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冷めたイモフライは本当は誰かに愛されたい
18.具だくさんのズッパ
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ソファに座り、両手を組み合わせて食前の祈りを捧げて自分の分のクローシュを開ける。
中にあったのは具だくさんのズッパだった。
思いの外庶民的な食事が続いてホッとする。しかし、目玉焼きトーストだって、使ってあったソースは貴族にとっても贅沢な逸品だった。油断はできない。
私は、赤く澄んだスープを少しだけ掬い、口へ運んだ。
赤いのでトマトがベースなのかと思ったが、違う。不思議な甘さとコクのある味だ。初めて食べた味だけれど、とても美味しい。ひと口食べる度に、じんわりと身体が温まっていく。
小さく折り畳まれたひと口大のショートパスタは、中に挽肉が包まれていた。
野菜がくたくたになるまで煮込まれたスープをたっぷりと吸い込んでおり、とてもジューシーだ。
思った以上に手間のかかる料理だと分かって、私は天を仰いだ。
やっぱり、ここで出される料理は庶民派に見せ掛けた高級料理ばかりだ。
おもわずスプーンを持っていない方の手でこめかみを擦った。ため息しか出てこない。
「あれ、オリーちゃんの口には合わなかった? もしよかったら、添えてあるクリームを溶かし入れて味を変えてみてよ」
おじいさんに促されて気が付いた。
スープ皿の横に添えられていたクリームはてっきり紅茶に入れて飲むのか食後のデザートかと思っていたが違うらしい。
恐る恐る小さく掬って舐めてみると仄かな酸味が舌に広がった。
「ふむ」
もうちょっとだけスプーンに掬って、スープ皿へと溶かしこんでみる。
赤かったスープは愛らしい桃色のそれに変わっていく。なんでだろう、あまり食べ物の色ではないような気がする。
口へ運ぶのを躊躇したが、クリーム自体は仄かな酸味があるだけのクリームだったし、おじいさんはニコニコと笑って見守っているというか圧を掛けてくるので、覚悟を決めて口へ入れた。
「おいしい!」
「だろー?」
コクのあるスープに酸味が加わって、食べやすい。でもそれだけじゃなくて、クリームの旨味が足されることで更なるコクが深まっている。幾らでも食べられるし幾らでも食べていたくなる味わいだ。くたくたになるまで煮込まれた野菜も、スープを吸った肉入りショートパスタも、クリームが持つ酸味が効いて更においしくなった気がした。
「いくらでも食べられそう」
スプーンを動かす手が止まらない。
そんな私を、おじいさんはニコニコ見ていた。
ソファの前に置いてある芸術品のようなテーブルではなく、おじいさんは座った自分の膝の上にトレイを設置して、けれども綺麗な所作で食事を口へと運んでいく。
大きな口を開けて、ゆっくり咀嚼していくからだろうか。
前かがみにならず、まっすぐ背筋を伸ばして食べているからだろうか。
不思議と不作法には見えない。
「……おじいさんって、何してる人ですか?」
本当は名前を教えて欲しかったんだけど、初日の夜に教えて貰っているかもしれないと思うと言い出しにくかった。今更な気もしたし。
だから、とりあえず遠回りして聞き出すことにしよう。もしくは明日マダムに訊くのでもいい。
「んー。今は、オリーちゃんと旨い物を食べてるとこだな。それと、オリーちゃんと賭けをしてる」
くくく、と笑った、その、人が悪そうな笑顔に思わず睨む。
「やっぱり一緒に旨いと話しながら食べると、旨いものがより旨くなるなぁ」
私が睨んでいようが、口をへの字にしていようがまったく気にならないのか。
おじいさんはへらへらと色付き眼鏡の奥で笑って、目尻に皺を寄せるばかりだった。
ソファに座り、両手を組み合わせて食前の祈りを捧げて自分の分のクローシュを開ける。
中にあったのは具だくさんのズッパだった。
思いの外庶民的な食事が続いてホッとする。しかし、目玉焼きトーストだって、使ってあったソースは貴族にとっても贅沢な逸品だった。油断はできない。
私は、赤く澄んだスープを少しだけ掬い、口へ運んだ。
赤いのでトマトがベースなのかと思ったが、違う。不思議な甘さとコクのある味だ。初めて食べた味だけれど、とても美味しい。ひと口食べる度に、じんわりと身体が温まっていく。
小さく折り畳まれたひと口大のショートパスタは、中に挽肉が包まれていた。
野菜がくたくたになるまで煮込まれたスープをたっぷりと吸い込んでおり、とてもジューシーだ。
思った以上に手間のかかる料理だと分かって、私は天を仰いだ。
やっぱり、ここで出される料理は庶民派に見せ掛けた高級料理ばかりだ。
おもわずスプーンを持っていない方の手でこめかみを擦った。ため息しか出てこない。
「あれ、オリーちゃんの口には合わなかった? もしよかったら、添えてあるクリームを溶かし入れて味を変えてみてよ」
おじいさんに促されて気が付いた。
スープ皿の横に添えられていたクリームはてっきり紅茶に入れて飲むのか食後のデザートかと思っていたが違うらしい。
恐る恐る小さく掬って舐めてみると仄かな酸味が舌に広がった。
「ふむ」
もうちょっとだけスプーンに掬って、スープ皿へと溶かしこんでみる。
赤かったスープは愛らしい桃色のそれに変わっていく。なんでだろう、あまり食べ物の色ではないような気がする。
口へ運ぶのを躊躇したが、クリーム自体は仄かな酸味があるだけのクリームだったし、おじいさんはニコニコと笑って見守っているというか圧を掛けてくるので、覚悟を決めて口へ入れた。
「おいしい!」
「だろー?」
コクのあるスープに酸味が加わって、食べやすい。でもそれだけじゃなくて、クリームの旨味が足されることで更なるコクが深まっている。幾らでも食べられるし幾らでも食べていたくなる味わいだ。くたくたになるまで煮込まれた野菜も、スープを吸った肉入りショートパスタも、クリームが持つ酸味が効いて更においしくなった気がした。
「いくらでも食べられそう」
スプーンを動かす手が止まらない。
そんな私を、おじいさんはニコニコ見ていた。
ソファの前に置いてある芸術品のようなテーブルではなく、おじいさんは座った自分の膝の上にトレイを設置して、けれども綺麗な所作で食事を口へと運んでいく。
大きな口を開けて、ゆっくり咀嚼していくからだろうか。
前かがみにならず、まっすぐ背筋を伸ばして食べているからだろうか。
不思議と不作法には見えない。
「……おじいさんって、何してる人ですか?」
本当は名前を教えて欲しかったんだけど、初日の夜に教えて貰っているかもしれないと思うと言い出しにくかった。今更な気もしたし。
だから、とりあえず遠回りして聞き出すことにしよう。もしくは明日マダムに訊くのでもいい。
「んー。今は、オリーちゃんと旨い物を食べてるとこだな。それと、オリーちゃんと賭けをしてる」
くくく、と笑った、その、人が悪そうな笑顔に思わず睨む。
「やっぱり一緒に旨いと話しながら食べると、旨いものがより旨くなるなぁ」
私が睨んでいようが、口をへの字にしていようがまったく気にならないのか。
おじいさんはへらへらと色付き眼鏡の奥で笑って、目尻に皺を寄せるばかりだった。
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