10 / 65
第10話 到着
しおりを挟む
「案外、人間の街に近いんですね」
アランが高度を下げた事により、街の細かい部分まで見る事ができたソフィアが言う。
「エルメルにはたくさんの種族が暮らしているけど、人型の住民も多いから何かと都合がいいの。建造物は主に人族とドワーフが協力して作っているから、住み心地はお墨付きよ」
「あ、同じ人間もいらっしゃるんですね」
「ええ、元々エルメルは様々な種族が共存していた国だったから、その子孫の人たちね。他種族とのハーフが多数だと思うけど、純人族もいるはずよ」
「なるほど」
そう聞いて、少しだけホッとするソフィアだった。
人族が自分一人で、生活様式などが全くの別物だったらどうしよう、という不安もあったから。
「あれがこの国にたくさんの恵みを与えてくださっている、樹齢一億年の世界樹『ユグドラ』。エルメルの象徴にして心臓といっても過言ではないわ」
「じゅ、じゅれいいちおくねんっ……?」
子供が考えた物語の設定みたいな年数にソフィアは度肝を抜く。
普通に考えて木がそんな長く持つわけがないが、これだけ巨大な大樹だとありえなくもない、いやいやありえない……。
何か精霊の力的なもので保持されているのだろうと、最終的には飲み込んだ。
なんか全体的にキラキラしているし。
人間の国で暮らしていた常識はここでは通用しない、という事実を思い知ったような気がした。
「見えてきた! あれが、エルメルの王城よ」
そう言ってシエルが指差す先に、世界樹『ユグドラ』のちょうど真正面の根元に聳える巨大な城。
「綺麗……」
御伽の国に出てくるような、白くて美しい城だった。
間もなくして、その王城の敷地内に着陸する。
ソフィア、シエル、ハナコが降りてから、アランも元の人間の姿に戻った。
「長旅お疲れ様、アラン」
「はっ……」
シエルの言葉に、アランは一礼する。
「ありがとうございました、アラン様」
「どうって事はない。それよりも、身体の方は大丈夫か? 初めて飛行した者の中で、酔ってしまう者も少なくない」
「大丈夫です。むしろ、とても清々しい気分です。お気遣い、ありがとうございます」
「そうか。ところで……」
アランがハナコを見やる。
「君の精霊の様子が何やらおかしいようだが」
「え?」
ソフィアが首を傾げた途端、ハナコが『きゅいっっーーーー!!』と悲鳴にも似た声を上げた。
それからすぐ、身体が青白く眩い光を放ち始める。
「ど、どうしたのハナコ……!?」
慌てて尋ねるも、ハナコは『きゅいー! きゅいー!』と声を上げるばかり。
こんな事今までなかった。
突然やってきた親友の異常事態に狼狽えるソフィア。
しかしこの現象には見覚えがあった。
つい先程、エルメルに来る前。
あの丘で、アランが人型から白竜の姿に変化する時に放った光と同じ……。
『ここどこ!? ここどこ!? 僕、なんだかとっても懐かしい感じがするよ!』
ソフィア、アラン、シエルの誰でもない声が場に登場する。
少年にも似た、少し高めの幼い声。
「ハ、ハナコ……!?」
ソフィアは驚愕した。
先程までの小型犬サイズのハナコはもう居なかった。
全長がソフィアの三倍もあろうかというサイズの、立派な大狼がそこにいた。
『あれ? ご主人様、なんだかちっちゃくなった?』
大狼(たぶんハナコ)が、ソフィアを見下ろして言う。
「ハ、ハナコが進化した……?」
『シンカ? よくわからないけど、なんだか身体がとても軽いよ!』
わっふんわっふんと、ハナコがゴロゴロと転がったり、ソフィアの周りをクルクル回ったりする。
この無邪気な挙動、間違いなくハナコだ。
「あらあら、立派なフェンリルちゃんね」
シエルは臆する様子もなく、ハナコを眺めて呑気に言う。
「アランさん、これは一体……」
「ここら一帯は精霊力が満ち溢れているからな。その力を取り込んで、本来の姿を取り戻したのだろう」
「精霊としての本来の姿……あっ……」
──そのフェンリルは、君の精霊か?
ようやく、ソフィアはアランに言われた言葉を思い出し合点がいった。
「ハナコは、精霊だった……?」
自分にしか見えない、フェンリルの存在。
日頃のストレスが生み出した夢幻か何かだと思っていたが、どうやら精霊だったらしい。
薄々そんな気がしないでもないと思っていたが、いざ客観的な事実を前にすると驚きが勝った。
「なんだ、既知だと思っていた。ちなみに、“ハナコ”という名前は、東洋の国の女性につけるオーソドックスなものと記憶しているのだが」
通りすがりのちょうちょを無邪気に追いかけるハナコを見て、アランは言った。
「ハナコはオスだぞ」
「え゛?」
「……まさかそれも知らなかったのか?」
また、思い出す。
あのパーティでの、アランとの一幕。
『ハナコが……見えるのですか?』
『……ハナコ?』
あの時アランは、『何言ってんだこいつ』とでも言いたげな表情をしていた。
つまりあのリアクションは、『オスのフェンリルになぜメスの名前をつけているのか』というもので……。
「えええええええええええええええええええええ……!?」
ソフィアは先程のハナコの絶叫にも負けない大声をあげたのであった。
アランが高度を下げた事により、街の細かい部分まで見る事ができたソフィアが言う。
「エルメルにはたくさんの種族が暮らしているけど、人型の住民も多いから何かと都合がいいの。建造物は主に人族とドワーフが協力して作っているから、住み心地はお墨付きよ」
「あ、同じ人間もいらっしゃるんですね」
「ええ、元々エルメルは様々な種族が共存していた国だったから、その子孫の人たちね。他種族とのハーフが多数だと思うけど、純人族もいるはずよ」
「なるほど」
そう聞いて、少しだけホッとするソフィアだった。
人族が自分一人で、生活様式などが全くの別物だったらどうしよう、という不安もあったから。
「あれがこの国にたくさんの恵みを与えてくださっている、樹齢一億年の世界樹『ユグドラ』。エルメルの象徴にして心臓といっても過言ではないわ」
「じゅ、じゅれいいちおくねんっ……?」
子供が考えた物語の設定みたいな年数にソフィアは度肝を抜く。
普通に考えて木がそんな長く持つわけがないが、これだけ巨大な大樹だとありえなくもない、いやいやありえない……。
何か精霊の力的なもので保持されているのだろうと、最終的には飲み込んだ。
なんか全体的にキラキラしているし。
人間の国で暮らしていた常識はここでは通用しない、という事実を思い知ったような気がした。
「見えてきた! あれが、エルメルの王城よ」
そう言ってシエルが指差す先に、世界樹『ユグドラ』のちょうど真正面の根元に聳える巨大な城。
「綺麗……」
御伽の国に出てくるような、白くて美しい城だった。
間もなくして、その王城の敷地内に着陸する。
ソフィア、シエル、ハナコが降りてから、アランも元の人間の姿に戻った。
「長旅お疲れ様、アラン」
「はっ……」
シエルの言葉に、アランは一礼する。
「ありがとうございました、アラン様」
「どうって事はない。それよりも、身体の方は大丈夫か? 初めて飛行した者の中で、酔ってしまう者も少なくない」
「大丈夫です。むしろ、とても清々しい気分です。お気遣い、ありがとうございます」
「そうか。ところで……」
アランがハナコを見やる。
「君の精霊の様子が何やらおかしいようだが」
「え?」
ソフィアが首を傾げた途端、ハナコが『きゅいっっーーーー!!』と悲鳴にも似た声を上げた。
それからすぐ、身体が青白く眩い光を放ち始める。
「ど、どうしたのハナコ……!?」
慌てて尋ねるも、ハナコは『きゅいー! きゅいー!』と声を上げるばかり。
こんな事今までなかった。
突然やってきた親友の異常事態に狼狽えるソフィア。
しかしこの現象には見覚えがあった。
つい先程、エルメルに来る前。
あの丘で、アランが人型から白竜の姿に変化する時に放った光と同じ……。
『ここどこ!? ここどこ!? 僕、なんだかとっても懐かしい感じがするよ!』
ソフィア、アラン、シエルの誰でもない声が場に登場する。
少年にも似た、少し高めの幼い声。
「ハ、ハナコ……!?」
ソフィアは驚愕した。
先程までの小型犬サイズのハナコはもう居なかった。
全長がソフィアの三倍もあろうかというサイズの、立派な大狼がそこにいた。
『あれ? ご主人様、なんだかちっちゃくなった?』
大狼(たぶんハナコ)が、ソフィアを見下ろして言う。
「ハ、ハナコが進化した……?」
『シンカ? よくわからないけど、なんだか身体がとても軽いよ!』
わっふんわっふんと、ハナコがゴロゴロと転がったり、ソフィアの周りをクルクル回ったりする。
この無邪気な挙動、間違いなくハナコだ。
「あらあら、立派なフェンリルちゃんね」
シエルは臆する様子もなく、ハナコを眺めて呑気に言う。
「アランさん、これは一体……」
「ここら一帯は精霊力が満ち溢れているからな。その力を取り込んで、本来の姿を取り戻したのだろう」
「精霊としての本来の姿……あっ……」
──そのフェンリルは、君の精霊か?
ようやく、ソフィアはアランに言われた言葉を思い出し合点がいった。
「ハナコは、精霊だった……?」
自分にしか見えない、フェンリルの存在。
日頃のストレスが生み出した夢幻か何かだと思っていたが、どうやら精霊だったらしい。
薄々そんな気がしないでもないと思っていたが、いざ客観的な事実を前にすると驚きが勝った。
「なんだ、既知だと思っていた。ちなみに、“ハナコ”という名前は、東洋の国の女性につけるオーソドックスなものと記憶しているのだが」
通りすがりのちょうちょを無邪気に追いかけるハナコを見て、アランは言った。
「ハナコはオスだぞ」
「え゛?」
「……まさかそれも知らなかったのか?」
また、思い出す。
あのパーティでの、アランとの一幕。
『ハナコが……見えるのですか?』
『……ハナコ?』
あの時アランは、『何言ってんだこいつ』とでも言いたげな表情をしていた。
つまりあのリアクションは、『オスのフェンリルになぜメスの名前をつけているのか』というもので……。
「えええええええええええええええええええええ……!?」
ソフィアは先程のハナコの絶叫にも負けない大声をあげたのであった。
30
あなたにおすすめの小説
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
正当な権利ですので。
しゃーりん
恋愛
歳の差43歳。
18歳の伯爵令嬢セレーネは老公爵オズワルドと結婚した。
2年半後、オズワルドは亡くなり、セレーネとセレーネが産んだ子供が爵位も財産も全て手に入れた。
遠い親戚は反発するが、セレーネは妻であっただけではなく公爵家の籍にも入っていたため正当な権利があった。
再婚したセレーネは穏やかな幸せを手に入れていたが、10年後に子供の出生とオズワルドとの本当の関係が噂になるというお話です。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる