エッチするまで出られない屋敷

世界のボボブラ汁(エロル)

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物件撮影

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 秋の日はつるべ落とし。

 この洋館の撮影は初めてだ。迷うまではしなかったけど、たどり着くのに少し時間がかかった。

 十月の始めとは言え、16時には既にオレンジ色の頼りない光になっていた。

 私はヘルメットを取ると、慌ててバイクから降りた。このままじゃあっという間に真っ暗だ。

 いそいそと、外側に飾りつけを始める。万国旗もハロウィン仕様にしないとな。洋風のバルコニーを見上げた。

 玄関横のキーボックスに暗唱番号を入れ、鍵を取る。

 他社の現地販売会まで暴風雨が来ないことを祈りつつ……。場合によっては、せっかく飾り付けても一度撤去しなきゃならない。

 めんどくさい。



 カチャとドアを開けた。その途端、背筋にゾクゾクと悪寒が走った。

「え?」

 私は真っ暗なエントランスホールを見つめた。

 なんだろ。お姉さんの孤独死の話を聞いたからだろうか。それともやっぱりこの廃墟っぽい見た目のせい? 変な雰囲気がある。

 電気は通っているはずだけど、ブレーカーの位置が分からない。造りが今の建売とはぜんぜん違っていて、おろおろしてしまった。

 とりあえず玄関の扉を開けたまま、その西日を頼りに1階のシャッターを開けに行った。っていうか、玄関もホールも広いな!

 そしてシャッターというより、両開きの鎧戸だ。これも敢えて、社長のお父さんが輸入したものらしい。

 開けると、広々としたリビングに西日が入り込む。

 三十二帖近くあるリビングって……。グランドピアノはそのまま置いてあるし、資産家ってすごいな。どんな小説書いてたんだろ。

 なんとなく、この家で書いていたなら怪奇小説なんじゃなかろうか、と想像した。

 私は電池式のカボチャのランプのスイッチを入れ、あちこちに置いてみる。うん、いいじゃない。

 それに中は雰囲気そのままでリフォームしてあるし、ぜんぜん怖くない。

 今日レインズ※に登録したばかりと言っていた。だから今のところ、広告の申請をしてくる他社はいないけど、もし仲介を申し出てきても、この写真なら差別化が図れそう。

 田沢さんから預かった袋から、空気を入れて膨らませる魔女の人形や、大きな鎌、ばかでかいタランチュラのような蜘蛛、モンスターの仮面を取り出す。

 それに、本物のお菓子が入った籠。

 これ……百均? ずいぶん本格的。でも今どきの百均のハロウィン飾りもすごいしな。なんて感心しながら、ハロウィンぽい装飾品を手早く置いていく。

 それから一眼レフのデジタルカメラを取り出した。

 超広角レンズ付きカメラ。狭いトイレも広く撮影できる。ここのトイレは狭くはなさそうだけどね。

 販売図面マイソクにトイレ五箇所と書いてあるのは、気のせいか?

 私はまず玄関から応接室まで撮り始めた。とにかく明るいうちじゃないと──。

 それにしても、応接室の石の暖炉はそれだけで雰囲気満載だ。中は薪ストーブ風のガスストーブが入れてあった。

 もうこれ、飾りなんて要らないんじゃないの? と思ってしまう。

 それからホール正面の大きな階段を撮り、そのまま上っていく。二階にはシャッターが無い。西日が物悲し気に踊り場を照らしている。でも、これも素敵。

 私は夢中になってシャッターを切った。


 ──ガタッ


 ビクッとなった。物音が家の中から聞こえた気がしたからだ。

 中古物件用に、一応お酒で炒った塩はいつも持っている。迷信深い社長の言う通り持ち歩いてはいたけれど、私自身霊感などない。

 だからこんな撮影のバイトなんてできるわけだけど。

 いや、でも今まで新築の仲介物件の方が多かったしさ。勘弁してよ。

 今の音は、どこから? 私はスマホを握りしめ、いつでも一一〇番できるようにスタンバイしつつ、そっと二階の部屋を開けた。

 まさかどこかの窓を割って、空き巣や浮浪者が入り込んでいるんじゃないだろうか。

 夫婦用の寝室だろうか。それとも二階のリビング? 音がしたと思えた部屋は、とても広い部屋だった。でも今風ではないので、ウォークインクローゼットがあるわけではなく、大きな年代物の飾りダンスがある。

 リビングではなく主寝室か。ベッドを見てそう判断する。ダブルどころじゃない。キングサイズ──もっと? 規格外である。これが輸入家具か、高そうだな。

 ──ガタッ

 私は全身が総毛だった。そうだ、音が聞こえたんだった。

 そしてその音は、すぐ真後ろから聞こえた。

 卒倒しそうになりながら、そっと振り返る。

 もし空き巣だったら、鉢合わせなんて……殺されるかも。

 震えあがりながら見ると、大きなタンスの陰に、ヨーロッパ風の鎧兜の飾りが置いてあった。

「なんだ……」

 一瞬、人かと思った。こんな年代物の飾りを置いておくなんて、どこかの博物館かよ。

 でも高そうな装飾品だし、なによりハロウィンにぴったりの、廃城の雰囲気が出ている。

 ちょうど西日もかかっているし、アンティークの飾りダンスもちょうど一緒に入って素敵。

 私は一番奥の壁に背を付け、腰を落としてカメラを構えた。

 その時、鎧が動いた。

 手に持っていた剣がググッと上がる。私はレンズ越しにそれを見て、あれ? 何これ、夢なの? と思った。

 落ち着いていたのは、あまりにも非現実的だったからだ。

 でも夢じゃない。

 鎧兜はガチャガチャ音をたてながらこちらに突進してきた。

 私はやっと我に返る。

「ぎゃぁあああああああああ」

 絶叫していた。

 いや、誰だって絶叫するよね!?

 自分の目がクルッとひっくり返るのを感じ、あ、死んだかな、と思った瞬間、フッと気を失っていた。
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