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終章
ドクターフィッシュという魚を君たちは知っているかい?
しおりを挟むビーチク族の集落は、大河から流れ込む支流の一つに、実に贅沢な財産を持っていた。
温泉である。
しかもこの時期になると、なんとかフィッシュとかいう小魚が、大河から温かい水を求めてやってくるらしい。
温泉の湧き出る川沿いは、きちんと木の柵を立てられ、周囲からは見えないようになっている。
しかしこちらからはサトウカエデの見事な紅葉が見え、絶景の温泉保養地のようだった。
「控えめに言っても最高だわ」
ヴェロニカは体を伸ばす。川の水とまじりあい、湯加減もちょうどいい。
故郷にも温泉はあったが、こんな広葉樹の色味は楽しめない。
ダンに置いていかれた後、毎日利用させてもらっているが、紅葉してからはまた格別である。
それに、今日はついにやってきた。
この、ところどころにいる小魚。小魚と言うにはデカいのは気のせいだろうか。鮒くらいある。裸体に群がってきて、あちこちつついてくるのは妙な感じだ。
寒くなり、藻などの餌が少なくなってきたため、古い角質を食べに来たのだろうか。
彼女はずっとそこで夫を待っていた。
残ることになったヴェロニカをビーチク族に預けて、カヌーで大河を渡り、中部との国境に捕虜を送って行ったのだ。
もう自分が選択したものは決まっていたが、心残りが無い……と言えばうそになる。
文明から遠ざかるのは怖い。
その気持ちを読んだのか──気が変わらないように──ダンは妻をこの場に残していったのだ。国境を見て、ヴェロニカが逃げ出さないように。
(もう、心配症なんだから)
大丈夫。きっと中部と交易をするようになるはず。時代は変わるのだ。そうしたら、マチンカ・パイパイは、あちらの文明品を流してくれる。
ヴェロニカは、豊かな森を眺めた。
北の大陸の南部の特産にもあるが、同じように、メープルシロップを売ればいいんだわ。
あと、楡やナラ、カエデ──。各地の部族を説得できたら、木材も売れる。ビーバーばかりが資源ではない。
そうね、このドクターフィッシュをフィッシュセラピーとして売り出してもいいわ!
温かい湯に浸かりながら、頭の中で既に未来のことを考えていると、
「あんっ」
ドクターナントカと言う魚が、乳首を突付きだした。
ちょっと……餌じゃないのよ。
しかし魚はピンク色の突起を執拗に攻撃してくる。舐めあげ、吸いつくようにいやらしく。普段、岩についた藻を食べるのだろうが、それと同じ口の動きは、敏感な部分をやたらと刺激する。
少し飢えているようだ。
これではセラピーどころか性感マッサージ──
「やんっ」
思わず立ち上がると、股間にも痺れが走った。
※ ※ ※ ※ ※ ※
ダン・カンは、任務を終えるとすごい勢いで落葉広葉樹の森に戻った。
カヌーから降りると見事な紅葉を見あげ、ほっと息をつく。早く戻らなければ、雪が降り始めてしまう。
ダン・カンは、ヴェロニカからもらった毛皮の帽子を被っていた。
この時期の朝晩の冷え込みは、氷点下に達することもあるのだ。
ペニスケースも毛皮に覆われた物に変わっていた。マチンカが国境の砦でこさえてくれたラビットファーである。ヴェロニカのための、最大の譲歩だった。──暖かい。
ビーチク族の男女がやってきて、カヌーを繋いでくれた。
この二人、上半身裸だ。やはりビーチク族は寒さに強い。負けたような気になった。
『妻は?』
と、手話で聞く。
置いていったはいいが、今度はそこから逃げ出してしまったのではないか。心配で気が気でなかった。
『神の御使いと戯れておる』
と、川の先のロッジを指差すビーチク族に、ほっと胸をなでおろした。
ロッジの向かいの川沿いには囲いがあり、白い湯気が立ち上っている。
『世話になった』
ダン・カンは二人に礼を言うと、いそいそとそちらに向かう。
近づくと、女の喘ぎ声。
ああ、ヴェロニカの声だ。ちゃんといい子に待っていた。
しかし……この色っぽい声はなんだ? ダン・カンは顔をしかめた。
ビーチク族の言う「神の御使いと戯れている」と言う言葉を思い出し、全身から負のオーラが立ち昇る。
「まさか、何者かに無理やり──御使いとは何やつ!」
ダン・カンは、妻の声がする方に大急ぎで向かった。樺皮のカヌーが立て掛けてある柵の内側に駆け込む。
何ということでしょう。
ヴェロニカは魚に襲われていた。お約束だし、蛇にはしょうがないかな、とも思うが、魚ごときに襲われるとは、やはり最弱。
両方の乳房と股間に魚をぶら下げ、びくびくと河原の石の上で体を痙攣させている。
「なにが神の御使いかぁああ!」
ダン・カンはヴェロニカに走っていくと、魚をむしり取って川に全力投球した。外す時、さらなる刺激を与えてしまい、ヴェロニカは達してしまったようだった。
ぐったり河原に横たわっている、久々のヴェロニカ。白い肌は温かい湯のせいですっかりほてり、赤毛は濡れて肩に纏わっている。
一糸まとわぬ裸だ。とろんとした目をダン・カンに向け、身を起こす。
「あっ……お帰りなさい、旦那様」
ダン・カンのコノヤローメーターが振りきれた。ダンはペニスケースをむしり取り、吠えていた。
「貴様ぁぁあっ」
「え──きゃっ」
抱き上げ、魚よりも強くその乳房に吸い付く。
「待って、ナントカフィッシュにやられて乳首が腫れているの、お願い痛くしないで」
万死に値するギルティではないか、ドクターナントカ!
ビーチク族の乳首が全員やけに腫れているのは、この神の御使いのせいだったなんて。吸われ続けたらそりゃあ、あれだけ長くなるだろうよ。
「たとえ相手が魚だろうと、他部族の祭り上げる精霊だろうと、俺の妻の乳首に吸い付くことは許さんっ」
後で焚火で焼いて食ってやる。
「あんっ」
見ると、まだ股間の突起に御使いが吸い付いていた。ものすごい勢いで引っこ抜くと、ふたたび剛速球でぶん投げた。
ダン・カンは槍投げの天才なのだ。
しかし、またしても達してしまったヴェロニカ。
ダン・カンにぐったりとしがみついている。
「ニーカ?」
「ん?」
ダンはぎゅっと抱きしめる。
「もう一度言ってくれ。さっきの」
「ナントカフィッシュ?」
「違う、その前」
「ああ……お帰りなさいませ、だんなさま」
ダンは目を閉じて幸せを噛み締めた。
「うん、待たせたな」
そうして二人は、お互い全裸のまま口づけを交わす。
ダンは、腫れ上がった乳首を労わりながら、丸い乳房を何度も揉みしだいた。
ああ、おっぱい。柔らかい。幸せ。
「ついに、初夜なのね」
今にものぼせそうな顔を、少し緊張させながらヴェロニカが言った。ウッフン毒蛇の時に何度も犯したけど、気づいてないのだから、たぶん初夜でいいだろう。
「痛いのかしら」
「……それはない」
抱き上げると、そそり立った股間の上にヴェロニカをゆっくり下した。
ずりゅ
既に巨大ドクターフィッシュのおかげで濡れ濡れのあそこに、ダン・カンのダンカンはスルリと入り込む。
「ふぁっ!」
じゅぽん。重みで根元まで入ってしまった。奥を突かれ、白い喉をのけぞらせる妻。
「不思議……だわ。痛くない」
しっくり来ているようだ。まるで、ヴェロニカ自身がペニスケースである。
じっさい、そうしたいくらいだ。あまりにも心地よく、常に入れておきたくなる。
ナシュカ族族長でありマチンカの兄であるチチンカが、友好のために祖父に渡したマンモー象の角よりも、ヴェロニカはずっといいペニスケースなのだ。
やばい。差し込んだだけで、イってしまいそう。
「──!」
ヴェロニカが、舌を絡めてきた。本当にこの娘、処女だったのか? というほど上手な舌遣いで、ダン・カンのベロニカをぺちょぺちょ吸い上げる。
しばらく、夢中でお互いを貪り合った。
やがてヴェロニカは唇を離す。唾液の糸がいやらしく引き、ヴェロニカは恥ずかしそうに下を向く。
「やっぱり、淋しかったの」
ダン・カンが居ないのは、淋しかった。離れている間、何度も考えた。自分は、流されていないのか。でも、結論は同じところに達してしまう。
緑の瞳が潤んだ。
「言葉ができるから貴方がいいとか、そんなわけでもないのよ? 手話は通じるし、マチンカさんとお話しした時も、そんなに感激しないし。貴方は無口だけど、それでも貴方がいいみたい」
ダン・カンは、ヴェロニカの脇の下に手をやり持ち上げた。ずぶっと擦れる音がして鞘から抜く。
ヴェロニカがせつなげな声をあげる。
「いやっ、抜かないで、空っぽ、淋しいっ」
次の瞬間、再びそこに降ろされていた。コン──と奥に当たり、ヴェロニカは嬌声をあげる。
「他の男の名前を呼ぶな」
「あぁぁあうん、うんっごめんなさ──」
再び持ち上げ降ろす。コンッ
「うぁああああああ深いっ」
ヴェロニカの緑の眦が潤み、大きな目から涙の粒が零れ落ちる。美しいな、とダンは思った。
ついに彼女は後ろに腕をやり、砂利に手を突く。白くしなやかな体をのけぞらせ、快楽を逃そうとしている。
丸い乳房が外気に触れ、先端がツンと立っているのを見ると、なんでこんなにビーチク族の女とは違うのだろう、と思う。
今なら同じようにさらけ出しているのに、どうして彼女のビーチクは、いや乳首はこれほどまでに自分を誘ってくるのか。これではドクターダンカンになっても、仕方ないじゃないか。
腰を押さえ、高速で抽挿を繰り返す。くちゅんくちゅんくちゅん──
パンッと何かが焼き切れたように、ヴェロニカが弛緩した。後ろに倒れて後頭部を打ちそうになったヴェロニカを支えつつ、同時にダンも果てていた。
「これが、噂に聞く達するというものなのね」
毒蛇の罠で、何度も達していたことは忘れている。処女──のつもり──なのにイってしまった自分に、衝撃を受けているらしい。
しかしダンの方は、それではまるで足りない。
全身の鳥肌が消え、すっかりほてった体を撫でまわす。すると、またすぐに乳首は立ち上がった。
(なんと敏感なのだ)
赤黒い手で白い乳房が揉みしだかれる様は、淫猥で美しい。ダンは舌なめずりした。
乳房の先の尖りを舌でいたぶりながら、手を内腿に伸ばす。ドクターフィッシュに吸われたあそこの突起も、指でつまんでやった。
「んっ──まって、ダン、達したばかりなの、あたくし──」
ピンと爪ではじく。ヴェロニカがキャンッと子犬のような声を上げた。かわいい声だ。
鼻にかかった、あどけない声であんあん言われると、ものすごくエロい。
もうこれ、妻の名はエロニカでいいのではないか。その方が呼びやすいし。
「後ろを向け、犬のように」
「──え」
レナートを思い出し、体がこわばる。ダンの頬が、ピクッと引きつる。
「忘れさせてやる。他の男はいっさい貴様に──あ、ごめんなさい──ニーカに触っていない。忘れるんだ」
そして背後からのしかかった。
メープルより甘く柔らかな匂いの項に、鼻を押し付ける。赤毛がまとわりつく白いうなじ。
気づくと噛み付いていた。ヴェロニカはまた艶っぽい声で鳴いた。
背後から入れられ、グリグリと敏感な場所を抉られた。
ズリ──ズリッ──ズリッ──
「あっ~あっ~あ~」
突くたびに上がる、鼻にかかった声。頭に血がのぼったダン・カンは無心に腰を打ち付け続ける。
丸い尻に当たる音は、まるで拍手のように響き、紅葉の森に吸い込まれていく。
二人は果てていた。
困ったことに、ダン・カンのダン・カンはまだ元気だ。
冷えないようにヴェロニカを温水に引っ張りこむと、ぐったりした身体を洗ってやる。
チュポンと音がして、ダン・カンがうわっと声を上げた。見下ろすと、夢なら……どれほど良かったでSHOW。ドクターフィッシュがダン・カンのダン・カンに吸い付いていた。
コノヤロー。油断も隙もない。ダン・カンは魚を追い払うと、ヴェロニカを仰向けにして足を広げさせる。
放心していたヴェロニカが我に返った。これは公爵令嬢の格好ではない。
「いやっ」
そんなところ見ないで!
ところが、なんということでshow。
ダン・カンがドクターフィッシュのようにヴェロニカの肉の突起に食いついていた。
ビリビリと痺れが走る。一瞬でイってしまった。
(もたないわ。こんなに何度も感じさせられたら、グズグズになっちゃう)
ヴェロニカが非難を込めて睨んだ。しつこいわ。何発やる気ですの!?
可愛そうなヴェロニカ。それすらも──そのエメラルド色のどんぐり目すらも、ダンカンのコノヤローを刺激するだけだった。
「あと四回はいける。ずっと我慢していたのだから」
ヴェロニカはその言葉を聞いて、ここに残ったことを後悔した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
賢いヴェロニカは、先住民の女たちと概ね上手くやった。
雪に閉ざされたこの地でも、皆がさらに居心地よく暮らせるように、集落や砦の改修などは陣頭を取った。
おそらく自分が快適に過ごしたいだけなのだと思うが。
中部と上手くやっていきたい、そういう願いがあるようなので、彼女の言う貿易やビジネスについても考えてやらねばなるまい。
しかし子供をたくさん作ってからだな、とダン・カンはホクホクしつつ、森で仕留めた鹿を橇から降ろす。
魔除けの柱のせいで、この真っ白な世界でも、自分の家がどこか迷うことは無い。
テン・トンが腰をやってしまい、砦に引きこもるようになったので、今はダン・カンが族長である。
族長には、巨大な木製のロング・ハウスを一世帯で使える特権があるのだ。
そのロング・ハウスの入り口が開いた。
色のちょっと白い、赤毛の男の子が飛び出してくる。
母親が毛皮の上着を持って追い掛け回すのから逃れ、小さなペニスケース一本で、この冬もがんばるようだ。
「あ、おかえりなさい、パパ~!!」
ダン・カンは息子を見て、コマネチ族一の強面をくしゃっと崩した。
「コマネチ!」
完
ご愛読ありがとうございました。ダンカンコノヤロー。
姉妹品であるヴォルフ族とヴァシーリィ編は、間もなく公開です。お楽しみに!
あとすみません、途中で名前変えたら父姓直し忘れてまざっちゃって、間違ってたらごめんなさい、ロシア名は二度と出さぬ
。゜(゜´Д`゜)゜。ヴァシーリィ編終わったら、いつものように適当に戻ります。
応援ありがとうございます!
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