奥様は聖女♡

喜楽直人

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 以来、この国に王家は存在しないし、なんなら既に国と呼べるのかどうかも分からない。

 生まれてくる子に守り石が握られていることも無くなってしまった。
 自分達の適正な職業も分からなければ、もし新たに聖女が生まれたとしても、それが誰だか分からなくなってしまったのだ。
 地方にあった街は懸命にその周囲に城塞を築き上げ、人々の暮らしはなんとか守られてきたに過ぎない。

 そして、この事件で枢機卿以下中枢を占めていた指導者層をごっそりと失った筈の聖女教会、それが、この依頼書を出し続けている大本である。
 その名も、『真なる聖女教会』
 地方に派遣されていたことで運よく生き残った聖女教会の司祭たちや今でも聖女の存在を信じている者たちが集まり運営しているという。

「てめぇらが見殺しにした聖女様を、積み上げた金貨で探そうっていうのがね。らしいっちゃらしいよな」
「まぁなぁ。あいつ等が探してますってポーズを取らないのも拙いんだろうな」
「もう死んでると思ってるからこそ、金貨積み上げてんのかもよ?」
「払うつもりは最初からねぇってか! そりゃ酷えな」
「奴等が真なる聖女教会とか名乗るのもなぁ。恥知らずっつーか。厚顔無恥ってぇのはそいつ等のことを差す言葉だな」
「ちげぇねえ。神様、罰を与えるんならそいつ等だけにしてくれりゃいいのにな」
「神でなくても構わねぇから、誰かあいつ等を罰してくんねえかな」

「なるほどな。じゃあ、俺様が貰っておいてやることにするか」


 不穏な言葉に、周囲がギョッとして振り向く。

「おいおい。確かに髪の色はソックリだろうけどよ。瞳の色も全然ちがうじゃねーか」
「いや、それよりなにより。本物の聖女様はおしとやかで静かな御方だって」

 話を振った男も、周囲で囃し立てた者たちも、面白がりの自分達の英雄が暴挙に及ばないように止めに入って、つい言葉が過ぎたと自分の口を押える。

 その視線が集まった先では、サミーが悪い顔をして笑っていた。


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