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第2章

転生の理由

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私はコロンバイン。

あの時私はあの少年に嘘を見破られ、王様に首を跳ねられた。
あの少年を生け贄にして、ドラゴン達を目覚めさせようとしていたのにそれは叶わなかった。意識が無くなり目覚めた時には、私はこの時代に居た。
死んだと思っていた私は、最初何が起こったのかわからなかった。
茫然としている私に1匹の黒い猫が近付いてきた。

「ようこそ、この時代に。」

その猫は私にそう言った。

「我の名はマーリン。偉大な魔術師だ。」

マーリン…。聞き覚えのある名前だ。

「忘れたのか?コロンバイン。おまえが私を生け贄にしようしたことを。」

あっ、あの少年か。こいつのせいで私は王様に…。

「思い出したようだな。」

「おまえのせいで私は!!」

猫は尻尾をピンと立てて、私の周りをゆっくりと回り始める。

「コロンバイン。私と手を組め。あの時代ではあんなことになったが、私がおまえをわざわざここに転生させてやったんだ。」

「ふざけるな。」

「2人でこの世界を手に入れようじゃないか。」

「何を言っている?おまえはあの後、王様に取り入って良い身分になったんじゃないのか?」

「ははっ。良い身分とは?王に酷使され続けることが良い身分だと?」

どういうことか。こいつにあの後何があったんだ?

「おまえの首が跳ねられた後、岩の中のドラゴンが目を覚ました。3日3晩戦った2匹のドラゴンは、また深い眠りに着いたんだ。そして、王はあの塔を建てたんだよ。くだらない顕示欲のためにな。我は魔法の才を認められ、王に遣えることになった。強欲で、人を人とも思わない王は我の魔力が高いことを知るとそれを利用し、配下を集め、戦に明け暮れた。アーサー王に返り討ちに合うまではな。あの時おまえが死ななければ、おまえも我のように酷使され、ボロ衣のように捨てられただろうよ。」

どちらにせよ、同じ運命だったのか。

「なぜ、猫の姿になっているんだ?」

「転生魔法の副作用だ。1日数時間しか人間の姿に戻れない。おまえにはその心配はない。さて、我と手を組むか?それとも…この時代で孤独に死んでいくか?」

「クソッ、わかった。手を組もう。」

こうして、私はこの時代のマーリンと手を組み黒魔術を覚えていくことになった。
だが、マーリンのことは信用出来ない。
いつかチャンスがあったら、こいつを…。



「はっ!!」

目を開けるとそこには女神がいた。

「あー、やっと目を開けたのね。」

両肩には赤と白のドラゴンが止まっている。

「コロンバイン。体の傷は治したよ。話を聞こうか?」

隣には嫌な笑顔の少年が立っている。
こいつ…。
起き上がると、そこには湖で会ったもう1人の少年と、燃えるような赤い髪をした美女、黒髪の男が居た。
ここはどこだ?
私はどうなる…。
ふと、振り返るとそこには
私が猫にしたアルフォンソとコロンバインが居た。

「よう。」

「おまえ!よくも猫にしてくれたな!!」

毛を逆立てて近寄って来る。

「まぁまぁ、落ち着いて。よしよし。」

女神が2匹を撫でる。

「「ゴロゴロ…」」

途端に喉を鳴らして女神にすり寄る2匹。
手懐けられてる。

「さて、コロンバイン。話してくれるよね。」
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