持ちが膨らみ、それが彼女の今まで抑えてきた気持ちも撥ね退け、ついにこの日2人は結ばれる。

 始めて会ったベアトリス8歳と、エドムンド7歳の時から共に姉弟のように過ごしてきた10年の歳月を経て、その後エドムンドが12歳になってからは、しばし離れる生活になったことでお互いの本当の気持ちに気がついたベアトリスとエドムンドは、今こそ結婚を決意するのだった。



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