6 / 65
6.豹変
しおりを挟む
婚姻後、ジョーは父親から男爵位を譲り受けた。エリーゼを平民にするわけにはいかないからだ。後継者でも良かったのだが、義父が自分が家長の家にエリーゼ様が!?エリーゼ様に何か物申すなど滅相もない!と泣いたのだ。
後継者だったサイラスは就職先が見つかったしとあっけらかんとその座を手放した。
領地もない名ばかりの男爵にやることはない。仕事はしていないが、貴族手当と公爵家からの援助もある。
ジョーは母の思い通り、健やかに穏やかに過ごせるはずだった。
しかし世の中は無情だった。
彼の本質なのか、それとも環境が人を変えたのかはわからない。しかし人目のあるところに行こうというジョーの頑張りが、努力が裏目に出た。
夫婦同伴のパーティーにエリーゼと勇気を出して参加したジョー。
そこは眩しい世界で彼の苦手とするもののはずだった。その世界は彼の醜さを際立たせ、周囲から悪意を受けるものだったから。
だが
「エリーゼ様ご機嫌よう」
品の良い老婦人がエリーゼに声を掛ける。
「ご機嫌よう」
「あら、そちらはご主人ですか?」
「ええ、ジョーですわ」
「まあ、あなたが幸運を掴んだラッキーボーイね」
ふふふ、と笑うその瞳はとても温かい。それは幸せになりなさいというエリーゼへ向けた瞳だったが彼は自分に向けられたもののように感じた。
その後も
「君がエリーゼ様のパートナーだね。なんと羨ましい」
そういう男性の瞳には言葉の通り羨望の色が浮かんでいる。
「エリーゼ様と結婚できるなんて安泰ですなぁ」
そう言う男性は朗らかに笑っているものの、目に悪意がある。それは嫉妬というもので。
エリーゼの友人、彼女を慕う女性たち。彼女たちはエリーゼに声を掛けているのだが、ジョーは自分が美女に囲まれているような錯覚に陥る。
だって彼女たちの視線が彼にも向くから。
男性からは羨ましいと羨望の的。見た目の醜さや地位から嘲笑われることはあってもそんな言葉や視線など受けたことがなかったジョー。
彼の目の奥に仄暗い光が灯ったことに気づけなかったエリーゼ。
彼は今まで感じたことのなかった快感の虜になってしまった。そして勘違いした。本来の自分は皆にちやほやされる人間だったのだと。
その後ジョーはエリーゼを連れ頻繁にパーティーに参加するようになった。妙な胸騒ぎはしたものの、少しでも自信がついた方が良いだろうとエリーゼは思ってしまった。
そのうち1人でも夜会に参加するようになったジョー。エリーゼがいなくても寄ってくる人、人、人。彼らはジョーを羨み、媚びへつらいチヤホヤと持ち上げた。
そして――女から誘われるようになった。
それがエリーゼに勝ちたい、あの気高き美しい姫様から奪ってやりたいという思いからだとは気づかぬジョーは、調子に乗った。
自分には魅力があるのだと。
そのうち、帰りが極端に遅くなるようになった。時には朝帰りする日もあった。どうするべきかと考えるエリーゼのもとに不快な噂が耳に入るようになった。
エリーゼ様がいるにも関わらず浮気する身の程知らずな男。醜いくせに浮気三昧の男。近い内に王家や公爵家に消されるだろう男。
そんなふうに言われ始めた。
噂が立ち慌てたジョーは暫く大人しくしていたようだが、エリーゼからも公爵家からも何も言われないのをいいことに再び、いや、更に派手に遊び始めた。
それでもエリーゼも公爵も黙ったままだった。
愚行は更に酷くなった。
ある時ジョーに無理矢理関係を結ばされたとまだ10代前半の少女が男爵邸に飛び込んできた。
それはもはや調子に乗るとか以前の問題で、もはや犯罪だとエリーゼは朝帰りのジョーをエントランスで捕まえ、苦言を呈した。
「他に女を作ることはよくあることですが、無理矢理はなりません」
そう言うエリーゼをジョーは真っ直ぐ睨みつけてきた。いつからエリーゼの顔を正面から見られるようになっていたのか……久しぶりに会った夫の変貌ぶりに一瞬息を呑んでしまったのがいけなかったのか。
「ああ?嫉妬かぁ?お前みたいな高貴な女でも嫉妬なんてするんだなぁ!はっはっはっ!醜い俺の為にお前が嫉妬?やったことも、ほとんど会話したこともないのになぁ?」
大声で叫び、笑い声を上げるので酒の匂いが辺りに漂う。思わず顔を顰めたエリーゼ。ジョーが手に持っていた酒瓶がその頬を掠めた。エリーゼに向かい振り回したのだ。
「なんだその顔はぁ!俺は男爵でお前は俺の付属品なんだよ!俺がいなくなればお前はただの平民なんだよ!もっと俺を敬え!頭を下げて生きろ!血筋がなんだ!今が大事なんだぞ!」
夫のあまりにもの変わり身にただただ言葉を失うエリーゼ。
「酷いこと言われたって父親に泣きつくのかあ?無駄無駄!だってお前は俺みたいなやつと結婚させられて捨てられたんだよ!俺がどれだけ遊びまくろうが何も言われないのがいい証拠だろう!?」
あっはっはっはっと何が楽しいのかわからないが楽しそうに笑う夫にエリーゼの心は冷えていく。
「俺に夢中な子猫ちゃんたちが色々と教えてくれたんだよ!妻より旦那が偉いのは当たり前!身分が高い家の女が身分の低いやつに嫁いだら家族から捨てられるのは世の常識だってな!」
どうだと言わんばかりに胸を張る夫に何を言っても無駄だと感じたエリーゼは何も言わない。
「な、なんなんだよ、その顔は!なんで何も言わないんだよ!?この、調子に乗んなよ!このクソアマがあっ!」
その言葉と同時に手のひらが頬に近づくがビクリと止まる。
ジョーの喉からヒッと悲鳴が漏れる。
静かな怒り。
声を荒げるでもなく、暴力を振るうでもない。
圧だけで人を制する怒り。
エリーゼの様子に恐怖を覚えたジョーは、生意気な女がっ!と捨て台詞を吐き逃げ出す。
その背に向かいエリーゼは言葉を発する。
「無理矢理はなりませんよ」
「う、うるさい!どうしようと勝手だろう!」
「それは犯罪です。あなたは自分に自信があるようですし……なぜ無理矢理する必要があるのです?ああ、無理矢理でないと誰も相手にしてくれないのですか?」
冷たく笑うエリーゼにそれ以上言葉を返せず、部屋に逃げるジョー。
それ以降とりあえず同意なき行為はしていないようだったので好き勝手にさせていたのだが……。
何も言われなさすぎて踏み入れてはならぬ境界もわからぬ愚か者になっていたようで非常に遺憾である。
後継者だったサイラスは就職先が見つかったしとあっけらかんとその座を手放した。
領地もない名ばかりの男爵にやることはない。仕事はしていないが、貴族手当と公爵家からの援助もある。
ジョーは母の思い通り、健やかに穏やかに過ごせるはずだった。
しかし世の中は無情だった。
彼の本質なのか、それとも環境が人を変えたのかはわからない。しかし人目のあるところに行こうというジョーの頑張りが、努力が裏目に出た。
夫婦同伴のパーティーにエリーゼと勇気を出して参加したジョー。
そこは眩しい世界で彼の苦手とするもののはずだった。その世界は彼の醜さを際立たせ、周囲から悪意を受けるものだったから。
だが
「エリーゼ様ご機嫌よう」
品の良い老婦人がエリーゼに声を掛ける。
「ご機嫌よう」
「あら、そちらはご主人ですか?」
「ええ、ジョーですわ」
「まあ、あなたが幸運を掴んだラッキーボーイね」
ふふふ、と笑うその瞳はとても温かい。それは幸せになりなさいというエリーゼへ向けた瞳だったが彼は自分に向けられたもののように感じた。
その後も
「君がエリーゼ様のパートナーだね。なんと羨ましい」
そういう男性の瞳には言葉の通り羨望の色が浮かんでいる。
「エリーゼ様と結婚できるなんて安泰ですなぁ」
そう言う男性は朗らかに笑っているものの、目に悪意がある。それは嫉妬というもので。
エリーゼの友人、彼女を慕う女性たち。彼女たちはエリーゼに声を掛けているのだが、ジョーは自分が美女に囲まれているような錯覚に陥る。
だって彼女たちの視線が彼にも向くから。
男性からは羨ましいと羨望の的。見た目の醜さや地位から嘲笑われることはあってもそんな言葉や視線など受けたことがなかったジョー。
彼の目の奥に仄暗い光が灯ったことに気づけなかったエリーゼ。
彼は今まで感じたことのなかった快感の虜になってしまった。そして勘違いした。本来の自分は皆にちやほやされる人間だったのだと。
その後ジョーはエリーゼを連れ頻繁にパーティーに参加するようになった。妙な胸騒ぎはしたものの、少しでも自信がついた方が良いだろうとエリーゼは思ってしまった。
そのうち1人でも夜会に参加するようになったジョー。エリーゼがいなくても寄ってくる人、人、人。彼らはジョーを羨み、媚びへつらいチヤホヤと持ち上げた。
そして――女から誘われるようになった。
それがエリーゼに勝ちたい、あの気高き美しい姫様から奪ってやりたいという思いからだとは気づかぬジョーは、調子に乗った。
自分には魅力があるのだと。
そのうち、帰りが極端に遅くなるようになった。時には朝帰りする日もあった。どうするべきかと考えるエリーゼのもとに不快な噂が耳に入るようになった。
エリーゼ様がいるにも関わらず浮気する身の程知らずな男。醜いくせに浮気三昧の男。近い内に王家や公爵家に消されるだろう男。
そんなふうに言われ始めた。
噂が立ち慌てたジョーは暫く大人しくしていたようだが、エリーゼからも公爵家からも何も言われないのをいいことに再び、いや、更に派手に遊び始めた。
それでもエリーゼも公爵も黙ったままだった。
愚行は更に酷くなった。
ある時ジョーに無理矢理関係を結ばされたとまだ10代前半の少女が男爵邸に飛び込んできた。
それはもはや調子に乗るとか以前の問題で、もはや犯罪だとエリーゼは朝帰りのジョーをエントランスで捕まえ、苦言を呈した。
「他に女を作ることはよくあることですが、無理矢理はなりません」
そう言うエリーゼをジョーは真っ直ぐ睨みつけてきた。いつからエリーゼの顔を正面から見られるようになっていたのか……久しぶりに会った夫の変貌ぶりに一瞬息を呑んでしまったのがいけなかったのか。
「ああ?嫉妬かぁ?お前みたいな高貴な女でも嫉妬なんてするんだなぁ!はっはっはっ!醜い俺の為にお前が嫉妬?やったことも、ほとんど会話したこともないのになぁ?」
大声で叫び、笑い声を上げるので酒の匂いが辺りに漂う。思わず顔を顰めたエリーゼ。ジョーが手に持っていた酒瓶がその頬を掠めた。エリーゼに向かい振り回したのだ。
「なんだその顔はぁ!俺は男爵でお前は俺の付属品なんだよ!俺がいなくなればお前はただの平民なんだよ!もっと俺を敬え!頭を下げて生きろ!血筋がなんだ!今が大事なんだぞ!」
夫のあまりにもの変わり身にただただ言葉を失うエリーゼ。
「酷いこと言われたって父親に泣きつくのかあ?無駄無駄!だってお前は俺みたいなやつと結婚させられて捨てられたんだよ!俺がどれだけ遊びまくろうが何も言われないのがいい証拠だろう!?」
あっはっはっはっと何が楽しいのかわからないが楽しそうに笑う夫にエリーゼの心は冷えていく。
「俺に夢中な子猫ちゃんたちが色々と教えてくれたんだよ!妻より旦那が偉いのは当たり前!身分が高い家の女が身分の低いやつに嫁いだら家族から捨てられるのは世の常識だってな!」
どうだと言わんばかりに胸を張る夫に何を言っても無駄だと感じたエリーゼは何も言わない。
「な、なんなんだよ、その顔は!なんで何も言わないんだよ!?この、調子に乗んなよ!このクソアマがあっ!」
その言葉と同時に手のひらが頬に近づくがビクリと止まる。
ジョーの喉からヒッと悲鳴が漏れる。
静かな怒り。
声を荒げるでもなく、暴力を振るうでもない。
圧だけで人を制する怒り。
エリーゼの様子に恐怖を覚えたジョーは、生意気な女がっ!と捨て台詞を吐き逃げ出す。
その背に向かいエリーゼは言葉を発する。
「無理矢理はなりませんよ」
「う、うるさい!どうしようと勝手だろう!」
「それは犯罪です。あなたは自分に自信があるようですし……なぜ無理矢理する必要があるのです?ああ、無理矢理でないと誰も相手にしてくれないのですか?」
冷たく笑うエリーゼにそれ以上言葉を返せず、部屋に逃げるジョー。
それ以降とりあえず同意なき行為はしていないようだったので好き勝手にさせていたのだが……。
何も言われなさすぎて踏み入れてはならぬ境界もわからぬ愚か者になっていたようで非常に遺憾である。
111
あなたにおすすめの小説
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。
ぽんぽこ狸
恋愛
レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。
その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。
ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。
しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。
それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。
彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
「予備」として連れてこられた私が、本命を連れてきたと勘違いした王国の滅亡フラグを華麗に回収して隣国の聖女になりました
平山和人
恋愛
王国の辺境伯令嬢セレスティアは、生まれつき高い治癒魔法を持つ聖女の器でした。しかし、十年間の婚約期間の末、王太子ルシウスから「真の聖女は別にいる。お前は不要になった」と一方的に婚約を破棄されます。ルシウスが連れてきたのは、派手な加護を持つ自称「聖女」の少女、リリア。セレスティアは失意の中、国境を越えた隣国シエルヴァード帝国へ。
一方、ルシウスはセレスティアの地味な治癒魔法こそが、王国の呪いの進行を十年間食い止めていた「代替の聖女」の役割だったことに気づきません。彼の連れてきたリリアは、見かけの派手さとは裏腹に呪いを加速させる力を持っていました。
隣国でその真の力を認められたセレスティアは、帝国の聖女として迎えられます。王国が衰退し、隣国が隆盛を極める中、ルシウスはようやくセレスティアの真価に気づき復縁を迫りますが、後の祭り。これは、価値を誤認した愚かな男と、自分の力で世界を変えた本物の聖女の、代わりではなく主役になる物語です。
そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。
ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。
不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。
ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。
伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。
偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。
そんな彼女の元に、実家から申し出があった。
事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。
しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。
アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。
※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる