【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~

世界のボボブラ汁(エロル)

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どうせ結婚するのだから

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 再び涙が零れる。どうしようもなく怖かった。  

 身に覚えのない婚約や、純潔を失ったことに対してではない。

 もっと重大なことを忘れているような、切迫した恐怖だった。

 焦燥感……それが何に対してなのか分からず、気持ち悪い。  

 殿下は濡れたハンカチを取り換え、清潔なものでもう一度目元を拭ってくれる。

 予備をポケットに入れているということは、几帳面な方なのかしら……。  

 昨夜の閨で、彼が欲望に苛まれながらも「順番を守ろう」と訴えてきたことを思い出す。  

「俺はずっと君に求婚していたが、何度も断られてきた。しかし昨夜の君は積極的で──こう言ってはなんだが、部屋に入るなり、俺に襲い掛かってきたのだ」  

 襲いかかった!?

 殿下は仰天する私を見て、慌てたように両腕を広げた。  

「大丈夫だ、俺は嬉しかった。さあ、この腕に飛び込んでおいで」  
「……殿下……恐れ多くて、それはできません」  
「む……確かに、君にとって俺は今、ただの知らない男か」  

 美しい唇から、深いため息が落ちる。  

「記憶が無ければ王太子を恐れ多いと思うのは当然のこと……。ただ、以前は殿下ではなくアルフォンス、あるいはアルと呼んでくれていた」  

 寂しそうな目をされて心苦しいけど──。  

「殿下を呼び捨てにするなんて信じられません。ましてやそんな関係を迫るなんて、淑女にあるまじき行為……」  

 悄然と項垂れる私の耳に、笑いを含んだ声が聞こえた。  

「昨夜は淑女ではなかったが? 何度も色っぽい声で俺を欲しがった」  

 うう……それは覚えている。

 だって今も、彼の声を聞くだけで下腹部がきゅっと引き締まり、あの快楽を突きつけてくるのだから。

 覚えていないのは閨の前の全て──。  

 上目遣いに彼の様子を伺うと、目尻を下げて口元を綻ばせた殿下と視線が合った。  

 うぅうう、殿下って偉そうだけど、見た目が完璧すぎる。それだけじゃない、妙に艶っぽい。  

「わたくしは、なんてことをしてしまったのでしょう……」  

 婚約に至った経緯を置いておいても、まだ正式に結婚もしていないのに……。  

「どうということはない」  

 殿下はヒョイと肩を竦めてみせた。  

「どうせ結婚するのだからな。早いか遅いかの違いではないか」  
「殿下……ですが──」  
「ならぬ。俺と君の体の関係は、無かったことにはできない」  

 傲慢な琥珀色の瞳が私の下腹部に向けられ、次の瞬間、彼の唇の端が吊り上がった。  

「俺の子種が根付くかもしれん」  

 やはりこの方は王族だ。そう思わせる傲慢な一面を見た気がした。  

 こんな状態で王太子の子を──この国の世継ぎを妊娠していたらと思うと……。  

「ただ……」  

 殿下の眉間に皺が寄る。  

「いつもちょっと冷たいんじゃないかと思うほど理知的だった君が、自制を失い、あれほど淫らに乱れるのは少し妙だ。あんな君を見れば、さすがの俺も初夜まで待つことなど──おっと……」  

 顔が熱くなり、俯いてしまった私に気づき、殿下は咳払いした。  

「それ以上、おっしゃらないで」  

 昨夜のことを言われるのは恥ずかしい。  

「参ったな」  

 殿下は立ち上がり、窓辺へと歩いた。窓枠に手をつき、しばらく空を眺める。  

 やがて背筋を伸ばし、またソファに戻ってきた。  

「…………?」  

 一連の行動に、私は首をかしげる。  

「ふぅ……。君の近くにいると……股間……その……落ち着かせていたんだ。いや、気にしないでいい」  

 殿下は苦笑し、腕を組んで宙を睨んだ。  

「とにかく、様子が妙だとは思った。……よし──」  

 王太子は勢いよく立ち上がる。  

「あのタヌキめ、宴でやたら俺に酒を注いできたからな。君も泥酔させたのかもしれない」  
「タヌキ?」  

 きょとんとして聞き返すと、彼は王族らしい横柄な口調で告げた。  

「これだけは覚えておけ。君は俺と結婚する。それだけは変えられない」  

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