竜神様に見初められまして~虐げられ令嬢は精霊王国にて三食もふもふ溺愛付きの生活を送り幸せになる~

青季 ふゆ

文字の大きさ
44 / 65

第44話 とんでもないちから

しおりを挟む
「わっ……」

 火の水晶が、目を瞑っていてもわかるほどの輝きを発した事にソフィアは驚いた。

 思わず水晶から手を離してしまう。

 見ると、水晶はモーリスの手の上で太陽にも負けん勢いでピカピカピカーと輝いていた。

「あ、あの……」

 あんぐりと口を開けてポカンとしているモーリスに、ソフィアは尋ねる。

「これは……その、適性があった、という認識で良い?」
「えっ……? ああ、そう、ですね」

 我に帰ったモーリスが慌てて眼鏡を持ち上げて言う。

「これほどの輝きは、今まで見たことがございません。ソフィア様は間違いなく、火の精霊の適性が高いと言えるでしょう」
「よ、よかったぁ……」

 胸に手を当て、ほうっと息をつくソフィア。
 とりあえず適正無しの無能判定はされないようで、ソフィアは心の底から安堵していた。

 とはいえ。

(火の、適正かあ……)

 ちょっぴり複雑な心境ではあった。
 火ってなんとなく、扱いが難しくて危険なイメージがあったから。
 自分の性格的には向いていないのでは、と思う部分もあった。

「いや、それにしてもとんでもない輝きですね……このレベルだと、王城に仕える火の精霊魔法士並み……いえ、下手したらそれ以上の力を持っているでしょう」
「そ、そんなに……?」

 昨日の一件と同じ、言われてもピンと来なかった。
 ただただ困惑の声を漏らすソフィアに、モーリスはどこか興奮した様子で提案する。

「一応、他の属性の適性も調べてみますか」
「ええ、お願いしたいわ」

 前のめりにソフィアは言う。

 もしかすると、あと一つくらいは他にも適正の属性があるかも……?

(流石に、それは無いか……)

 自分の中に湧き出た期待をすぐに打ち消す。

 期待はしない。
 期待した結果、今まで何度も裏切られた来たのだと、ソフィアは自分にい言い聞かせた。
 

「クラリス、頼む」
「は、はい、ただいま」

 一連の流れをぽかんとした様子で眺めていたクラリスが、次は白い水晶……風の水晶を持ってやってくる。

「ではお願いします、ソフィア様」

 先ほどと同じように、水晶を持つモーリスにソフィアはこくりと頷く。

 先程よりかは迷いのない動作で、ソフィアは手を水晶に添え……。

 ビカビカビカビカビカーン!!

「きゃっ……」

 火の水晶の輝きと同じくらい、眩い輝きを放ち始めソフィアは仰天する。

「なっ……こ、これは……!?」

 一方のモーリスは目をガン開いた。

「風にも適性がある、という事でいいのかな……?」
「ええ、バッチリ適性がございます。これで二種類ですね!」
「それって、結構すごい事?」
「本当に凄いです、ソフィア様! 適性があるだけならまだしも、どちらもこれだけの輝きとなると……国内でもそうそうおりませんよ……!!」
「そ、そうなの……そうなのね……?」

 やはりピンと来ていないソフィアであったが。
 どうやら二種類は適正はありそうだと、嬉しい気持ちになって……。

(あれ……でも昨日、水の精霊魔法は割とうまくいったような……)

 ということは、もしかして、もしかすると。

「では次、水の水晶を……」
「こ、こちらになります」

 モーリスもクラリスも、何やら言葉を震わせながら水の水晶を準備する。

 また、同じように手を当てて、ソフィアは精霊力を流し込……。


 ビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカーン!!!!!!!!!!


「これまでの数々の非礼をお詫びしたい。どうやら貴女は稀代の天才のようだ」

 とんでもない輝きを放つ水晶を手に頭を下げるモーリスはなんというか、とてもシュールな光景であった。

「え、ええっ? 非礼なんて今までなかったような……」

 今この時まで、モーリスが内心でソフィアに対しどのような印象を抱いていたかなんて知る由もなく困惑するソフィア。

 一方で、驚きを一周回って冷静になったモーリスは、ソフィアに対し尊敬と畏怖の念を抱いていた。

(このほどの逸材……現時点でエルメルにいるだろうか……)

 三種類に適性がある者は、数人存在する。
 しかしそれぞれの適性がこれほどまでに強い者は……怪しい。

 何はともあれソフィアは、エルメルの中でも替えの効かないとんでもない才能の持ち主、という事は確定的だった。

 ──ソフィアは莫大な精霊力を持っていて、精霊魔法に関してはとんでもない才能を持っている。

 アランの言葉に対する疑いは、とうの昔に霧散していた。

(アラン様が私に、この大義を与えてくださった理由が……わかりました)

 身体が、震える。
 武者振るいというやつだ。

 これほどの才能を生かすも殺すも自分次第。
 もちろん生かす方向に全力を尽くすが、ソフィアほどの精霊力の持ち主なら、この先のエルメルに歴史を残す存在になることは間違いない。

 その確信があった。

「あの……一応、調べますか?」

 クラリスが最後の水晶……土の水晶を差し出してくる。

「調べるだけ、調べてみますか……その必要はないでしょうけど」

 流石の流石に三属性で打ち止めだろう、とモーリスは高を括っていた。

「四種類の適性を持つなんて、聞いたことがありません。四属性の適性があるというのは歴史を振り返って見ても時代に一人いるかいないか……それこそ“世界樹の巫女”くらいですから……」
(世界樹の巫女……?)

 耳馴染みの無いワードに首を傾げるソフィア。
 一方でクラリスは、その単語にごくりと喉を鳴らす。

(いやでも……まさか、ね……)

 モーリスの背中に冷たい汗が伝う。

 あり得ない。
 そんなわけがない。

(そう頭では思っていても……もしかすると、ソフィア様なら……)

 そんな予感が、モーリスの脳裏に過った。
 クラリスから土の水晶を受け取って、ソフィアに向ける。

「これが最後の一個です。よろしくお願いします」
「え、ええ……わかったわ」

 ごくりと、息を呑む音が三人分聞こえる。

 先ほどとは打って変わって尋常じゃないほど緊迫した空気の中。

 ソフィアは水晶に手を当てて、精霊力を流し込む。

 ──瞬間、ソフィアの胸に懐かしいような、温かいような、心地よい感覚が湧き出たかと思うと。

 ぴかっと、先ほどとは比べ物にならないほどの光、いや、もはや閃光が弾けた。

 悲鳴をあげる間もなく、ビシビシビシイッ!! と水晶に亀裂が走り。

「うおっ……!?」 
「きゃっ……!!」

 ばりんっと、真っ二つに砕けた。
 モーリスの掌から、二つになった水晶が地面に落下する。

 あまりに予想外の事で、モーリスは目の前で起きた出来事を現実と認識できず絶句した。

「ソフィア様!? 大丈夫ですか、お怪我はありませんか……!?」
「え、ええ……大丈夫よ」
 すぎにクラリスがソフィアのそばにやって来て、手に怪我はないかを見回している。
 幸い、ソフィアもモーリスも無傷だったが……。

「…………」
「…………」
「…………」

 人は本当に驚く出来事が起こった時、声を上げるのも忘れて黙ってしまうらしい。

 その場にいた三人、誰一人としてしばらく言葉を発する事が出来なかった。

「……ご、ごめんなさい。高い品を、壊してしまったわ……」

 最初に口を開いたソフィアのズレたコメントに、モーリスはずっこけそうになる。

 身体を持ち直して眼鏡を持ち上げた後、状況を整理する。

 今まで眩い光を発するだけだった水晶が、真っ二つに弾けた。
 つまりそれは、ソフィアから流れる精霊力に水晶が耐えられなかったという事。

 俄には信じがたい。

 水晶自体の故障……も可能性として考えたが、王城にて厳重に保管された一級品に限ってそれは考えにくかった。

 起こった事をそのまま受け止めるとつまり、これが意味する答えは……ソフィアは四属性全てに適性がありかつどれも強大な力を持っていて、その中でも土の精霊との適性があり得ないくらい強い……などという、報告書に書いて提出したら「夢でも見てたのか」と怒鳴り返されそうな物だった。

どこか震えた声で、モーリスは尋ねた。

「ソフィア様は一体……何者ですか?」
「さ、さあ……?」

 国家の命運が掛かるほどの力を証明したにもかかわらず、どこにでもいそうな少女のような仕草をするソフィアに、モーリスは「どうしたものか……」と天を仰いでしまうのであった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

正当な権利ですので。

しゃーりん
恋愛
歳の差43歳。  18歳の伯爵令嬢セレーネは老公爵オズワルドと結婚した。 2年半後、オズワルドは亡くなり、セレーネとセレーネが産んだ子供が爵位も財産も全て手に入れた。 遠い親戚は反発するが、セレーネは妻であっただけではなく公爵家の籍にも入っていたため正当な権利があった。 再婚したセレーネは穏やかな幸せを手に入れていたが、10年後に子供の出生とオズワルドとの本当の関係が噂になるというお話です。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...