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31.罵声と快感
あらあら、また無駄に自信に満ちた顔になってしまったわ。取り巻き君たちがジョーの怒りの表情に気づき自分たちの役割を思い出したよう。
それでいい、それでこそ次の段階に進めるというもの。
それにしてもいつ狩りは始まるのかしら?普通は主催者が開始の声を上げるものなのだが、ジョーはちゃんとわかっているのだろうか?
わかっていないのでしょうねぇ。わかっていたら何やらやる気満々で近づいてくるわけがない。肩を上下させ鼻息荒く近づいてくるジョー。
あ、なんかかかったら嫌だから近づかないで欲しいかも。3人の心は一つだったが、そんな気持ちにジョーが気づくわけがない。
フガーフガーと不快な鼻音が彼らのすぐそばで聞こえてくるようになった。しかし、うえぇと思ったのは一瞬のことでそんなもの気にならなくなった。
「エドモンド様」
エリーゼとサイラスは予想外の事態に目を丸くしていた。ジョーに対し背を向け座っているエドモンドの顔が般若と化したからだ。
夜会などで挨拶を交わしたこともない、ついでに言えば先程話したような話していないようなやり取りしかしていない格下男爵に名前呼びされるなど喧嘩を売られているようなものである。
そもそも挨拶もしたことがないのに、パーティーや狩猟大会に誘うこと自体失礼な行為と言える。事前にどこかで挨拶するなり、共通の知人に紹介してもらうのがマナー。
例外として交流がなくても皇室の方や高位貴族などから招待されるのは至極光栄なことである。だがジョーは職なし名ばかり男爵。え、あなた誰ですか?え?まじで誰?レベルの者に何通も何通も手紙を出されて嬉しいものなどいないだろう。
エリーゼの指令がなければ絶対にぜぇっっったいにこんなところには来ていない。
ジョーがエドモンドに敵意を抱いているわけではないことはわかっている。わかってはいるがそういう問題ではない。貴族ならば最低限の教養はしっかり身につけるべきである。まして人を招いて何かしようというのならばマナーはきちんと勉強しておくべきもの。
物腰が柔らかくて女にだらしないと思われている彼はマナーなど気にしないように思われがちだが、かなりうるさかった。エリーゼにやり込められてからマナーの大切さが骨身に染みたのだ。普段の生活はそうでもないが、社交や人が集まる場では自分にも他人にも厳しいチェックを心の中でしている。
エリーゼとサイラスは目をまん丸くして彼にしては珍しい表情をじーっと見つめる。
なんとも凄みのあるその顔。
余程お怒りのようだ。
2人の様子に自分でも顔が強張っているのはわかっているからジロジロと見るのをやめろと思うエドモンド。
余計に苛ついて顔が……顔が元に戻らない。
戻れー……戻れー……お前はやれる子だ。
「なんでしょう?ジャマル男爵」
自分に暗示をかけるが如く言い聞かせたエドモンド。ジョーに振り向いた時には見事な100点満点の笑顔を作り上げた。
俳優になれるであろう見事な変化。
ブラボー!
拍手を送りたい2人。心の中では拍手喝采である。
その見事な変化にエリーゼは扇で顔を隠し、サイラスは暑いなぁと汗を拭くふりで顔を隠す。音は無いがぶるぶると震えているのをひしひしと感じる。
なんか恥ずかしくなってくるからやめてくれとエドモンドは思うが、そんな気持ちを顔に出すような愚かな真似はしない。
「エドモンド様!私たちの仲ではないですか!そんな他人行儀な呼び方ではなく、ジョーとお呼びください!」
どんな仲だ!と言いたいが堪える。なぜまともに言葉を交わしたこともないのにこんなことが言えるのか理解に苦しむ。
それになんだその軽く広げられた手は。もしやハグか?ハグなのか?先程のサイラスとの再現を自分でしろってか?
「いえ、名前呼びはしない主義なので」
嫌悪を顔に出さないように気をつけながらきっぱりとはっきりと断る。堂々と嘘を口にして。貴族社会での拒絶方法、そんなのは暗黙の了解。格上の相手の拒絶に物申す者などいない。
「え、でも先程サイラスの名前を呼んでいましたよね?」
いや、ここにいた。稀代の愚か者が!エドモンドもジョーの後ろについてきていた取り巻きたちもピシリと固まった。エリーゼとサイラスの震えは激しくなったが。
サイラスを名前で呼んでいたのだから自分だって名前呼びされたっていいはず。むしろそうあるべきだと信じて疑わないその眼差しに嫌悪しかわかないエドモンドはひたすら黙る。
そして何も返事がないことを不思議としか思わないジョーも無言。彼がすべきことはさっさと話をそらすことなのだが……。
「えっと、あ、ジョー!ハーメル様と一緒に獲物を探してきたらどうだい?」
話をそらしたのは取り巻きの1人だった。ジョーはなんだこいつは?なんでしゃしゃってくるんだ?と睨みつけたものの、友人の言葉を無視するなどということをエドモンドの前でするわけにはいかない。
「エドモンド様!さあご一緒しましょう!……おい!お前たちはなんでエドモンド様を狩りに誘わないんだ!?狩りにいらしてるのにぼけーっと話し相手ばかりさせて何様だ!申し訳ございませんエドモンド様、こいつら本当に自分のことしか考えないクズで」
なぜか急にエリーゼとサイラスに説教をするジョー。
公爵家の娘に説教できるイケてる俺をエドモンドにアピールしようとするジョーにふい、と視線を逸らし無視するエリーゼ。ジョーの頰がカッと赤くなる。
「おい!聞いてんのか!?この能無しが!?役立たずが!何もできないくせにこんなところに来るんじゃねえよ!俺とエドモンド様の前から消えろ!」
その場がシーンと静まり返る。だがその静寂こそがジョーは好きだった。集まる視線、公爵家を恐れぬ所業への畏怖、尊敬のまなざしをひしひしと感じる。
どうせエリーゼも公爵家も何も言ってこないのだから、何も恐れることなどない。自分がいかにすごい男かをアピールするのにエリーゼを大声で貶すのは便利な手なのだ。ジョーは皆の視線が集まっていることに背中にゾクリとした快感が走るのを感じた。
わけのわからない自分勝手な理論を押し付けて罵声をあげ、自分に酔いしれる姿は非常に醜い。
静寂、視線は皆が引いている証拠だと気づかないのは愚かなジョーのみ。
それでいい、それでこそ次の段階に進めるというもの。
それにしてもいつ狩りは始まるのかしら?普通は主催者が開始の声を上げるものなのだが、ジョーはちゃんとわかっているのだろうか?
わかっていないのでしょうねぇ。わかっていたら何やらやる気満々で近づいてくるわけがない。肩を上下させ鼻息荒く近づいてくるジョー。
あ、なんかかかったら嫌だから近づかないで欲しいかも。3人の心は一つだったが、そんな気持ちにジョーが気づくわけがない。
フガーフガーと不快な鼻音が彼らのすぐそばで聞こえてくるようになった。しかし、うえぇと思ったのは一瞬のことでそんなもの気にならなくなった。
「エドモンド様」
エリーゼとサイラスは予想外の事態に目を丸くしていた。ジョーに対し背を向け座っているエドモンドの顔が般若と化したからだ。
夜会などで挨拶を交わしたこともない、ついでに言えば先程話したような話していないようなやり取りしかしていない格下男爵に名前呼びされるなど喧嘩を売られているようなものである。
そもそも挨拶もしたことがないのに、パーティーや狩猟大会に誘うこと自体失礼な行為と言える。事前にどこかで挨拶するなり、共通の知人に紹介してもらうのがマナー。
例外として交流がなくても皇室の方や高位貴族などから招待されるのは至極光栄なことである。だがジョーは職なし名ばかり男爵。え、あなた誰ですか?え?まじで誰?レベルの者に何通も何通も手紙を出されて嬉しいものなどいないだろう。
エリーゼの指令がなければ絶対にぜぇっっったいにこんなところには来ていない。
ジョーがエドモンドに敵意を抱いているわけではないことはわかっている。わかってはいるがそういう問題ではない。貴族ならば最低限の教養はしっかり身につけるべきである。まして人を招いて何かしようというのならばマナーはきちんと勉強しておくべきもの。
物腰が柔らかくて女にだらしないと思われている彼はマナーなど気にしないように思われがちだが、かなりうるさかった。エリーゼにやり込められてからマナーの大切さが骨身に染みたのだ。普段の生活はそうでもないが、社交や人が集まる場では自分にも他人にも厳しいチェックを心の中でしている。
エリーゼとサイラスは目をまん丸くして彼にしては珍しい表情をじーっと見つめる。
なんとも凄みのあるその顔。
余程お怒りのようだ。
2人の様子に自分でも顔が強張っているのはわかっているからジロジロと見るのをやめろと思うエドモンド。
余計に苛ついて顔が……顔が元に戻らない。
戻れー……戻れー……お前はやれる子だ。
「なんでしょう?ジャマル男爵」
自分に暗示をかけるが如く言い聞かせたエドモンド。ジョーに振り向いた時には見事な100点満点の笑顔を作り上げた。
俳優になれるであろう見事な変化。
ブラボー!
拍手を送りたい2人。心の中では拍手喝采である。
その見事な変化にエリーゼは扇で顔を隠し、サイラスは暑いなぁと汗を拭くふりで顔を隠す。音は無いがぶるぶると震えているのをひしひしと感じる。
なんか恥ずかしくなってくるからやめてくれとエドモンドは思うが、そんな気持ちを顔に出すような愚かな真似はしない。
「エドモンド様!私たちの仲ではないですか!そんな他人行儀な呼び方ではなく、ジョーとお呼びください!」
どんな仲だ!と言いたいが堪える。なぜまともに言葉を交わしたこともないのにこんなことが言えるのか理解に苦しむ。
それになんだその軽く広げられた手は。もしやハグか?ハグなのか?先程のサイラスとの再現を自分でしろってか?
「いえ、名前呼びはしない主義なので」
嫌悪を顔に出さないように気をつけながらきっぱりとはっきりと断る。堂々と嘘を口にして。貴族社会での拒絶方法、そんなのは暗黙の了解。格上の相手の拒絶に物申す者などいない。
「え、でも先程サイラスの名前を呼んでいましたよね?」
いや、ここにいた。稀代の愚か者が!エドモンドもジョーの後ろについてきていた取り巻きたちもピシリと固まった。エリーゼとサイラスの震えは激しくなったが。
サイラスを名前で呼んでいたのだから自分だって名前呼びされたっていいはず。むしろそうあるべきだと信じて疑わないその眼差しに嫌悪しかわかないエドモンドはひたすら黙る。
そして何も返事がないことを不思議としか思わないジョーも無言。彼がすべきことはさっさと話をそらすことなのだが……。
「えっと、あ、ジョー!ハーメル様と一緒に獲物を探してきたらどうだい?」
話をそらしたのは取り巻きの1人だった。ジョーはなんだこいつは?なんでしゃしゃってくるんだ?と睨みつけたものの、友人の言葉を無視するなどということをエドモンドの前でするわけにはいかない。
「エドモンド様!さあご一緒しましょう!……おい!お前たちはなんでエドモンド様を狩りに誘わないんだ!?狩りにいらしてるのにぼけーっと話し相手ばかりさせて何様だ!申し訳ございませんエドモンド様、こいつら本当に自分のことしか考えないクズで」
なぜか急にエリーゼとサイラスに説教をするジョー。
公爵家の娘に説教できるイケてる俺をエドモンドにアピールしようとするジョーにふい、と視線を逸らし無視するエリーゼ。ジョーの頰がカッと赤くなる。
「おい!聞いてんのか!?この能無しが!?役立たずが!何もできないくせにこんなところに来るんじゃねえよ!俺とエドモンド様の前から消えろ!」
その場がシーンと静まり返る。だがその静寂こそがジョーは好きだった。集まる視線、公爵家を恐れぬ所業への畏怖、尊敬のまなざしをひしひしと感じる。
どうせエリーゼも公爵家も何も言ってこないのだから、何も恐れることなどない。自分がいかにすごい男かをアピールするのにエリーゼを大声で貶すのは便利な手なのだ。ジョーは皆の視線が集まっていることに背中にゾクリとした快感が走るのを感じた。
わけのわからない自分勝手な理論を押し付けて罵声をあげ、自分に酔いしれる姿は非常に醜い。
静寂、視線は皆が引いている証拠だと気づかないのは愚かなジョーのみ。
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