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「うん、大丈夫。ちょっと香ばしすぎてるけど。うん、食べられるわ」
自分ひとりで作れるようになったのだと思うと上出来だとすら思い、もう一枚、クッキーへと手を伸ばした。
先ほどより色が濃いけれど、それでも食べられなくはない。
「うんうん。最初の時に比べたら食べられるだけでも凄いことよ、フルール。あなたはきっと、お菓子作りの才能があるんだわ」
最初に焼いた肉は黒焦げだった。消し炭と言っても過言ではない。なのに、真ん中はまだ生。
それを三枚続けて作り出した時、マリから「食事はすべてスープにしましょう」と申し付けられてしまった。
固い野菜から入れて、ひとつの具材が柔らかくなってから次の食材を入れて、最後に塩味で整えることというマリ直伝の極意を守り続けているので、今のところお腹を壊すこともない。
「入れた素材が溶けてドロドロになった後に入れた具材には火が通りにくいっていうマリすら知らなかった極意も見つけたし」
一番最初に入れた具材が溶けてしまった時、次に入れた具材はいつまでも生煮えだった。
それだけ取り除き、別の鍋で煮てから合わせるという技で凌いだ。
結局、あまりおいしくないスープというかシチューができたのだけれど、それだってあまり美味しくないだけで食べられるのだから。
「問題は、同じスープを食べ続けることになるってことだけね」
一緒に食べるのが、買ってきたパンか、スープを煮込んでいる横で焼いたジャガイモか、スープに入れて茹でた小麦粉団子かの違いがあるだけだ。
「いつか、パンも焼けるようになりたいわ。あと、お肉をおいしく焼けるようにもなりたいわね」
やってみたいこと、できるようになってみたいことは幾らでもある。
それらをすべて自分でできるようになれるかは謎だけれど、死ぬまでまだまだ時間は長そうだから、丁度いい。
「私がお菓子や料理を作ってるってあの人が知ったら、吃驚するかしら」
──喜んで、食べてくれただろうか。
そんな思いが頭に浮かんで、フルールから表情が抜け落ちた。
「駄目駄目。笑顔にならなきゃ」
お行儀が悪い事だってやってみたかったのだ。
覚悟を決めて、手にしたクッキーをぽいっと口に放り込んだ。
「んんっ。やだ、これ苦い」
自分が生成してしまった焦げたクッキーのあまりの苦さに、フルールは慌てて口へお茶を運んだ。
庭で摘んで干しておいたカモミールの花を使ったお茶はおいしいだけじゃなくって、食あたりにも効果があるらしいので、自分で作った何かを食べる時には必ず飲むことにしている。
花の育て方も、摘み方も洗い方も干し方も、お茶として淹れる方法だってすべて、教えて貰ったノートの通りにしているから。
紅茶は無理だけれど、このお茶だけは自信がある。
「ふう。吃驚したわ。次から、自作のクッキーを食べる時には、カモミールティーにミルクと蜂蜜を入れておくべきね。うん、またひとつ賢くなった気がするわ……あら?」
今年もそろそろまたカモミールの花が咲く頃ね、と視線を向けたところで、その後ろの植えこみが音を立てて揺れた。
ガサゴソガサゴソ。
揺れるゼラニウムの葉が段々と近づいて来るのを視線で追う。
その揺れが、フルールに一番近づいてきたところで止まった。
ぐぅきゅるるぅ。
『あっ』
かわいらしいお腹が鳴る音と、恥じらう声が上がると同時に、愛らしい幼い女の子が立ち上がった。
お腹を押さえる手はふくふくとしていて、まるでそこに花が咲いたようだ。
お腹が鳴ってしまったことを恥ずかしがっているようではあるが、その視線は、フルールの手にした焦げたクッキーに釘付けになっている。
「あの、えっと。これは焦げがあって……」
じーっと見つめられていると、何故か焦りが生まれてきてしまう。
焦げたクッキーなど幼い子供には毒だろうとは思うのに、言葉が上手く出て来ない。
どう説明すればいいだろうと悩んでいたところ、少女が意を決した様子で近づいてきた。
『それ、たべてもいい?』
しかも、少女が喋ったのは、この国の言葉ではなかった。
その国の言葉を勉強したのはまだ学生の頃のことで、遠い記憶を必死に思い出して会話を繋げる。
「『焦げているけれど食べるかしら』で、通じるかしら」
自分でも怪しげな文法だと思いつつ同じ言葉で返すと、少女の顔が輝いた。
『! いい。ありがと』
できるだけ焦げの少ないものを選び取り、少女に差し出した。
先ほども花のようだと思ったちいさな手が、フルールが焼いた、いびつな形の焦げたクッキーを掴んで、頬張った。
『うれし。おいし』
『おいしい? 嬉しいわ』
目を輝かせて食べていた少女の瞳は、綺麗なアイスブルーをしていた。
丸みを帯びた頬が動く様に、フルールの顔が弛んだ。
『これね、私が作ったクッキーなのよ。可愛いあなたに食べて貰えて嬉しいわ』
そういって差し出したクッキーを見つめる少女の瞳が見開かれた。アイスブルーの美しい瞳へ、涙の膜がゆるゆると張っていった。クッキーの食べ滓が残る紅い唇が、わななく。
そうしてついに、溢れてしまった涙がまあるい頬を伝い落ちていくのを、フルールは信じられない気持ちで見つめた。
『ご、ごめんなさい。おいしくなかったわね。お腹、痛くなっちゃった?』
フルールは必死に、異国の言葉で謝った。幼い子供にはやはり焦げは毒だったのだと、己の浅慮さに慌てる。
医者を呼びに行こうか、それとも少女の両親を探す方が先だろうか。
そういえば、この異国の少女はどこから来たのだろうかと今更ながら困ってしまった。
『ごめんなさい。いますぐお医者様に見せてあげるからね』
ひとり暮らしのこの家では、何もかも自分で行わなければならない。
けれど、こんな幼い子供が私の作ったつたないクッキーのせいで泣いているというのに、置いて探しに行くことなど私にはできなかった。
「誰かー! だれかいませんか!」
『ちがう、の。だいじょうぶ』
大きな瞳に涙を湛えた少女が、何度も首を振る。
フルールを安心させようとしているのだろう。健気にふるまう少女が、フルールの涙を誘う。
自分から強請って貰ったクッキーが原因で、体調が悪くなったと言えないのだろう。
誰の目にも入らない生活を求めたのはフルールだ。
けれど今は、大きな声で助けを呼んだ。少女の身体を抱き寄せる。
『大丈夫よ。私が助けるわ。だいじょうぶ』
その言葉に根拠などなかった。それでもフルールにとってそれは本心だった。
抱え上げて、自らの足で医者の下へと運ぶのだ。
『……まま』
幼い声が、母親を呼ぶ。フルールの胸がぎゅっと痛んだ。
ちいさな体でも、フルールには重すぎた。家事をするようになって体力がついてきたという自信はあったけれど、筋力という意味ではまるで足りていないのだ。
けれど、落す訳にはいかない。
絶対に助けてみせると心に決めて、フルールは村までの道を歩くことに決めた。
自分ひとりで作れるようになったのだと思うと上出来だとすら思い、もう一枚、クッキーへと手を伸ばした。
先ほどより色が濃いけれど、それでも食べられなくはない。
「うんうん。最初の時に比べたら食べられるだけでも凄いことよ、フルール。あなたはきっと、お菓子作りの才能があるんだわ」
最初に焼いた肉は黒焦げだった。消し炭と言っても過言ではない。なのに、真ん中はまだ生。
それを三枚続けて作り出した時、マリから「食事はすべてスープにしましょう」と申し付けられてしまった。
固い野菜から入れて、ひとつの具材が柔らかくなってから次の食材を入れて、最後に塩味で整えることというマリ直伝の極意を守り続けているので、今のところお腹を壊すこともない。
「入れた素材が溶けてドロドロになった後に入れた具材には火が通りにくいっていうマリすら知らなかった極意も見つけたし」
一番最初に入れた具材が溶けてしまった時、次に入れた具材はいつまでも生煮えだった。
それだけ取り除き、別の鍋で煮てから合わせるという技で凌いだ。
結局、あまりおいしくないスープというかシチューができたのだけれど、それだってあまり美味しくないだけで食べられるのだから。
「問題は、同じスープを食べ続けることになるってことだけね」
一緒に食べるのが、買ってきたパンか、スープを煮込んでいる横で焼いたジャガイモか、スープに入れて茹でた小麦粉団子かの違いがあるだけだ。
「いつか、パンも焼けるようになりたいわ。あと、お肉をおいしく焼けるようにもなりたいわね」
やってみたいこと、できるようになってみたいことは幾らでもある。
それらをすべて自分でできるようになれるかは謎だけれど、死ぬまでまだまだ時間は長そうだから、丁度いい。
「私がお菓子や料理を作ってるってあの人が知ったら、吃驚するかしら」
──喜んで、食べてくれただろうか。
そんな思いが頭に浮かんで、フルールから表情が抜け落ちた。
「駄目駄目。笑顔にならなきゃ」
お行儀が悪い事だってやってみたかったのだ。
覚悟を決めて、手にしたクッキーをぽいっと口に放り込んだ。
「んんっ。やだ、これ苦い」
自分が生成してしまった焦げたクッキーのあまりの苦さに、フルールは慌てて口へお茶を運んだ。
庭で摘んで干しておいたカモミールの花を使ったお茶はおいしいだけじゃなくって、食あたりにも効果があるらしいので、自分で作った何かを食べる時には必ず飲むことにしている。
花の育て方も、摘み方も洗い方も干し方も、お茶として淹れる方法だってすべて、教えて貰ったノートの通りにしているから。
紅茶は無理だけれど、このお茶だけは自信がある。
「ふう。吃驚したわ。次から、自作のクッキーを食べる時には、カモミールティーにミルクと蜂蜜を入れておくべきね。うん、またひとつ賢くなった気がするわ……あら?」
今年もそろそろまたカモミールの花が咲く頃ね、と視線を向けたところで、その後ろの植えこみが音を立てて揺れた。
ガサゴソガサゴソ。
揺れるゼラニウムの葉が段々と近づいて来るのを視線で追う。
その揺れが、フルールに一番近づいてきたところで止まった。
ぐぅきゅるるぅ。
『あっ』
かわいらしいお腹が鳴る音と、恥じらう声が上がると同時に、愛らしい幼い女の子が立ち上がった。
お腹を押さえる手はふくふくとしていて、まるでそこに花が咲いたようだ。
お腹が鳴ってしまったことを恥ずかしがっているようではあるが、その視線は、フルールの手にした焦げたクッキーに釘付けになっている。
「あの、えっと。これは焦げがあって……」
じーっと見つめられていると、何故か焦りが生まれてきてしまう。
焦げたクッキーなど幼い子供には毒だろうとは思うのに、言葉が上手く出て来ない。
どう説明すればいいだろうと悩んでいたところ、少女が意を決した様子で近づいてきた。
『それ、たべてもいい?』
しかも、少女が喋ったのは、この国の言葉ではなかった。
その国の言葉を勉強したのはまだ学生の頃のことで、遠い記憶を必死に思い出して会話を繋げる。
「『焦げているけれど食べるかしら』で、通じるかしら」
自分でも怪しげな文法だと思いつつ同じ言葉で返すと、少女の顔が輝いた。
『! いい。ありがと』
できるだけ焦げの少ないものを選び取り、少女に差し出した。
先ほども花のようだと思ったちいさな手が、フルールが焼いた、いびつな形の焦げたクッキーを掴んで、頬張った。
『うれし。おいし』
『おいしい? 嬉しいわ』
目を輝かせて食べていた少女の瞳は、綺麗なアイスブルーをしていた。
丸みを帯びた頬が動く様に、フルールの顔が弛んだ。
『これね、私が作ったクッキーなのよ。可愛いあなたに食べて貰えて嬉しいわ』
そういって差し出したクッキーを見つめる少女の瞳が見開かれた。アイスブルーの美しい瞳へ、涙の膜がゆるゆると張っていった。クッキーの食べ滓が残る紅い唇が、わななく。
そうしてついに、溢れてしまった涙がまあるい頬を伝い落ちていくのを、フルールは信じられない気持ちで見つめた。
『ご、ごめんなさい。おいしくなかったわね。お腹、痛くなっちゃった?』
フルールは必死に、異国の言葉で謝った。幼い子供にはやはり焦げは毒だったのだと、己の浅慮さに慌てる。
医者を呼びに行こうか、それとも少女の両親を探す方が先だろうか。
そういえば、この異国の少女はどこから来たのだろうかと今更ながら困ってしまった。
『ごめんなさい。いますぐお医者様に見せてあげるからね』
ひとり暮らしのこの家では、何もかも自分で行わなければならない。
けれど、こんな幼い子供が私の作ったつたないクッキーのせいで泣いているというのに、置いて探しに行くことなど私にはできなかった。
「誰かー! だれかいませんか!」
『ちがう、の。だいじょうぶ』
大きな瞳に涙を湛えた少女が、何度も首を振る。
フルールを安心させようとしているのだろう。健気にふるまう少女が、フルールの涙を誘う。
自分から強請って貰ったクッキーが原因で、体調が悪くなったと言えないのだろう。
誰の目にも入らない生活を求めたのはフルールだ。
けれど今は、大きな声で助けを呼んだ。少女の身体を抱き寄せる。
『大丈夫よ。私が助けるわ。だいじょうぶ』
その言葉に根拠などなかった。それでもフルールにとってそれは本心だった。
抱え上げて、自らの足で医者の下へと運ぶのだ。
『……まま』
幼い声が、母親を呼ぶ。フルールの胸がぎゅっと痛んだ。
ちいさな体でも、フルールには重すぎた。家事をするようになって体力がついてきたという自信はあったけれど、筋力という意味ではまるで足りていないのだ。
けれど、落す訳にはいかない。
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