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ダンジョン出現

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「20##年、今から10年ぐらい前だな。この地球に突然ダンジョンが生成された。当初は各国で混乱が巻き起こったが、ダンジョンに生息する魔物から得られる魔核やドロップアイテムに価値があると認められてからはダンジョンと共存する道を歩み、冒険者連盟が生まれた。ダンジョンの出現と同時に人類は覚醒の宝珠というものを介して特殊な力を手に入れることができるようになった。例えば世界ランク一位の南雲登輝さんは特にその圧倒的なパワーで有名だな」

白いボードに中居先生の話している内容がひとりでに描かれていく。

あれは確かどう言う原理だったか、何か魔物のドロップアイテムをいくつか利用して発明されたんだったっけ?

そう要らぬことを考えているとチャイムの音が鳴り響く。

「これで授業は終わりだが...鳥原、終礼後に職員室に来てくれるか」

「あ、はい。わかりました」

の件についてのことか。

俺の名前は鳥原鷹斗。高校三年生の18歳だ。頭がいいわけでも顔がいいわけでも運動神経がいいわけでもない平凡な男、と言う評価がお似合いだな。

いつも通りの終礼が終わり、荷物を持って職員室へ向かおうとする。

「鳥原くん」

「っ!?......白井さんどうしたの」

白井陽香、クラスの委員長で清楚系美人なスクールカーストトップの子だ。

黒い腰あたりまである髪が少し開いた窓から漏れ出る風に揺られている。

相変わらず美人だな。

「さっき先生に呼ばれていたけど、何かあったの?」

「あーー。......別に何かやらかしたとかじゃないから大丈夫だよ。ちょっとした相談みたいなやつだから」

「そうなんだね!そ、それでもしよかったらなんだけど、今度----」

「陽香~~!あーちんが激おこぷんぷん丸になって校門で待ってるよ!」

「え!?鳥原くんごめん、また明日!」

「あ、あぁ。また明日」

白井さんがものすごい勢いで荷物を持って廊下を走り抜けていく。

さすが陸上部エース。速さの格が違う。

気を取り直して職員室に向かうと、中居先生に一枚の紙を渡される。

「ほい、【冒険者登録許可証】だ。しっかし、本当に冒険者になるのか?」

「はい、以前から決めていたので」

冒険者になるにはいくつか制限がある。

18歳以上であること。登録料1万円を払うこと。他にもさまざまな規則があったりするが、ここでは割愛しよう。

ついこの間俺は18になったのだが、俺のいる大野宮高校では許可証がなければ冒険者登録が禁止されているため、中居先生にお願いしていたのだ。

「冒険者ってのは華々しい一面ばかり持ち上げられているが、さまざまなリスクがある。それを知ってもなりたいのか」

「はい」

中居先生は大きく息を吐く。中居先生は知り合いが冒険者だったが何年か前にダンジョンで死亡したらしい。だからこそ俺にここまで注意するのだろう。

「じゃあ、失礼します」

「あぁ、気をつけろよ」

許可証が入ったバッグを再び手に持ち帰り道を歩く。

丁度明日からは三連休なので、時間は山ほどある。

これからのことを考えながら、俺は夕焼けで照らされた歩道を歩いた。



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