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最強騎士に愛されてます
最強騎士に愛されてます-1
お母さん、お父さん、兄さんへ。
今日は、貴方たちに二つのご報告があります!
なんとこの度、おれは公務員になりました!
公務員という言い方で正しいのかは分からないんですが。でも、国家直属の由緒正しいお仕事で、地域のため人のために頑張っています。
まさかこのおれがそんなところに就職できるなんて、思ってもみなかったでしょう。おれも思っていませんでした。
というかそもそも、出かけた先でバイクに撥ねられて異世界に転移するなんてこと、思ってもみませんでした。しかもその異世界が、元の世界でプレイしていたRPGゲーム『チェンジ・ザ・ワールド』の世界だというのだから本当にビックリです。
しかも、おれがこの世界で気軽に行ったポーション開発のせいで、『チェンジ・ザ・ワールド』内の様々なイベントが改変される羽目になってしまうとは……!
あ、すみません、ちょっと話が脱線しちゃいましたね。
こほん。では、気を取り直してもう一つのご報告です!
――今おれは、子供を人質に取った山賊と対峙しています。
「その武器を捨てな、兄ちゃん! このガキがどうなってもいいのか!」
筋肉質で髭モジャの男が、口から唾を飛ばして怒鳴る。
男は手に三日月刀を持ち、その切っ先を自分の抱える少年に突きつけている。少年は目に涙を浮かべて顔を蒼白にしていた。
「ひっ、ひっ……!」
「静かにしろ、ガキ! 言っておくが、テメェも仲間を呼ぼうなんて思うなよ! このガキの鼻が削ぎ落とされるところが見てぇんなら別だがな!」
「くっ……!」
あー、もう、どうしてこんなことに!?
頭を抱えたい気持ちを堪え、震えそうになる足を叱咤して、おれはなんとか目の前の男を睨む。
さて。何故こんなことになっているかというと――おれの就職先である黒翼騎士団に、今回、街道で商隊を襲っているという『ワッソ山賊団』の討伐任務が下されたのが始まりだ。
山賊のアジトは山間にある森の中だという情報を得た後、斥候がそこを発見することに成功した。そして、ガゼル団長率いる黒翼騎士団は、夜が明けると同時にアジトを強襲したのである。
あ、騎士団って公務員みたいなもんだよね? やったね、憧れの安定性ナンバーワンの職業だぜ!
「さっさとその手の剣を捨てろ! それともこのガキの――」
「っ、分かった。これでいいんだな?」
まぁ、おれが直面しているのは安定とはほど遠い事態だがな!
男が手にした三日月刀の切っ先を子供の頬にぷつりと突き刺したのを見て、慌てて刀を鞘ごと放り捨てる。
が、焦って投げたせいか、刀はなんとほぼ真上に飛んでいってしまった。
あっ、と思った瞬間には、もう遅かった。
刀はおれの頭上にある大木の枝に引っかかってしまったのである。その高さはおよそ三メートルほど。もう、木に登らなければ届きそうにない。
「へぇ、気が利くじゃねぇか。それならどうやったって、もうテメェの手には届かねぇからな」
男が黄ばんだ歯をむき出してニヤリと笑う。
やっべー……おれの馬鹿……。さらに状況を悪くしてどうするよ!?
せめてどっか地面の上に投げておけば、隙をついて刀を取りに行けたかもしれないのに!
あれじゃあもう取れないじゃないか! このノーコン!
そう内心自分を罵りながら、おれは男をきつく見据えた。
そして、なんとか場をしのごうと口を開く。
「お前は山賊、ワッソだな?」
「ふん、騎士団員サマに名を知られてるとは、このオレ様も有名になったもんだぜ。おうよ、オレ様がワッソよ!」
男の言葉におれは目を見開いた。
あれっ? このおじさん、ワッソ山賊団の下っ端とかじゃなくて、ワッソさんその人なの?
いや、今おれも「ワッソの一味だな?」って聞こうと思ったところで舌を噛んじゃって、「一味」って単語が抜けちゃったから、変な聞き方になっちゃったんだけど……
あっ、これが嘘から出たまことってやつ? ちょっと違うか……って言ってる場合じゃない!
じゃあこの人、ワッソ山賊団のボスじゃん!
なんでそんな人がこんなところに一人でいるんだよ!?
「何故、お前はこんなところに一人でいるんだ?」
「決まってるだろう! この山賊団はもう壊滅だが、人質を盾にすりゃお前らもそう簡単にオレ様に手出しはできねぇだろう? バドルドのアニキの仇討ちができねぇのは癪だが、なんとしてもオレ様だけは生き延びてやる!」
どうやらまとめると、この山賊ワッソは、騎士団にアジトを強襲されて勝ち目がないと見るや否や、捕らえていた人質を連れて、ここまで一人で逃げ延びたらしい。
んん? でもおかしいな。
アジトには山賊ワッソと名乗る人間が別にいたはずだ。そいつを含む山賊のメンバー全員を捕縛することに成功したので、おれは一安心して「ふっふーん、今日は後方待機だけで終わったからよかったぜ! まだ後片付けもあるみたいだけど、ちょっとトイレに行きたいから今のうちに済ませてくるか!」とご機嫌で部隊からこっそり離れて、一人でお花摘みに行ったのだ。
そして、帰る際にうっかり道に迷い、人影を見つけたので「木こりの人かな? ちょっと道を尋ねよう!」と思って声をかけたところ、なんとこの山賊ワッソさんだったわけであるが……
いやぁ、勝手な単独行動をしてはいけないといういい教訓になったね!
マジでごめんなさい、もうしません!
「……つまり、アジトにいたワッソを名乗る男は、お前の替え玉というわけか?」
「ああ、あいつはちっと頭が弱くてな。オレ様が『ワッソを名乗ってちょっとの間、大騒ぎしていてくれ。騎士団はボスを名乗るオメェを簡単には殺さねぇはずだ。その間にオレは武器と火薬を取りに行く』って言い含めておいたのよ」
「ふむ、なるほどな」
……この人、山賊なのにすっごく頭いいな!
少なくとも、こんなところで道に迷ってるおれよりは遥かに頭がいい!
「だが、まさか替え玉を見破って、オレ様を追跡してくるヤツがいるとはなぁ?」
す、すみません。ただの偶然です……
そちらが人質さえ取ってなければ、「木こりの方かな? 朝早くからお疲れ様でーす!」と思って道を尋ねるところでした……
頭を抱えたくなると同時に、ふと、おれはあることに気がついた。
今このワッソって人、「バドルドのアニキ」って言わなかった?
「バドルドというのは、〝連撃〟の二つ名を持つ海賊バドルドか?」
「ふん、そうだ。オレらは海賊バドルド一味の生き残りよ。アニキを監獄送りにしたテメェら黒翼騎士団には恨みがあるが……チッ、まぁこの状況じゃオレが逃げ延びてテメェらの鼻を明かすことでよしとするかね」
海賊バドルド――それは、おれにとっても非常に印象深い名前だった。
あのバドルドとの戦いこそが、おれが黒翼騎士団の皆に出会うきっかけだったのだから。
しかし、そうか……このワッソ山賊団はあの海賊一味の残党だったのか。
そういやあの港町からもけっこう近いしね、この辺り。
「まぁ、アニキの仇討ちとして、テメェのその綺麗な顔をずたずたに切り裂いてやるぐらいはしてもいいかもな。どの道、オレ様の後をつけられちゃ困るんだ。まずはその真っ黒な目を――」
「無様なものだな」
「なに?」
なんだか物凄く不穏なことを言いながら近づいてきた山賊ワッソを制止するため、おれは咄嗟に口を開いた。
ワッソはぴたりと足を止めると、怪訝そうな表情を向けてくる。
よし、会話に乗ってきた!
こうやって時間稼ぎをしていれば、おれがいないことに気がついた騎士団の皆が捜しに来てくれるかもしれない!
それにこうしておれに注意を引きつけておけば、少年に危害を加えられる可能性も少なくなるはずだ……!
「ふっ……海賊バドルドの部下としては、無様なものだと言ったんだ」
「なんだと!? テメェにアニキのなにが――!」
「あの男は悪党だったが、少なくとも子供を人質にするような真似はしなかったぞ」
「っ!」
「それに、部下を見捨てて自分だけ逃げるような真似もしなかった。絶対に勝ち目がなくとも、最後まであの男は戦い抜いた。たった一人でな」
「……っ、オレは……」
それまでの威勢がなくなり、唇を戦慄かせて視線をさ迷わせるワッソ。
震える唇は「アニキは、でも」「だってオレはそもそもボスになれるような器じゃなかった」といった言葉をぼそぼそと呟いている。
今のうちに少年が逃げてくれないかと思ったものの、少年は目の前の三日月刀を涙目でぷるぷると見つめるだけで、逃げることはできそうにない。
くっ、仕方がないか……! えっと、えーっと、あとはなにか時間稼ぎできそうな話題は……!?
「……ん? 待てよ」
すると、そこでワッソがなにかに気がついたような声をあげた。
「なんでテメェが、アニキの最後の戦いを知っているんだ……?」
――――あっ。
「じゃあ……テメェがアニキを捕まえたのか!」
そして、一気に激昂したワッソは憤怒の表情で怒号した。
そりゃそうだよねー!
だが、よかったこともある。慕っていた人の仇を目の前にしたワッソは、頭に血が上ったようで、捕らえていた人質を放して地面に突き飛ばしたのだ。そして、手にした三日月刀の切っ先をおれに向けて突っ込んでくる。
もしかするとそれは、おれが語ったバドルドの最後の戦いぶりに倣った行いだったのかもしれない。だが、こんな状況でそれを確認する余裕もない。
ワッソは怒りで顔を真っ赤にして、三日月刀で切りかかってきた。おれは既のところでそれを躱す。
――すると、その瞬間だった。
ワッソの斬撃による衝撃が伝わったのか、それとも刀の意思であったのか――おれが先程放り投げ、頭上の枝に引っかかっていたはずの刀が、するりと地上へ落下したのである。
そしてそれは、おれの手の中にするりと滑り込んできた。
「なっ……!?」
ワッソが驚きに目を見開く。
だが、びっくりしているのはおれも同じだった。というか、ワッソ以上におれの方がびっくりしたかもしれない。
ベストタイミングすぎて、マジで怖いなこの刀!
おれの手の中に刀が滑り落ちてきた瞬間、落下の反動で刀身はするりと鞘から抜けていた。
鞘から完全に抜けきると同時に、右手は素早く翻り、白刃を閃かせる。
「ハァッ!」
「ぐ、うぅっ……!」
放たれた刃は、ワッソの上体を切りつけた。
胸を切りつけられたワッソは苦しげに呻くと、カランと音を立てて三日月刀を地面に落とした。その両手は自分の傷つけられた胸元を押さえ、額からは脂汗が噴き出している。悔しそうにおれを睨みつけているものの、最早、彼がこれ以上の抵抗ができないのは明らかだ。
「――タクミ!」
すると、背後からおれの名前を呼ぶ声が聞こえた。
ついで、ガサガサと木々をかき分ける複数人の足音が近づいてくるのが聞こえる。
声からして、騎士団団長のガゼルだろう。おれがいないことに気がついたのか、はたまたアジトにいたボスが替え玉だったことに気がついたのか、こちらに向かってきてくれているようだ。
とはいえ、おれはそちらに顔を向けることはできない。
何故かというと――おれが手にしているこの刀のせいだ。
この刀は、『チェンジ・ザ・ワールド』の世界でお馴染みだった、呪いの武器『カースドコレクション』シリーズの一つだ。
その特性は様々だが、この呪刀は絶大な力を使い手に与える代わりに、二種類のデメリットをもたらす。
そのうちの一つが、戦闘中の行動制限だ。
戦闘中、この刀を抜いている間は使い手の意思による行動はできず、まるで刀が導くようにして目の前の敵にガンガン切りかかっていくのである。先程ワッソを袈裟斬りにした一連の動作も、おれの意思ではなく、右手に持った刀がおれの身体を操っていたものだ。
しかし、このデメリットはおれにとってはメリットでしかないので、こうして愛用させてもらっている。
ただの引きこもり系な一般人であるおれは、戦うことなんてまったくできないからだ。だから、刀がおれの身体を使って勝手に戦闘を行ってくれるのなら、こんなにありがたいことはない。
まぁ、そういうわけで、おれは背後から来る騎士団の皆を振り向くことはできなかった。
まだ敵が目の前におり、刀を鞘に収めるまでの間は呪刀の支配下にあるからだ。そのため、おれは地面に蹲ったワッソに、刀を突きつける体勢で強制的に停止させられている。ワッソが再びおれに向かってくれば、また呪刀は先程のようにおれの身体を操って「ヒャッハー!」と言わんばかりにノリノリで戦い始めるだろう。
……なら、さっさとこの刀を鞘に収めればいいじゃんという話なのだが、もう一種類のデメリットがあるのでそれもできないのである。
はぁ……
戦闘終了後のデメリットさえなければ、これほどいい武器もないんだけどなぁー……
◆
「ひっ……ぁ、あァッ! ま、またイってるから、ガゼルッ……!」
「まだまだ、だろ? タクミのここは物足りなさそうだぜ?」
「そんなことなっ……ひぅッ! ぁッ、フェリクス、そこ、もうやめッ……!」
「駄目ですよ、タクミ。これは独断専行した貴方へのお仕置きでもあるのですから」
快感がまるで怒涛のように押し寄せてくる。
おれは今、二人の男性と、在籍している黒翼騎士団の団員用宿舎――その副団長専用の個室にいた。おれのような下っ端団員の相部屋とは違い、騎士団内で役職が上の人間は個室が貰えるのだ。
備え付けの家具も自分の趣向で取り揃えることができ、落ち着いた調度品の数々は、この部屋を使っている人物の趣味の良さをそのまま表していた。
だが、今のおれに部屋の内装について注意を向けている余裕はない。
今この間にも、おれのナカに埋まったガゼルの陰茎が、がつりと最奥を突き上げているからである。
「ッくあ、ンッ……! ガゼルっ、ぁ、そこ、気持ちよすぎるから、だめだって言って……ひぁっ!?」
「タクミ、そんな可愛いこと言うのは逆効果だぞ?」
ベッドの縁に腰掛けて、おれを膝の上に乗せた状態で背後からおれを突き上げるガゼル。
彼――ガゼル・リスティーニは、ワインレッドの髪に金瞳を持つ、がっしりとした体つきの美丈夫だ。
彫りの深い精悍な顔立ちと、逞しい筋肉のついた肢体は雄々しく、同性ながら思わず見惚れてしまうほどだ。
さらには、このリッツハイム魔導王国にある黒翼騎士団の団長でもあるというのだから、天は二物を与えまくりじゃなかろうか。おれにも少し分けてほしい。
おれは首だけでガゼルを振り返って、涙ながらに嘆願した。しかし、願いが聞き入れられるどころか、ガゼルは肉食獣のように瞳をぎらつかせ、ニヤリと笑うと、より一層激しく突き上げる。
「ぁ、ひっ、ぁあッ……んぅ!」
「大体、これはフェリクスの言う通りお仕置きだからな。俺も手加減してやるわけにはいかねェんだよ」
ガゼルはすっと目を細めると、顔を寄せてべろりと耳に熱い舌を這わせる。
舌先が耳の中に這い、くちゅくちゅという淫猥な水音がダイレクトに鼓膜に響いた。
「ったく。ボスの替え玉に気づいたのは流石と褒めてやりてェが……なんでそこでお前は一人で追跡に行っちまうかね? お前が一人でワッソと向き合ってた時、俺がどれほど肝を冷やしたと思ってんだ?」
「あ、あれは……っ、んぅッ!」
いやいや、あの状況についてはおれとしても不本意すぎる状況だったから!
まぁ結果としては人質の少年も無事に助けることができたし、ワッソも捕縛できたんだから、万々歳と言えなくもないけどさ!
そう抗議をしたいのだが、ガゼルが最奥を陰茎でごつごつと突き上げつつ、外耳に執拗に舌を這わせるため、口から漏れるのは喘ぎ声ばかりで、ちっとも説明ができやしない。
しかも、おれを攻め立てるのはガゼルだけではないのだ。
「ガゼル団長の言う通りです。後方の班に配属されていたはずの貴方がいつの間にかいないと思ったら、森の奥から少年が私たちのところへ逃げてきて……『黒髪のお兄さんが助けにきてくれた。今、その人が一人で山賊と戦ってる!』と言われた時は、本当に、本当に驚かされました……」
「っ、フェリクス……」
ベッドの足元、床に膝をついて、じっとおれを見上げるフェリクス。
彼は、フェリクス・フォンツ・アルファレッタ。黒翼騎士団の副団長でもあり、この部屋の主でもある。
さらさらの金髪に紫水晶の瞳を持つ彼は、白皙の貴公子と呼ぶにふさわしい。
そんな彼が眉を八の字にして悲しそうにおれを見上げてくる姿は、なんだかゴールデンレトリバーが耳と尻尾をしゅんと垂らしている様を連想させる。その様子に、さすがのおれも「うっ」と罪悪感を覚える。
ま、まぁ、おれが一人で勝手な行動をしたのは確かなんだよなぁ……
「っ、すまなかった……その、二人に心配をさせるつもりではなかったんだ」
「……分かっています。優しい貴方のことですから、大人数で行けば、追い詰められたワッソが人質に危害を加えると考えたのでしょう?」
「っ、う、うん?」
「貴方一人だけなら、ワッソも油断するだろうと思ったのですよね?」
「ち、違うっ……おれは、そんなつもりはなかった。ただ、自分勝手な行動で、隊を離れただけだ」
フェリクスはおれの言葉に寂しそうな微笑を浮かべると、「本当に貴方は優しいですね」と呟いた。
ん、んんん!?
おっかしいな!? これ、ちゃんと話通じてる!?
なんか微妙に意思疎通ができてない気がするんだが……!?
っていうか、もしも替え玉や人質の件に気づいてたら、一も二もなく皆に相談してたよ!?
それが普通だよね!? どこの誰が「よーし! おれ一人で、ちゃっちゃと山賊の残党退治に行ってくるぜ!」なんて思うんだよ!?
…………いや、でもガゼルやフェリクスなら、ワッソ相手に一人でも楽勝そうだもんな。
だからって自分たちの基準をおれに当てはめないでほしい、頼むから。
「それでも、タクミはもっと自分を大事にしてください」
「ぅあッ……ん、ふぅッ……!」
「何度も言いますが、もっと私やガゼル団長に頼ってください。タクミは自分一人でなんでも背負いすぎですよ」
いや、あの、残念ながらおれはこれ以上ないってくらいに自分を大事にしまくってますが……!
フェリクスの言葉を否定しようかと思ったものの、その考えはすぐにかき消えた。
おれの足元に膝をついたフェリクスが、おれの陰茎にその優美な指を巻きつけて、幹を擦り始めたからである。反対の人差し指で、敏感な先端をぐりぐりと攻め立ててくる。
「ッ、ひぅっ!?」
「おっ、今すっごいナカが締まったぜ。気持ちいいか、タクミ? よかったなァ、弄ってもらえて。そこ強く擦られるの、好きだもんな?」
ガゼルは喉の奥で笑うと、低く囁いた。凄まじい羞恥に襲われて、おれは首を必死に横に振る。
「ぁ、やだっ、フェリクス、それ強すぎるッ……ァあッ!」
「……可愛い声だ。いつも冷静な貴方がそういう声をあげるのを聞くと……我を忘れそうになりますね」
「おいおい、フェリクス。本気でいじめてやるなよ?」
「ふふっ、分かっておりますよ」
快楽が電流のように背筋を何度も走り抜け、その度にビクビクと身体を震わせ、胎内に埋められたガゼルの陰茎をよりいっそう強く締めつける。
媚肉が蠢き、自分の中にある彼の存在をまざまざと感じて、かあっと顔が熱くなる。
正直、あまりにも快楽が強すぎて辛い。身体中どこを触られても敏感に反応し、全てが愉悦に変わっていく。
いっそこのまま気を失えたらどんなに楽だろう。
けれどもおれの身体は心を裏切って、二人から与えられる愛撫に歓び、先端から透明な先走りをとろりと溢れさせ続ける。
ああもう、やっぱりあの呪刀、使うんじゃなかった!
でもおれが戦うにはあれしかないんだよなぁ……
そう。何故おれが、黒翼騎士団の団長と副団長である二人とこのような行為に及んでいるのかというと、おれの持っている刀がその要因なのだ。
あの呪刀が使用者に与える一つ目のデメリットは、知っての通り戦闘中の自由行動不可。
目の前の敵を屠り、刀を鞘に収めない限りは「ヒャッハー! ガンガン行くぜ!」という状態がデフォルトとなり、刀が使い手を操って戦闘を行う。
そして二つ目のデメリットは、戦闘終了後、使い手に状態異常を与えるというものだ。
戦闘が終了し、刀を鞘に収めると、使い手に麻痺や発情などの状態異常を一定時間与えるのである。
…………ええ、発情デス。
そう。このヒャッハー呪刀のデメリットにより、おれは任務が終わってこの騎士団の隊舎に戻ってきた後、強制的な発情状態に置かれてしまったのである。
あー、もう。せめて麻痺状態ならベッドで寝てられたんだけどな!
しかし、発情状態の場合は相部屋となるのでそうはいかない。
おれはフラフラと部屋を出て、厠にでも行こうとしたところをガゼルに見つかってしまった。そして、ガゼルがフェリクスに声をかけてこの部屋に連れてきて、あれよあれよという間に三人でこの行為に至り……というのが今の状況である。
ちなみに、ガゼルとフェリクスはこの呪刀のデメリットのことは知らない。
この戦闘後の状態異常は、体質的なものだと思ってくれているみたいだ。おれとしても、この呪刀のデメリットのことを話してしまうと騎士団を強制退団させられるかもしれないので、二人の勘違いを正さないままでいる。
……嘘をついているみたいで、かなり罪悪感があるけど……!
でも、おれの目的のためには背に腹はかえられない。
――おれの目的。
それは、おれが所属している黒翼騎士団の壊滅イベントを回避することだ。
おれが元いた世界でプレイしていたRPGゲーム『チェンジ・ザ・ワールド』の中盤で……黒翼騎士団は壊滅し、たった一人を除いて全ての団員が死亡してしまうのである。
それはゲーム内の必須イベントであり、どうしても避けられないものだった。
けれど、ここはゲームじゃない。
どんなにゲームとそっくりな世界で、キャラクターそのものな人たちがいるとしても、ここは紛れもなく現実なんだ。
現実である以上は、きっと、そのイベントを回避する手段が、皆を助けることができる手段があるはず。
それを見つける前に、おれは黒翼騎士団から脱退するわけにはいかない。
「タクミ、考え事ですか?」
「ひぁっ!?」
「なんだ、随分余裕があるじゃねェか」
「あ、やめっ……ん、あァっ!」
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