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33.本物
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……?
………………………お、あれは?
一体何があったというのか、ジョーの顔が青褪めている。
別に何か起こったわけではなさそうなのに。
首をひねるサイラスにエリーゼは口を開く。
「やっと気づいたみたいね」
「何に?」
「ふふ……お馬鹿さん」
エリーゼの視線はサイラスを通り越しジョーに向けられていた。
ゆっくりと瞬きをするエリーゼ。
身の程を知らないからそんな目に遭うのよ。
エリーゼはゆったりと口を笑みの形にした。
おかしい――。
エリーゼとサイラスよりもエドモンドと仲良くなってやった。全てを持った男の友人、いやもう親友だな。いつも俺に付き従う友人たち、羨ましいだろう?俺たちは友人関係とはいえ、お前たちには一生手に入らないものだろう。友人でも格が違うのだ。
それなのに………
それなのになんで誰も俺を見ていないんだ?
なぜ皆エドモンドにそんな憧憬の視線を向けるのか。
その視線は俺のもののはず。共に俺にも向けられなければならないもののはず。
「取り巻きたちの視線がエドモンドに向かっていることにやっと気づいたみたいね」
ああ、それはそうだろう。あれだけの美男だし、そもそもこんな何の取り柄もない男爵家の集まりに来るはずもないレアキャラなのだから当たり前である。
「当たり前じゃないのがジョーなのよ」
いや、まさか。いくらなんでも……。
「自分はエドモンドと同等と思ってるんだもの。そりゃあ自分が注目されてなければショックよ」
えー……。
いやいや、それはないだろ。
「やっぱり本当に全てを持った男は見た目も極上だけれどオーラがあるわ。格が違うもの。金目的で向けられる下卑たゴマすりの目と心からの敬意、憧れを宿した目というのはやっぱり輝きが違うわよね」
取り巻きたちはエドモンドをぽーっと見つめている。決してラブではないが。男としても見惚れる魅力が彼にはある。
美麗な顔、優雅な仕草、長い手足、桁外れの金持ち、優秀な頭脳、仕事の才覚……何一つジョーにはないもの。あんなふうに彼の横をキープしているけれど、そこにいればいるほど虚しくならないのだろうか。
「ジョーがいかに勘違い野郎であろうと彼が自分がエドモンドと同等と思い込んでいようとそこに明確な違いがあることは事実。
どれだけ目を逸らそうとも、思い込もうとも……周りがそれを許さない」
ジョーの耳にこそこそと取り巻きたちの声が聞こえてくる。
「エドモンド様かっこいいよなぁ。品もあるし、あの服も王室御用達のものだろう?あそこのデザイナー、自分の認めた人の服しか絶対にデザインしないらしいぞ」
そ、そんなの金の力とか親の力があればできるに決まっている。自分だって親がもっと立派であったなら同じレベルの服が仕立てられたはず。
「見た目だけじゃなくて仕事も凄いできるらしいぞ。この前も他国との取引に成功してかなりの利益を上げたらしい」
し、仕事……自分は金を持ってるから仕事をする必要なんてないだけだ。何か職にでもつけばすぐに功績を挙げられるはず。
「……同じ人間なのにああも違うものなんだな」
!あ、ああわかっているならいいんだ!そうだ、お前たちと俺たちは全然違う人間なんだよ。俺たちは人気者で高貴で……
「見ろよ、隣に居ると顔の違いが際立つよな」
「ああ、体型もな」
「仕草もガサツで優雅さの欠片もないよな」
「家に籠もって貴族の教育もろくに受けてないそうだぞ」
「できるところくらい努力すればいいのにな」
隣?はて……彼の隣には自分しかいない。
彼らは自分とエドモンドを比べ、自分をディスっているのか?カッとなり怒声を浴びせようとするが目の前の高貴な、 彼が目に入る。
一つ一つの所作が洗練され優雅だ。
怒鳴る様さえ人を魅了しそうな程に。
先程エリーゼに怒鳴った自分の姿はどうだっただろうか?自分の姿が目に浮かぶ。醜く太った男が唾を巻き散らかしながら、品のない言葉で怒鳴りつける姿を。
「――ヒッ!」
喉の奥で悲鳴が出た。いや、違う。違う!違う!!自分はもっとエドモンドみたいで…………はっ!
ヒソヒソと聞こえてくる取り巻きたちの声、クスクスと嗤い声が耳に入ってくる。頭がグラグラする。
思いっきり黙れ!と怒鳴りつけたい。そうしないとおかしくなりそうだ。
でもそんなことをしたら彼らに嫌われてしまうかもしれない。いや、そんなことくらいで嫌われるはずがない。いや、しかし…………。
焦点が定まらない中、1人の美しい女性と目が合う。
その女性はこちらを見て……
まっすぐにジョーを見て……
その形の良い唇は愉快だといわんばかりに弧を描き
嘲笑っていた。
その光景はとても美しく、妖しく、残酷で――。
「エリー「どうかされましたか?」」
我を忘れエリーゼを怒鳴りつけようとしたがエドモンドに話しかけられ注意がそれる。そして彼の目に絶世の美貌が目に入る。
びくりとする身体。彼は真正面から今日初めてエドモンドを見据えた。眩しすぎて直視できていなかったから。
本当に神も嫉妬するのではないかという美貌。そう……エリーゼと同類の。
自分とは――。
ブンブンと頭を振る。
間近で見ていたエドモンドは本当にこいつの頭は大丈夫なのかと心配になってくる。
ジョーは急に立ち上がると誰にも挨拶せずにどこかに走り出す。
そして、一度も振り返ることなく消えていった。
あらあら、このまま行方不明になってしまうのも面白いかもしれない。本物を知り、自分の身の程を少しは知っただろうか?
静まり返る場でエリーゼがすっと立つ。
「皆様、主人は体調が優れぬようですのでこれでお開きと致しましょう」
エリーゼの言葉に従い、帰り支度を始める取り巻きたち。彼らはエリーゼとエドモンドにぎこちない挨拶をした後その場から去った。
残ったのはエリーゼ(じいや付き)とサイラスとエドモンド。
「エリーゼ様、あんなやつとはさっさと別れるのがベストでは?」
あの男は正気じゃない。物事は全て思い込み、自分の中で都合のように書き換える。はっきり言って気持ちが悪い。
「ふふ、ほとんど家にいないし、近づいてこないから大丈夫よエドモンド。社交もする必要がないし気楽なものよ」
「そうですか」
いや、それでも自分だったら即離婚物件である。
げんなりするエドモンドを正面から見据えるエリーゼ。
「エドモンド、今日はありがとう」
とても朗らかに清々しく笑うエリーゼ。思う結果が得られたのか満足そうで何よりだ。
「いえ、特に何もしてませんし」
本当に何もしていない。ただそこにいただけ。だがなんだろうかこの疲労感は……。エリーゼもサイラスもよく相手するものである。
自分は二度とごめんだ。
「いいのよ。彼にはそれで十分」
貴族社会でのやり方でやり込める?そんなものいらない。
ただその本物との格の違いを見せればそれで勝手に自滅していくから。実にいい表情をしていた。
でもきっと彼の心は完全には折れていないだろう。
ヒビくらいなら入ったかもしれないが。
まだまだ楽しめそうだ。
次の手はもう考えてある。
いや、次の手のためにエドモンドを呼んだともいえる。
「いや、めっちゃ悪い顔してるんですけどぉ」
「目の保養だな、エド」
美人はどんな顔をしても美しい。
「いや、悪魔だろ。魂が吸い取られそうだ」
こんなに美しい悪魔になら取られてもいいかもしれない、サイラスはふと思った。
エドモンドはエリーゼをちらりと見る。
美しいが相変わらず悪魔のような女である。ジョーもなかなかのものだが、所詮勘違い小者野郎。こちらはまじもんの人を地獄に引きずりこまんとする悪魔だ。
傲慢で人を手足のように動かし、自分の思うようにいくと信じて疑わない。なんやかんやいって本人は気づいていないがサイラスも夢中にさせているようだ。エリーゼはジョーに似ていると言えなくもない。
だが2人の決定的な違いは
それが許されるか許されないかというところだ。
人に傲慢に接し、物事を思うように進めることが許されるのがエリーゼという存在だ。
美貌故?
生まれ故?
性格故?
それともそういう運命故なのか?
なんにしても――
フッと1人笑うエドモンド
――エリーゼを敵に回さないように気をつけよう。
改めてそう思うエドモンドだった。
………………………お、あれは?
一体何があったというのか、ジョーの顔が青褪めている。
別に何か起こったわけではなさそうなのに。
首をひねるサイラスにエリーゼは口を開く。
「やっと気づいたみたいね」
「何に?」
「ふふ……お馬鹿さん」
エリーゼの視線はサイラスを通り越しジョーに向けられていた。
ゆっくりと瞬きをするエリーゼ。
身の程を知らないからそんな目に遭うのよ。
エリーゼはゆったりと口を笑みの形にした。
おかしい――。
エリーゼとサイラスよりもエドモンドと仲良くなってやった。全てを持った男の友人、いやもう親友だな。いつも俺に付き従う友人たち、羨ましいだろう?俺たちは友人関係とはいえ、お前たちには一生手に入らないものだろう。友人でも格が違うのだ。
それなのに………
それなのになんで誰も俺を見ていないんだ?
なぜ皆エドモンドにそんな憧憬の視線を向けるのか。
その視線は俺のもののはず。共に俺にも向けられなければならないもののはず。
「取り巻きたちの視線がエドモンドに向かっていることにやっと気づいたみたいね」
ああ、それはそうだろう。あれだけの美男だし、そもそもこんな何の取り柄もない男爵家の集まりに来るはずもないレアキャラなのだから当たり前である。
「当たり前じゃないのがジョーなのよ」
いや、まさか。いくらなんでも……。
「自分はエドモンドと同等と思ってるんだもの。そりゃあ自分が注目されてなければショックよ」
えー……。
いやいや、それはないだろ。
「やっぱり本当に全てを持った男は見た目も極上だけれどオーラがあるわ。格が違うもの。金目的で向けられる下卑たゴマすりの目と心からの敬意、憧れを宿した目というのはやっぱり輝きが違うわよね」
取り巻きたちはエドモンドをぽーっと見つめている。決してラブではないが。男としても見惚れる魅力が彼にはある。
美麗な顔、優雅な仕草、長い手足、桁外れの金持ち、優秀な頭脳、仕事の才覚……何一つジョーにはないもの。あんなふうに彼の横をキープしているけれど、そこにいればいるほど虚しくならないのだろうか。
「ジョーがいかに勘違い野郎であろうと彼が自分がエドモンドと同等と思い込んでいようとそこに明確な違いがあることは事実。
どれだけ目を逸らそうとも、思い込もうとも……周りがそれを許さない」
ジョーの耳にこそこそと取り巻きたちの声が聞こえてくる。
「エドモンド様かっこいいよなぁ。品もあるし、あの服も王室御用達のものだろう?あそこのデザイナー、自分の認めた人の服しか絶対にデザインしないらしいぞ」
そ、そんなの金の力とか親の力があればできるに決まっている。自分だって親がもっと立派であったなら同じレベルの服が仕立てられたはず。
「見た目だけじゃなくて仕事も凄いできるらしいぞ。この前も他国との取引に成功してかなりの利益を上げたらしい」
し、仕事……自分は金を持ってるから仕事をする必要なんてないだけだ。何か職にでもつけばすぐに功績を挙げられるはず。
「……同じ人間なのにああも違うものなんだな」
!あ、ああわかっているならいいんだ!そうだ、お前たちと俺たちは全然違う人間なんだよ。俺たちは人気者で高貴で……
「見ろよ、隣に居ると顔の違いが際立つよな」
「ああ、体型もな」
「仕草もガサツで優雅さの欠片もないよな」
「家に籠もって貴族の教育もろくに受けてないそうだぞ」
「できるところくらい努力すればいいのにな」
隣?はて……彼の隣には自分しかいない。
彼らは自分とエドモンドを比べ、自分をディスっているのか?カッとなり怒声を浴びせようとするが目の前の高貴な、 彼が目に入る。
一つ一つの所作が洗練され優雅だ。
怒鳴る様さえ人を魅了しそうな程に。
先程エリーゼに怒鳴った自分の姿はどうだっただろうか?自分の姿が目に浮かぶ。醜く太った男が唾を巻き散らかしながら、品のない言葉で怒鳴りつける姿を。
「――ヒッ!」
喉の奥で悲鳴が出た。いや、違う。違う!違う!!自分はもっとエドモンドみたいで…………はっ!
ヒソヒソと聞こえてくる取り巻きたちの声、クスクスと嗤い声が耳に入ってくる。頭がグラグラする。
思いっきり黙れ!と怒鳴りつけたい。そうしないとおかしくなりそうだ。
でもそんなことをしたら彼らに嫌われてしまうかもしれない。いや、そんなことくらいで嫌われるはずがない。いや、しかし…………。
焦点が定まらない中、1人の美しい女性と目が合う。
その女性はこちらを見て……
まっすぐにジョーを見て……
その形の良い唇は愉快だといわんばかりに弧を描き
嘲笑っていた。
その光景はとても美しく、妖しく、残酷で――。
「エリー「どうかされましたか?」」
我を忘れエリーゼを怒鳴りつけようとしたがエドモンドに話しかけられ注意がそれる。そして彼の目に絶世の美貌が目に入る。
びくりとする身体。彼は真正面から今日初めてエドモンドを見据えた。眩しすぎて直視できていなかったから。
本当に神も嫉妬するのではないかという美貌。そう……エリーゼと同類の。
自分とは――。
ブンブンと頭を振る。
間近で見ていたエドモンドは本当にこいつの頭は大丈夫なのかと心配になってくる。
ジョーは急に立ち上がると誰にも挨拶せずにどこかに走り出す。
そして、一度も振り返ることなく消えていった。
あらあら、このまま行方不明になってしまうのも面白いかもしれない。本物を知り、自分の身の程を少しは知っただろうか?
静まり返る場でエリーゼがすっと立つ。
「皆様、主人は体調が優れぬようですのでこれでお開きと致しましょう」
エリーゼの言葉に従い、帰り支度を始める取り巻きたち。彼らはエリーゼとエドモンドにぎこちない挨拶をした後その場から去った。
残ったのはエリーゼ(じいや付き)とサイラスとエドモンド。
「エリーゼ様、あんなやつとはさっさと別れるのがベストでは?」
あの男は正気じゃない。物事は全て思い込み、自分の中で都合のように書き換える。はっきり言って気持ちが悪い。
「ふふ、ほとんど家にいないし、近づいてこないから大丈夫よエドモンド。社交もする必要がないし気楽なものよ」
「そうですか」
いや、それでも自分だったら即離婚物件である。
げんなりするエドモンドを正面から見据えるエリーゼ。
「エドモンド、今日はありがとう」
とても朗らかに清々しく笑うエリーゼ。思う結果が得られたのか満足そうで何よりだ。
「いえ、特に何もしてませんし」
本当に何もしていない。ただそこにいただけ。だがなんだろうかこの疲労感は……。エリーゼもサイラスもよく相手するものである。
自分は二度とごめんだ。
「いいのよ。彼にはそれで十分」
貴族社会でのやり方でやり込める?そんなものいらない。
ただその本物との格の違いを見せればそれで勝手に自滅していくから。実にいい表情をしていた。
でもきっと彼の心は完全には折れていないだろう。
ヒビくらいなら入ったかもしれないが。
まだまだ楽しめそうだ。
次の手はもう考えてある。
いや、次の手のためにエドモンドを呼んだともいえる。
「いや、めっちゃ悪い顔してるんですけどぉ」
「目の保養だな、エド」
美人はどんな顔をしても美しい。
「いや、悪魔だろ。魂が吸い取られそうだ」
こんなに美しい悪魔になら取られてもいいかもしれない、サイラスはふと思った。
エドモンドはエリーゼをちらりと見る。
美しいが相変わらず悪魔のような女である。ジョーもなかなかのものだが、所詮勘違い小者野郎。こちらはまじもんの人を地獄に引きずりこまんとする悪魔だ。
傲慢で人を手足のように動かし、自分の思うようにいくと信じて疑わない。なんやかんやいって本人は気づいていないがサイラスも夢中にさせているようだ。エリーゼはジョーに似ていると言えなくもない。
だが2人の決定的な違いは
それが許されるか許されないかというところだ。
人に傲慢に接し、物事を思うように進めることが許されるのがエリーゼという存在だ。
美貌故?
生まれ故?
性格故?
それともそういう運命故なのか?
なんにしても――
フッと1人笑うエドモンド
――エリーゼを敵に回さないように気をつけよう。
改めてそう思うエドモンドだった。
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