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第37話 夜の会議 アランside
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「想像以上の力でした」
夜、王城。
軍務大臣室で、ソファに座るアランが言う。
「ま、そうでしょうね」
対面に座るシエルは、のんびりと紅茶を嗜みながら頷いた。
「具体的には?」
尋ねてくるシエルに、アランは今日あった事をありのまま説明する。
「ぷははっ……あわや貴方の家が水の底に沈むところだったわね」
お腹を抱えて笑うシエルに、アランは眉を顰めて息をつく。
「笑い事じゃありませんよ」
「“抑制の魔道具”を渡さなかった、貴方の落ち度でしょう?」
「それは否定しませんが……一回、抑制なしでどれだけの力を出力するか、見た方が良いと思いまして」
「わかってるわ。ま、お陰でソフィアちゃんの実力は判明したわね」
満足げにシエルは言う。
「あとは力の制御だけ、って感じかしら?」
「それが難しいのですがね。とはいえ、彼女ほどの才能の持ち主であれば、そう遠くないうちに制御出来るようになるかと。本人も練習には積極的なようなので、明日以降、回復してから鍛錬に取り掛かる予定です」
「よろしい。ところで、そもそもの話……」
じっと、アランの目を見つめてシエルは問う。
「どうしてソフィアちゃんは、あれだけ膨大な精霊力を持っているんでしょう?」
「……それがわかれば苦労しないですよ」
シエルもアランも、それについて明確な答えを持ち合わせていなかった。
代々、精霊がいないはずの土地において、突然変異的に精霊力を持って誕生する人間がいるのはあり得る話だ。
だがソフィアが持つ精霊力のキャパシティは桁違いそのもの。
突然変異にしても、全くの理由なく出現するのは無理のある話というのが、二人の見解だった。
「ただ、ソフィアが連れてきたあのフェンリルの精霊と、何らかの関係があるように感じます」
「ふうん……」
ニコニコ、ではなく、ニマニマといった笑みをシエルが浮かべる。
「なんですか」
「ちゃんと名前で呼ぶようになったんだ、って」
「……今は関係のない話でしょう」
「ふふ、順調だなーと思って。……話を戻すわ。ハナコちゃんね」
「そうです。そもそも精霊がいないはずのフェルミに、あれだけの力を持つ精霊がいること自体、おかしいかと。それを従者のように従えているのなら尚更」
「そのあたりについて、ソフィアちゃんからヒアリングした?」
「いえ、特には」
「そこは聞きなさいよ」
「聞くタイミングを損ねてました」
「肝心なところで抜けがちよね、アランは」
「返す言葉もない」
そう言いつつも、全く悪びれる様子のないアラン。
何百年もの時を生き、強大な力を持つ竜人が故の感覚だとシエルは割り切るようにしていた。
「まあ、今今知らないと何かしら不都合が生じる事でもないから、タイミングを見てソフィアちゃんに聞くことね」
「わかりました」
「それ以外にも、ちゃんとコミュニケーションを取ること」
「もちろんです。ソフィアの持つ力を最大限、エルメルに活かすことが出来るよう、連携を強固にして参ります」
「いや、そういう意味じゃなくて……夫婦としてよ」
「夫婦らしさ、というのはなるべく意識しているつもりですが」
「それならいいのだけれど……妙に心配だわ」
額に手を当てて、シエルはため息をついた。
「まあいいわ。引き続き、ソフィアちゃんに関する報告、お願いね。彼女は我がエルメルにとって、救世主となる力を持っているのですから」
「もちろんです。ちなみに……世界樹の状態は?」
アランが尋ねると、シエルは時間をおいたあと微かに目を伏せて言った。
「……良くはない、といったところかしら」
その言葉に対し、アランは険しい表情を浮かべる。
「なるべく早く、ソフィアが力の制御ができるよう尽力します」
「そう急かさなくても大丈夫よ。良くはない、と言っても今日明日で何かが起こるってわけじゃないから……まだ、大丈夫よ」
シエルの言葉に、アランは小さく安堵の息を漏らすのであった。
夜、王城。
軍務大臣室で、ソファに座るアランが言う。
「ま、そうでしょうね」
対面に座るシエルは、のんびりと紅茶を嗜みながら頷いた。
「具体的には?」
尋ねてくるシエルに、アランは今日あった事をありのまま説明する。
「ぷははっ……あわや貴方の家が水の底に沈むところだったわね」
お腹を抱えて笑うシエルに、アランは眉を顰めて息をつく。
「笑い事じゃありませんよ」
「“抑制の魔道具”を渡さなかった、貴方の落ち度でしょう?」
「それは否定しませんが……一回、抑制なしでどれだけの力を出力するか、見た方が良いと思いまして」
「わかってるわ。ま、お陰でソフィアちゃんの実力は判明したわね」
満足げにシエルは言う。
「あとは力の制御だけ、って感じかしら?」
「それが難しいのですがね。とはいえ、彼女ほどの才能の持ち主であれば、そう遠くないうちに制御出来るようになるかと。本人も練習には積極的なようなので、明日以降、回復してから鍛錬に取り掛かる予定です」
「よろしい。ところで、そもそもの話……」
じっと、アランの目を見つめてシエルは問う。
「どうしてソフィアちゃんは、あれだけ膨大な精霊力を持っているんでしょう?」
「……それがわかれば苦労しないですよ」
シエルもアランも、それについて明確な答えを持ち合わせていなかった。
代々、精霊がいないはずの土地において、突然変異的に精霊力を持って誕生する人間がいるのはあり得る話だ。
だがソフィアが持つ精霊力のキャパシティは桁違いそのもの。
突然変異にしても、全くの理由なく出現するのは無理のある話というのが、二人の見解だった。
「ただ、ソフィアが連れてきたあのフェンリルの精霊と、何らかの関係があるように感じます」
「ふうん……」
ニコニコ、ではなく、ニマニマといった笑みをシエルが浮かべる。
「なんですか」
「ちゃんと名前で呼ぶようになったんだ、って」
「……今は関係のない話でしょう」
「ふふ、順調だなーと思って。……話を戻すわ。ハナコちゃんね」
「そうです。そもそも精霊がいないはずのフェルミに、あれだけの力を持つ精霊がいること自体、おかしいかと。それを従者のように従えているのなら尚更」
「そのあたりについて、ソフィアちゃんからヒアリングした?」
「いえ、特には」
「そこは聞きなさいよ」
「聞くタイミングを損ねてました」
「肝心なところで抜けがちよね、アランは」
「返す言葉もない」
そう言いつつも、全く悪びれる様子のないアラン。
何百年もの時を生き、強大な力を持つ竜人が故の感覚だとシエルは割り切るようにしていた。
「まあ、今今知らないと何かしら不都合が生じる事でもないから、タイミングを見てソフィアちゃんに聞くことね」
「わかりました」
「それ以外にも、ちゃんとコミュニケーションを取ること」
「もちろんです。ソフィアの持つ力を最大限、エルメルに活かすことが出来るよう、連携を強固にして参ります」
「いや、そういう意味じゃなくて……夫婦としてよ」
「夫婦らしさ、というのはなるべく意識しているつもりですが」
「それならいいのだけれど……妙に心配だわ」
額に手を当てて、シエルはため息をついた。
「まあいいわ。引き続き、ソフィアちゃんに関する報告、お願いね。彼女は我がエルメルにとって、救世主となる力を持っているのですから」
「もちろんです。ちなみに……世界樹の状態は?」
アランが尋ねると、シエルは時間をおいたあと微かに目を伏せて言った。
「……良くはない、といったところかしら」
その言葉に対し、アランは険しい表情を浮かべる。
「なるべく早く、ソフィアが力の制御ができるよう尽力します」
「そう急かさなくても大丈夫よ。良くはない、と言っても今日明日で何かが起こるってわけじゃないから……まだ、大丈夫よ」
シエルの言葉に、アランは小さく安堵の息を漏らすのであった。
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