絶対服従幼稚園

夕日 空

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絶対服従幼稚園 8話

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「あのね…このお守りでね、ショウタくんは、僕の言うことを聞いてくれるようになったの。」
「そうかい、上手に言えたんだねぇ。」
「おもちゃを取られることがなくなったらね、幼稚園がもっと楽しくなったの。」
「うんうん、それは良かったねぇ。」
「でもね…ミクちゃんが、『どうしてショウタくんはタクミくんの言うこと聞くのか教えて』って言ってきてね、僕…どうしたらいいか分からなくて、ミクちゃんも『ゼッタイフクジュウ』させちゃったの。『気にしないで遊んでて』って…。」
「…うんうん…そうかいそうかい…。」
「そしたらね、毎日毎日、ショウタくんとミクちゃんを『ゼッタイフクジュウ』させなきゃいけなくなっちゃって、それで…それで…。」

 タクミはみるみるうちに鼻声になり、その目は、今にもこぼれ落ちそうなほど涙で滲んでいた。

「うん…いいんだよ、ゆっくりでいいからね。」
「うん…ぐすっ…それでね…き、昨日…うっ…お母さん…お母さんもね、お母さんも…。」
「よしよし、大丈夫だよ…間違って、お母さんにもお守りを使っちゃったのかい?」
「…うん。」
「なるほどねぇ…。」
「だから…僕、悪い使い方しちゃったから…これ…怖くて…もう…。」

 タクミは、なんとか涙を堪えながら、右手に持っていたお守りを差し出した。

「ああ、分かったよ。怖くなっちゃったんだねぇ…それは、悪いことをしちゃったねぇ…。」

 おばあさんはそう言うと、しわだらけの手をお守りに伸ばした。しかし、その途中でピタリと手を止めると、優しい口調で、タクミに問いかけた。

「だけど…本当にいいのかい?このお守りがなくなったら、ボクはまた、お友だちにおもちゃを取られる毎日に、後戻りだよ?」
「…。」
「このお守りがなくなったら、また幼稚園が楽しくなくなっちゃうかもしれないよ?それでも…いいのかい?」
「…。」

 タクミは、おばあさんの問いかけを聞いて、少しのあいだ顔を伏せ、考え込んだ。そして、、しばらくして顔を上げると、ゆっくりと口を開いた。

「うん…大丈夫!僕、このお守りがなくても、ちゃんとショウタくんに『やめて』って言う!」
「…そうかい。でも、それでもお友だちが聞いてくれなかったら?」
「それなら…それなら、聞いてくれるまで、何回も言う!」
「…本当に言えるのかい?」
「うん、言えるよ!僕、ちゃんと言える!」
「…ふふふ、そうかいそうかい。意地悪なことばかり言って、すまななかったねぇ。それじゃあ、このお守りは、おばあちゃんが受けとっておくからね。」
「うん!」
「…頑張ってね。ボクなら、きっと大丈夫さ。」
「…うん!」
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