竜神様に見初められまして~虐げられ令嬢は精霊王国にて三食もふもふ溺愛付きの生活を送り幸せになる~

青季 ふゆ

文字の大きさ
7 / 65

第7話 嫁ぐことになりました

しおりを挟む
「……はあ」

 フェルミ王国辺境付近を走行中の馬車に揺られながら、ソフィアはもう何度目かわからないため息をついた。
 この数日間のバタバタで、ただでさえ濃かったクマがいっそう色濃くなってしまっている。

 全ての元凶は全て、例の婚約騒動に起因する。

 一週間前、ソフィアは妖精王国エルメルの竜神様にして軍務大臣、アランに求婚された。
 その時の会場の騒然たるや言うまでもない。

 ソフィアの立場を知る貴族諸君たちはひっくり返らんばかりに度肝を抜かし、パーティどころでは無くなった。

 ちなみにマリンは卒倒し、そのままどこかに運ばれて帰ってこなかった。
 ……少しだけ胸がスッとしたのはここだけの秘密である。

 幸い、が国の王様の鶴の一声で予定していたパーティはつつがなく進行したが、その間ソフィアの胸中は穏やかではなかった。

 あの鎖国状態だったエルメルの重鎮がフェルミきっての落ちこぼれたるソフィアに求婚ともなると、その注目度は想像するに容易い。

 パーティ中、本当に出血するんじゃないかと思うほどの数の視線が次々に突き刺さって大変だった。
もう、何度帰りたいと思ったことか。

 「騒ぎを起こしてすまない、詳細はまた」と、アランはシエルと一緒に各国の重鎮との交流に戻ってしまったし。

 パーティが終わるまでソフィアは一人でじっと、そこらへんの壁になったつもりで気配を殺しやり過ごしていたのである。

 しかし大変なのはその後だった。 
 
 求婚なんて冗談じゃないだろうかと思っていたが、どうやら先方は本気のようだった。
 翌日すぐに、婚姻に関する書類と共に支度金と称して多額の資金を提供する旨の誓約書が屋敷に届いた。

 その時の両親の掌返したるや、一生忘れる事は無いだろう。

 父曰く、無能のお前もようやく役に立ったか。
 母曰く、一国の軍務大臣様に嫁ぐだなんて、なんと誉高いわ。

 正直、吐き気がした。
 両親はやはり、自分を家に利益をもたらすかどうかでしか見てなかったのだと。

 そこはかとなく悲しい気持ちになったが、ハナコに慰めてもらった。
 嫌なことも悲しいことも、ハナコのもふもふにかかれば万事解決である。

 ちなみにマリンはというと、人間の貰い手がなくて竜とだなんてお似合いねお姉様、うっきゃっきゃとよくわからない上から目線を炸裂させていた。

 嫁ぎ先の相手の位が超高いとか、家に莫大な利益をもたらしたとか、自分にとって都合の悪い事実は見なかった事にしたようだった。

 ちなみに、そもそもの話になるが。

 国家間の交流パーティで一国の大臣クラスが他国の令嬢に求婚など前代未聞(普通に国際問題になりそう)だが、お国柄の違いとして許容されたらしい。
 そもそもフェルミとしては魔法の使えないソフィアに存在価値がないから、どうぞ持っていってくださいというスタンスのようだった。

 とまあ、纏めると。
 ソフィアは国にも家族にも、半ば売られるような形でエルメルに嫁ぐ事になったのである。

「これから、どうなるんだろう……」

 延々と続く草原を馬車窓から眺めながら、呟く。

 ボロ雑巾のようにこき使われ地獄のような日々を送っていた実家からは距離を置くことができた。

 その開放感はある、が。
 エルメルに嫁いでからの新生活に対する不安の方が大きかった。

 何しろエルメルに関する情報の持ち合わせは皆無と言って良い。

 向こうに人間はいるのか、もしかして国民全員が人間ではないのだろうか。
 ちゃんと人間らしい生活が出来るのだろうか。

 そもそもアランという人物はどんな人なのだろう。
 もしかして、怖い人なんじゃ……。
 実家よりもっと酷い扱いを受けたら……。

『きゅいっ』

 不安に表情を曇らせていると、ハナコがひゅっと現れひと鳴きした。

「心配してくれるの?」
『きゅきゅいっ』
「ふふ、ありがとう」

 すりすりと顔に身を寄せてくるハナコのもふもふを堪能していたら、自然と笑みが溢れてきた。

(大丈夫、私にはハナコがいる……)

 もふもふと一緒なら、きっとどんな苦労でも乗り越えていける。
 そう、ソフィアは思うのであった。


 ──そのフェンリルは、君の精霊か?

 この数日のゴタゴタのせいで、あのパーティでアランが言っていた言葉は完全にソフィアの頭からすっぽ抜けていた。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

追放聖女35歳、拾われ王妃になりました

真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。 自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。 ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。 とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。 彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。 聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて?? 大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。 ●他作品とは特に世界観のつながりはありません。 ●『小説家になろう』に先行して掲載しております。

処理中です...