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第二章
私に触れないで
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「ちゃんと演技してくれて嬉しいけど──」
赤毛の兄妹がまだ見ているからと、エイベル君は私と手を繋いだまま、図書館への道を引き返す。
「赤くなった顔を、他の男性に見せるのはどうかと思うよ」
私はきょとんとしてエイベル君を見た。
「え……赤くなっていたかしら? 演技じゃないわよ、エイベル君が急に触れるから──」
「ご、ごめん。だって怪しまれたら困るだろ? 君は色が白いから……」
エイベル君は赤い瞳をスッと細め、私を見下ろした。
「目立つんだ。首筋から耳まで桜色に染まるの、気づいてた?」
「赤面症は、とっくの昔に治ったと思っていたの」
人見知りだった子供の頃は、もっと酷かった。最近ドキドキするようなことは無かったし……。
「そういう可愛いところはさ、恋人にだけ見せるものだよ」
か、可愛い……?
エイベル君のこの口の上手さは、どうにかならないのだろうか。無意識に女子を舞い上がらせるんだから。
私が可愛いわけないじゃないの。
人懐こいシンディーさんのキラキラした笑顔を思い出す。天真爛漫……女性版エイベル君。ああいう娘が、世間では「可愛い」と言うのだ。
なんというか……彼女として紹介された時、現実を突きつけられたようで、恥ずかしかった。
『嘘でしょ? だって全然釣り合っていないわ』
もちろん、そんなこと分かってるわよ?
でも仕方ないじゃない。他の女子には務まらないわ、本気でエイベル君を好きになってしまうもの。
私は違う。
いえ、既に好きになってはいるけど、身の程を弁えている。
どれだけ好きでも、彼を自分のものにしようなんて大それたことは考えない。
できるはずがないわけだし。
ただ……。
私は自分の頬を触った。そうか。カァッと顔が熱くなったと思ったけど、赤くなっていたのね。
気をつけよう。エイベル君に警戒されてしまう。もし私の気持ちがばれたら、速攻で振られちゃうもの。
気をつけるにしても、好きな人から触られて赤くなるのは自然な反応なので、どうしようもないのだが……。
そこで私は提案した。
「私、人前でベタベタするのは苦手なの。だから、手を繋ぐのもやめましょう」
これは言いたくなかった。どれたけ引き伸ばせても、恋人でいられるのはせいぜい卒業まで。
その間、彼と接する機会を無くすのはもったいないもの。
でも手を繋いで歩けないことより、即終了の方が嫌だわ。
ところが、エイベル君は首を横に振り、握った手にキュッと力を込めた。
「委員長はクラスの女子たちの鋭さを分かっていないよ。スキンシップしていないと、恋人じゃないってバレてしまう。手を繋いだり、肩を抱いたり、それに──」
エイベル君が私の唇をじっと見た。え? 何? アイスクリームでもついてるのかしら?
エイベル君は咳払いした。
「と、とにかく、恋人役を買って出てくれたのは委員長の方からなんだ。卒業までしっかりやってくれないと困るよ」
珍しく拗ねたように言ったエイベル君を安心させるべく、私は慌てて頷いていた。
「それもそうね。引き受けたからには、バレないようにやるわ」
すると、嬉しそうに微笑まれた。
「じゃあ、行こう。図書館デートの続きだよ」
お願い、赤くならないで私の顔。
エイベル君は、私の下心を知らない。
もしこの気持ちがバレたら、終わりどころか最悪裏切られたと思われるかもしれないんだから。
赤毛の兄妹がまだ見ているからと、エイベル君は私と手を繋いだまま、図書館への道を引き返す。
「赤くなった顔を、他の男性に見せるのはどうかと思うよ」
私はきょとんとしてエイベル君を見た。
「え……赤くなっていたかしら? 演技じゃないわよ、エイベル君が急に触れるから──」
「ご、ごめん。だって怪しまれたら困るだろ? 君は色が白いから……」
エイベル君は赤い瞳をスッと細め、私を見下ろした。
「目立つんだ。首筋から耳まで桜色に染まるの、気づいてた?」
「赤面症は、とっくの昔に治ったと思っていたの」
人見知りだった子供の頃は、もっと酷かった。最近ドキドキするようなことは無かったし……。
「そういう可愛いところはさ、恋人にだけ見せるものだよ」
か、可愛い……?
エイベル君のこの口の上手さは、どうにかならないのだろうか。無意識に女子を舞い上がらせるんだから。
私が可愛いわけないじゃないの。
人懐こいシンディーさんのキラキラした笑顔を思い出す。天真爛漫……女性版エイベル君。ああいう娘が、世間では「可愛い」と言うのだ。
なんというか……彼女として紹介された時、現実を突きつけられたようで、恥ずかしかった。
『嘘でしょ? だって全然釣り合っていないわ』
もちろん、そんなこと分かってるわよ?
でも仕方ないじゃない。他の女子には務まらないわ、本気でエイベル君を好きになってしまうもの。
私は違う。
いえ、既に好きになってはいるけど、身の程を弁えている。
どれだけ好きでも、彼を自分のものにしようなんて大それたことは考えない。
できるはずがないわけだし。
ただ……。
私は自分の頬を触った。そうか。カァッと顔が熱くなったと思ったけど、赤くなっていたのね。
気をつけよう。エイベル君に警戒されてしまう。もし私の気持ちがばれたら、速攻で振られちゃうもの。
気をつけるにしても、好きな人から触られて赤くなるのは自然な反応なので、どうしようもないのだが……。
そこで私は提案した。
「私、人前でベタベタするのは苦手なの。だから、手を繋ぐのもやめましょう」
これは言いたくなかった。どれたけ引き伸ばせても、恋人でいられるのはせいぜい卒業まで。
その間、彼と接する機会を無くすのはもったいないもの。
でも手を繋いで歩けないことより、即終了の方が嫌だわ。
ところが、エイベル君は首を横に振り、握った手にキュッと力を込めた。
「委員長はクラスの女子たちの鋭さを分かっていないよ。スキンシップしていないと、恋人じゃないってバレてしまう。手を繋いだり、肩を抱いたり、それに──」
エイベル君が私の唇をじっと見た。え? 何? アイスクリームでもついてるのかしら?
エイベル君は咳払いした。
「と、とにかく、恋人役を買って出てくれたのは委員長の方からなんだ。卒業までしっかりやってくれないと困るよ」
珍しく拗ねたように言ったエイベル君を安心させるべく、私は慌てて頷いていた。
「それもそうね。引き受けたからには、バレないようにやるわ」
すると、嬉しそうに微笑まれた。
「じゃあ、行こう。図書館デートの続きだよ」
お願い、赤くならないで私の顔。
エイベル君は、私の下心を知らない。
もしこの気持ちがバレたら、終わりどころか最悪裏切られたと思われるかもしれないんだから。
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