アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

文字の大きさ
32 / 68

あかねさん以外どうでもいーやー【蓮視点⑥】変質者注意

しおりを挟む
「だがお前は宗主となる者だ。大蛇オロチの力を継ぐ責務がある。古代から続く我が一門の家業が、お前の代で途絶えてもいいのか?」

 案の定、反論してくる父。その言葉に、腹が立った。古いんだよ。俺の世代を分かっていない。

 自分の人生を、自分の価値観で正直に生きること以上に、大事なものなんてあるかっての。

「じゃあ父さんは、憑神の血筋だから母さんと結婚したの?」

 ちょっと卑怯だと思いながら、あえて母の前で聞いてやった。

 料理を取り分けようとしていた母が、割り箸をボキッと折る。康則伯父さんがぎょっとして自分の妹を見た。

 父も焦って首を横に振る。

「な、何を言う。確かに見合いではあったが、出会った瞬間ビビッときて、もうメロメロで──」
「言っとくけど蓮、あなたデキ婚だから」

 母のぼそっと漏らした一言に、その場が気まずい空気に包まれた。

 誰かの咳払い──たぶん従兄弟の誰か──が響き、それを合図に俺は説得を再開する。

「茜さんの霊力、見たでしょう? まるで黄金の坩堝ですよ」

 柳楽の血筋は、時代とともに薄れてきている。近代に入ってからは六親等内にこだわらず、わずかな血の繋がりでも婿や嫁を迎えるようになった。

 結果として、遺伝的な結びつきはかなり希薄になり、霊力の片鱗を見せない親戚が大半を占めるている。

「茜さんなら、大蛇も歓迎する。霊力に満ちた子を、たくさん産んでくれる」

 そこまで言ってから、苦笑した。わあ、孕ます気満々だな俺。茜さんに聞かれたら、速攻で逃げられていただろう。

「俺思うんだけど、配偶者だけじゃなくてスタッフも、これからは血統に関係なく、霊力の強い人材を引き抜けばいいじゃないか」

 最初はバイト感覚でもいい。要は、クオリティを落とさなければいいのだ。

『除霊経験者求む。研修制度あり。危険手当あり。詐欺師お断り』

 ──そんな求人を出せばいい。実際この業界は詐欺師が多いのだ。

 しかし祖父は鼻で笑ってその案を一蹴する。

「憑神──大蛇オロチは、柳楽家の血の契約に応じておる。霊力の有無は問題ではない。我々は神に等しい存──」
「宗主の言う通りだ。何も分からぬ一般人を巻き込むな、蓮。彼女を家に帰しなさい」

 父が被せるように祖父を援護する。

 それを皮切りに、親族一同が口をそろえて反対し始めた。五歳の甥っ子まで。

 俺は黙り込んで腕を組み、彼らを睥睨する。

 しばらく無言でいると、全員の口数が減っていった。

 昔から俺が黙って睨むと、みんなたじたじになる。なんなの? そんなに目が細い?

 言っとくけど、お前ら親族、全員血が濃いんだ。俺と似た顔してんの、忘れんなよ。葉月だってアイプチしてんの知ってんだぜ?

 めんどくさくなった俺は、早々に説得を諦めた。

 そうかそうか。つまり君らはそういう奴らなんだな。だったら俺にも、考えがある。

「……じゃあ俺、宗主になるのやーめたー」

 あっさり言い放つと、その場が騒然となった。いちばん焦ったのは弟の要だ。

「ちょ、待てよ! そうしたら俺が、リコちゃんと結婚できないじゃん!」

「リコちゃんって誰」と両親が同時に声を上げ、俺は手を叩く。

「そうだ、葉月が婿をもらえばいい。従弟のよっちゃんでどう?」
「はぁああ? 嫌よそんなの。親族って気まずいじゃん。てか、あんた長男でしょ?」
「何をいう、長男に全部押しつけるな!」

 俺が妹にそう言うと、母が肩に手を置いた。

「それを言うなら、私だって東京に住みたかった。長男の嫁だからって、こんな田舎に──」
「良子! 何てことを言うんだ。あんなゴミゴミした所、人の住む場所ではない!」
「男って何も分かってないわね。良子さんの言う通りよ。蓮君みたいにタワマンに住みたい」

 奈々枝叔母さんの恨み節で脱線。そこから大揉めに揉め、家族全員の不満が一気に噴き出した。

 タワマンぐらい住まわせてやるさ。代わりに除霊を手伝ってくれ。

 頭の中で、都会に行きたい者たちはNAGIRAコーポレーションで雇うと決めた。

 だいたい、なんで俺がこんな苦労をしなきゃならない? みんなが祓い屋を嫌がるからだろ?

 過労死するくらいなら、俺だって辞めてやんよ。

「いいか、よく聞け。俺は我儘なんだ。家業は継いでもいい。でも俺の人生は俺の物だ。茜さんの人生も俺の物、分かった?」

 全員がどよめく。

 うわっ怖ぇ~とか、自己中とか、キモいとか──反論を通り越して悪口ばかりだったが、俺の愛に恐れ入ったのは確かだ。

 そうさ、彼女にも言った通り「付き合う」気なんてさらさらなかった。そんな無駄な期間、要らないからね。

 彼女とは、即結婚するつもりなのだから。

 俺は居住まいを正し、宗主に向き直る。

「自慰様」
「爺様だろ!」

 祖父が怒りに震える。頭の中で漢字変換を卑猥にしたことが、なぜかバレた。さすが宗主、勘が鋭い。

「彼女なら大丈夫です。柳楽の血は薄まらない」

 根拠はない。だが、茜さんとの霊力の相性はよく分かる。

 だからこそ、急いで契約を結ばなければならない──結婚という契約を。

 茜さんが今フリーだと知れたら、彼女に近づく男なんて山ほどいる。

 俺は早く気づけて、本当にラッキーだった。前の男が彼女を捨ててくれたおかげで。

 バカな奴だ。彼女の価値を分かっていない。

 霊力的には数百年に一度の逸材、女性としてはもう二度と会えない奇跡の人なのに。

 え? まだ三回しか会ってないって?

 そうさ。要や葉月が言う通り、親友でも恋人でもない。

 でも何度会っても好きになれない人もいれば、会うたび幻滅する人もいる。頻度なんて、関係ない。

 俺の女神さ。

 え? 思い込みが激しい? 違うね、これは神通力だ。

 だって俺は、茜さんに会うために高天原から地上に落ちてきた天津神だから。うん、なんかそんな気がしてきたよ。

 ひとまず翌日の儀式で出す予定だったお神酒の壺を開け、祖父と父にたっぷり飲ませた。

 この壺、八岐大蛇に酒を飲ませた時のものらしい──眉唾だけど。

 デロデロに酔った祖父と父から言質を取り、書面まで用意して血判を押させた。

 他の親族たちは、俺の瞳に狂気でも感じたのか、目を逸らし、見て見ぬふりをした。

 例え何を言われようと、知ったことか。誰が何を言おうが、茜さんは俺のものだ。

 ダメなら──暗示か監禁か……いや。

 柳楽家なら揉み消す権力はあるが、彼女に嫌われたら元も子もない。

 じゃあ、どうする?

 大丈夫。今は臆病になってるだけだ。俺が情けなく這いつくばって頼み込めば、絶対落とせる。

 だって茜さん、筋金入りのダメンズ好きだからね。

 彼女だって、クールに見えるけど、本当は誰かがいないとダメな人なんだ。

 ……まずい。好きだ。あの出会いは偶然じゃない。大蛇オロチが会わせてくれたんだ。

 運命だ。だから結婚する。そういうことだろ?


 そう確信しながら、彼女が寝かされた客間へ急ぐ。

 寝乱れた浴衣姿の彼女が熟睡しているのを見て──俺の大蛇オロチンが爆発しそうになった。

 誰が着替えさせた!? まさか右京か左京じゃないだろうな。雄の神使は近づけないようにしなきゃ。

 その代わり、ずっと俺が傍にいるからね。

 俺は彼女をしげしげと眺めた。

 なんだろう。霊力が今まで以上に澄み切っていて、怖いくらい輝いている。

「待ってて」

 とりあえず、風呂に入って身の汚れと煩悩を落としてこよう。

 清らかな気持ちで、彼女と眠れるように。

 ──もちろん、そんなこと不可能だったわけだが。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

ハメられ婚〜最低な元彼とでき婚しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
久しぶりに会った元彼のアイツと一夜の過ちで赤ちゃんができてしまった。どうしよう……。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

処理中です...