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VSラセツ終幕・No.54【蒼雪】・ノアの力

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「ローズ様の宝は渡さんぞ!」


「クロネ、シロネ下がっててね。危ないから」


 二人はノアの言葉に頷き、近くの岩の後ろに隠れる。
 それを、見届けノアは抑制具を二つ外しナイフを周りに浮かべる。


「6本の氷の槍…間違いなくNo.54【蒼雪】」


「ローズ様の宝を荒らす不届き者めここで、我が消し去ってくれよう!」


 ラセツは、6本の槍を掴みノアに向かって突進する。
 ノアは、ラセツの上を飛び越え頭にナイフを投げるが氷の壁に阻まれる。


「ラセツの力か…」

 ノアは弾かれ地面に突き刺さったナイフを引き寄せラセツを見上げる。


「貴様如きの攻撃など我が、氷の壁の前では無力!」


 ラセツは三本の槍をノアに向かって投げると同時に地面を蹴りノアに向かって突撃する。


「僕の事も忘れたんだね…なら、身体で思い出して貰おうかな」

 手で身体を押し上げ槍の間を通り抜けラセツが突き刺して来た槍をサイコキネシスの膜を貼り防ぎ、槍と膜がぶつかると周りに火花が舞い落ちる。


「あれがノアさんの本気なのです?」


「な訳無かろうて。抑制具とやらも二つしか外して居らぬし、それにあやつまだ、何か隠しておるな」


「何かって何なのです?」


「それは、分からん。直接本人に聞くとしようではないか」


 クロネ達がノアの戦いを見ながらそんな話をしているとクロネ達の近くにラセツの腕毎槍が突き刺さる。


「くっ…なんて奴だ…我の腕を切り落とすとは」


「……」


 ノアは指の上でナイフを回しながら何かを考えるそぶりを見せる。


「隙あり!」


 ラセツの放った槍はノアの目の前で止まりノアがラセツを睨みつける。


「君、誰?ラセツじゃ無いね」


 ノアの言葉に少し驚いた表情をした後ラセツが後ろに大きく後退する。


「何を戯言を」


「ラセツにしては弱すぎるよ君…まあ、答えなくてもいいけどね」


 ノアはナイフを宙に投げ最後の抑制具を外す。


 その光景を見たラセツの額から汗が流れ出し、槍を持っている手がカタカタと震える。


「き、貴様何者だ!」


「君が知る必要は無いよ」


 ノアの言葉と同時にナイフが徐々に数を増やしていきノアの背後に数え切れないほどのナイフの剣先が、ラセツを捉える。


「ラセツの名を語る愚かな者よ。君は…有罪だ」


 ノアがパチンと指を鳴らすと滞空していたナイフが一斉にラセツへと飛んでいく。
 ラセツも負けじと槍を巧みに操りナイフを叩き落としていくが、落とされる度にナイフが増えていきラセツの身体を貫く。


「グググッ、申し訳ございません…ローズ様…」


 ラセツは力無く倒れた後、冷気となり消えて行った。


「二人共出て来ていいよ」


 ノアの言葉に二人が、岩陰から姿を現しノアに近寄る。


「ノアよ。お主、まだ何か力を隠しているな?」


 クロネの言葉に一瞬動きを止めるが直ぐに、動き出し槍を地面から抜く。


「…やっぱり、五体いなくなってる…」


「答えぬか」


 ノアはクスリと笑った後冷たい目でクロネを見つめ。


「知らない方が身の為だよ」


 と、呟き入口へと向かう。


「チッ」


 クロネも舌打ちをした後、ノアの後に続く。


「むむむ、険悪な雰囲気なのですね」


 シロネも困った顔をしながら二人の後を追いかける。


「それで、君達は誰かな?」


 ノアはシロネを背中に庇いながら目の前にいる男二人組を睨む。


「あ?お前こそ誰だよ」


「雷斗、この方はSS級咎人のノア・アリアハートさんですよ。帝王様が言ってたではありませんか。まあ、思ったよりも弱そうですけど」


 眼鏡を掛けた男が馬鹿にしたように鼻を鳴らしノアを見る。


「帝王って事は…帝国の転生者か」


「だったらどうすんだよ」


「決まってるよね…殺す」


 ノアの姿が消えた瞬間、雷斗が岩を突き破り吹き飛び地面に倒れる。


「全く、野蛮な女性ですね」


 眼鏡をかけた男の小太刀をサイコキネシスで受け止めお腹を蹴り吹き飛ばす。


「クロネ…力貸してくれる?」


「……しょうがないの」


 クロネはため息を吐きながら眼鏡の懐に移動し眼鏡の首を持ち、地面に叩きつける。


「ぐっ、なんだこの子供」


「子供では無いわ。小童め」


「緑ぃ!こっちの女は俺がやる!お前はそっちのガキをやれ!」


「やれやれ、私の相手が子供とはやりにくいですね」


 緑は三日月型に口を歪め、クロネに斬りかかる。


「だから、子供ではないと言ってあるだろ」


 クロネは振られた小太刀を蹴りで弾き返し緑のお腹に拳を叩き込む。


「ほれ、立たんか小童」


 クロネはニヤッと笑い地面に突っ伏している緑を蹴り飛ばす。


「さあ、俺らも遊ぼうぜ!」


「遊ぶ…ねぇ」


 雷斗の足元から雷が迸った瞬間、雷斗の姿が消え一瞬にしてノアの懐に姿を現わす。


「ほら、詰みだ」


 ノアは、フッと笑い上から大剣を踏みつける。


「君さ、弱いね」


 ノアはその場でくるりと回り雷斗を蹴り飛ばす。


「このクソ女がぁ!」


 雷斗が、額に青筋を浮かべながら血走った目でノアを睨みつけまた、姿を消す。


「はぁ、君には武器を使うまでも無いな」


 ノアはナイフを直し、棒立ちになる。


「舐めやがってぇぇぇ!!」


 ノアに向かって振り下ろされた大剣を目を閉じながら受け止め目を開ける。


「君じゃ僕には勝てないよ」


「なんだ、その目は」


 ノアの瞳が赤から青と緑に変わり瞳の中に六芒星の模様が浮かび上がって行く。


「あ、しまった。出ちゃったか…」


 ノアは目を押さえながら、ニヤッと笑う。
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