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バトルロワイヤル始動

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「出場は5人1組のチームでどうやら、10チーム程集まるみたいですわ。それと、武器、道具何でもありで、一つだけ禁止されてるのが、回復系の能力、道具、魔法ですわ。降参するか、死ぬか、ステージの周りに貼られてる特殊な結界に触れると脱落ですわ」


「殺しもありなんだね」


「それで?ステージってどんな所なんだ?」


「まだ、分かりませんわ。いつも、当日に発表されるらしいですわ」


「なるほど。じゃあ、先ずはメンバー決めやな」


 ノアは、少し考えた後に樹にチラッと視線を送る。
 視線に気づいた樹は何かを悟ったようで、やれやれと言った感じで手を横に振る。


「僕、樹、凛、日菜それと…クロネで行こっか」


 その言葉を聞いたクロネが、驚愕の表情を浮かべノアに詰め寄る。


「は?何故にわしなのじゃ?」


「半蔵と刹那は帰ってきて無いし、魔族達じゃ頼りない、シロネは戦闘向きじゃないだから、クロネしか居ないんだよ」


「じゃが…わしは人間では無いのじゃよ?」


「あ、そこは問題なしですわ。参加資格は特に無く強いて言うなら腕に自信のある人らしいので」


 凛の言葉にめんどくさそうな顔をしながら渋々、了承する。


「さて、それじゃメンバーも決まったし受付しに行かないとね」


「それなら、もうして来ましたわ」


「そうなんだ、ありがとう。それじゃ、僕からも一つ」


 ノアは、先程手に入れた《蒼雪》を後ろに浮かべる。


「魔道具ゲットしたよ。でも、中の奴が5匹減ってるのよね」


「あ、本当だな。どこ行った?」


「さあ?分かんないけど、取り敢えず死んでは無いと思う」


「ノアよ、先程から言っている五匹とはなんのことじゃ?」


 クロネが、シロネに掛かっている布団をかけ直しながら疑問を口にする。


「この《蒼雪》の能力は【召喚】なんだよ。事前に、契約を交わした計六匹の魔物を槍の玉の部分に入れることが出来るんだけど、今は一体しか入って無いの」


「逃げたって事か?」


「んー、逃げたって言うよりはローズが死んで契約が破棄されたから、外に出たって感じかな。でも、この残り一体が誰なのかは呼んでみないと分からないなぁ」


「呼んで見れば良いじゃろう」


「と、思ってさっきから呼んでるんだけど出て来てくれないの。まあ、別に良いけどね。さて、明日朝早いしもう寝よう」


 ノアは、シロネを優しく抱き上げ自室へと向かった。その後に続く様にクロネ達も自室へと足を進めた。


 翌日


「さあ!今年もやって来たぜ!毎年恒例、デスマッチバトルロワイヤル!
 なんと、今年の賞品はあの、災厄の魔女が作ったとされる魔道具!売るも良し!使うも良しの一品だ!」


 司会者の男がそう言うと、周りから歓声が上がり周りの熱を上げていく。


「いやーまさか、登録が先着順だとは思わなかったよ」


「ギリギリだったもんな。しかし!この仮面邪魔だな」


「樹、外さないで下さいね」


 樹が、付けている仮面を外そうとするも日菜に止められブーブーっと呟く。


「それじゃ、今年のステージを発表するぜ?今年のステージは……この街だ!」


 周りから、ざわざわと声が聞こえる中、ノア達は仮面の奥でニヤリと笑う。


「街か……くくく、こりゃ楽しみだな」


「クロネ、決して街を全壊とかしないでね」


「わかっておるわい」


「でも、街って大丈夫やろか?民家とか潰れたらどうすんねんやろ」



 凛が呟いた言葉に司会者が反応し凛を指差す。


「そこのお嬢さん!心配はご無用!破壊された民家などばこの国の王が、今より立派に建て替えるからバンバン壊しちゃっていいぜ!
 さあ、時間もない事だしバトルロワイヤルに参加するチームは俺の周りに集まってくれ!」



 ノア達は人混みを掻き分けて壇上の上へと上がる。
 壇上の下とは違い、ビシビシと殺気が刺さる。


「いいねぇ、この殺気滾って来るぜ…」


「やり過ぎないでよ」


「それじゃ、軽く紹介するぜ!」


 ノア達の反対側からチームのリーダーだけが紹介されていく。


「続いては、こいつ!田舎から出てきて、一攫千金を狙う…ヨルぅぅぅ!!」


 星を散りばめた様なローブを顔まですっぽり覆った男と目があった瞬間、ノア達の背筋を悪寒が撫でる。


「……ねぇ、樹」


「あぁ、あいつはやべぇ」


 ノアと樹がローブの男を睨むと微かに口を歪め男は前に向き直す。


「それで、最後はー!っと、おい名前どうすんだ?」


「あ、そっか僕達名前記入してないや」


「んー、オレ達はノーネームでいいぜ」


「変わった奴らだな。最後は、ノーネーム!!」


 紹介も終わり、司会者の男を囲むように参加者達が円を作るように手を繋ぐ。


「いいか?お前ら一人一人にこいつが付く」


 司会者の腰のポーチから蚊位の大きさの虫が参加者達の周りを飛び回る。


「こいつは?」


「これは、【投影虫】お前達の行動は常に観客へと投影されているから、不正を行った瞬間その場で退場して貰う」


 司会者が、指を鳴らすと参加者達が街の別々の場所へと移動する。


「さて、ここからだけど樹達は《華紋》は使わないでね。なるべく手の内は晒したくないから。
 クロネは、昨日言った通り街を全壊させないでね」


「へいへい」


「わかっておるのじゃ」


「どうするん?固まって動くん?」


「いや、個々で別れて動こっか。五体一とかなるかも知れないけど大丈夫だよね?」


「大丈夫ですわ」


「見つけたぞ!」


「っと、お客さんだ」


 ノア達の前に筋肉ムキムキの男達がニヤニヤしながら降り立つ。


「俺がやるか?」


「いいよ、僕がやる」


「うい」


 ノアを残し、樹達が姿を消した瞬間に雷がノアを襲う。


「俺様達を相手に一人でやるとは愚かな奴だ」


「そうやって油断するのは弱い証拠だよ」


 ノアは、砂煙を手で払いながらナイフを逆手に持ち構える。


「さあ、裁きの時間だよ」
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