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南の街アルファス
しおりを挟む凛達は、ノア達より少し遅く魔王城を後にし南の街へと向かう馬車に揺られながらたわいもない会話をしていた。
「なぜワシも行かないといけないのじゃ…華の一族の顔なんぞ知らぬぞ」
「まあ、ええやんええやん。のんびり楽しもや」
「全く、凛はのんびりしすぎなんですよ。わたくし達は追われる身なんですよ?」
日菜の言葉に凛がへへと笑い場所の窓から顔を出した瞬間馬車が急停車し窓枠に顔をぶつけ悶絶する。
「いたぁぁぁ!!なんやなんや!」
「どうやら、盗賊のようですわね」
「ふむ、ワシがいこう」
クロネが窓から屋根へと上り馬車の前へと飛び降りると目の前にナイフを構えた男達が数人いた。
「あ?なんだこのガキ」
「なんでもいい。おい、ガキ怪我したく無かったら金目の物置いていきな」
後ろから運転手のおじさんが、心配そうに声をかけるがクロネは大丈夫じゃと呟き男達を睨みつける。
「お主らこんなことしてる暇あったらちゃんと働いたらどうじゃ?」
クロネの言葉に男達が、大笑いし一人の男がクロネの頭を掴む。
「ガキが生意気言ってんじゃねーぞ?あ?」
「汚い手でワシに触るでない…」
クロネの瞳がダイヤ型に細くなった瞬間クロネの頭の上に置かれていた手が宙を舞う。
「クロネちゃーん、あんまりやりすぎたらあかんよー」
「フッ、約束はできぬな」
盗賊の一人が足を少しだした瞬間クロネの姿が消えクロネを囲んでいた盗賊達がバラバラになる。
「やれやれ、汚れてしまったの…」
クロネは自分の爪についた血を払い落とし近場の盗賊の服で血を拭い馬車へと乗り込む。
「やりすぎやな。おっちゃんごめんなー料金は弾むから許してや」
凛が顔を真っ青にしていたおじさんの手にテリスがパンパンに入った袋を置き手を合わせ頭を下げる。
盗賊の襲撃から数時間後ようやく馬車が南の街アルファスへと辿り着き凛達は固まった体をほぐし街の中へと足を進める。
「とりあえずわかれよか」
「それがいいと思いますわ」
「待て待て、ワシは華の一族の顔知らんと言うたじゃろ」
日菜は少し考えた後、クロネの手を握りにこっと笑う。
「なら、クロネはわたくしといきましょう。凛は一人で大丈夫ですよね?」
「ん、大丈夫大丈夫。んじゃ、ある程度でまたここに集合やな」
凛は頭の後ろで手を組み鼻歌を歌いながら街の中へと消えていった。
「わたくし達もいきましょう」
「その前に手を離せ」
日菜は、いやですわ。と、ウィンクをしクロネの手を引っ張り凛が向かった方向と逆の方向へと足を進める。
「さて、先ずは何処から探そうかな」
凛は、屋台で買った肉串を食べながら街をぶらぶらと歩く。
しばらく歩くと尾けられている気配を感じ串をゴミ箱へ捨て路地裏へと向かう。
「あれ?いない?」
「これはこれは、可愛いお嬢さんやな。うちになんかようか?」
凛の後をつけていた女の子の耳元で囁くと女の子が、ステップで凛との距離をとる。
「あれ?あんたどっかで…」
「まずは貴方からよ!リーナとマヤの仇取らせて貰う!」
凛は、首を傾げながらリーナとマヤと言う名前を思い浮かべるが、何も思い付かず頭をかく。
「ごめんな、そんな人ら知らんわ」
凛の言葉に女の子が怒りの表情を浮かべ、錫杖に白い炎を灯し殴りかかってくる。
「忘れたとは言わせない!貴方達に殺されたリーナとマヤの事を!」
「だから、知らんゆうてるやろ!」
凛は錫杖を蹴りで弾き返し勢いをつけその場でくるりと周り回し蹴りを女の子へと叩き込む。
「ぐっ!貴方を殺し、ノア・アリアハートも殺す!」
女の子の言葉にピクッと反応し冷たい眼差しを女の子に向ける。
「なんやて?ノアを殺す?それ、うちの前で言うんやな」
凛は首をポキポキと鳴らしその場で数回ジャンプした後、女の子を空へと蹴り上げる。
「がっ!見え…ない…なんて」
「何処みてるん?」
女の子の上からかかと落としを叩き込み女の子を地面に叩き落とした後、女の子を踏みつけるように着地し手を掴み持ち上げる。
「なんや、もう意識ないんかいな…」
凛は腰のベルトから水色の液体が入った小瓶を取り女の子にかけ、アルシュールを装備する。
「いつまで寝てるん?まだ、殺さんで?」
凛が指をパチンと鳴らすと静電気が雷となり女の子へと直撃する。
「あぁぁぁぁ!!」
女の子は悲痛な叫びを上げ、目から涙を流しまた気絶する。
「こんな実力でノアを殺すとか笑うわ」
地面に倒れている女の子のお腹を蹴り街の中へと蹴り飛ばす。
路地裏からいきなり飛んできた女の子に周りの人達がザワザワと騒ぎ出す。
「んーちょっとやりすぎたかも」
凛は路地裏にしゃがみ込み入り口へと目を向ける。
すると目の前に白い炎が迫っており予想外の攻撃に対処が遅れ凛は炎に飲み込まれる。
「私は負けない【オーバーハーツ】」
女の子の身体を白い炎が包み込み女の子を心配して周りに集まっていた人達が一瞬で炭へと変わる。
「ゲホゲホ、なんやそれ」
女の子の背中から白い炎で出来た翼が生え髪が白い炎となり瞳に鳥の羽根の模様が浮かび上がる。
凛はパンパンと服に着いたホコリを払いニヤッと笑う。
「まあ、なんでもいいや。さあ、楽しもか」
アルシュールの雷と錫杖の炎がぶつかり周りの家が燃え上がる。
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