異世界勘違い日和

秋山龍央

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第7話

ちょ――ちょっと待って。
なんでおれ、今、ヴァンにキスされてるんですかね!!!?

「んっ……ふ、……」

ぬるり、と腔内に入ってきた肉厚の舌。その舌先がまるで蛇みたいにおれの舌に絡みついてくる。熱い舌先に絡め取られるたびに、腰からぞくぞくとしたものが駆け巡ってきて、力が入らない。
気がつけば、密着してくる厚い胸板を押し返そうとしていた手は、逆に、ヴァンにすがりつくようにシャツを掴んでいる状態になっていた。

「はっ……ヤマト……っ」
「っ、ま、待てヴァン。おれは……」
「待てねェ。俺を煽ったのはお前だろ?」

えっ? ど、どういう意味? おれが悪いってこと?
そ、そうか……よく分からないけど、俺が悪いのなら仕方がないか……。いややっぱり仕方なくない! マジでなんでこういう状況になったの!?

も、もしかして、さっきのおれのアレのせいか?

なんか身体がぞくぞくして熱くなるのがとまらないし、下半身が妙に重いし、めちゃくちゃ不安になる状態のところに、なんでかヴァンがどっか行っちゃおうとするから心細さマックスのおれは思わず「行かないでくれ! 頼むから、何もしなくてもいいから、お願いだから一人にしないでそばにいて!」って感じで思わずしがみついちゃったんだけど。
今思い返すと酷すぎるな、自分……。乳幼児の方がまだマシだよ……。

「っ、ぁ……」

そうこう考えている内に、ヴァンがおれに口づけたままひょいっと身体を抱き上げ、そしてベッドへと運んだ。ベッドに横たえられたおれの上に、ヴァンが伸し掛かってくると、木製のベッドがぎしりと軋んだ音を立てる。

「ヴァン、おれは……」
「心配するな、優しくしてやる。……それに、これは俺の責任だからな」

ベッドに横たわった状態でヴァンを見上げると、紺色の瞳がおれを見下ろしてきた。夜空の一番深いところを切り取ったような、深い紺碧色の瞳だ。そんな優しげな眼差しに、労るように見つめられてしまい、ちょっと胸がきゅんとしてしまう。
う、うわぁ……ヴァンって本当に男前だな。
おれは元の世界では同性に恋愛感情を抱いたことはなかったけどさ。でもなんか、こんな格好いい年上の男性に、まるで壊れ物を扱うような感じで見つめられると、ドキドキしてしまう。

「ここ、もう勃ってるな」

ヴァンがそう言って、おれの内腿に掌を這わせる。
えっ、と思っておれは自分の下半身を見ると、確かにそこはズボンを押し上げて布越しに自己主張をしていた。

「っ、……!」
「症状的には強壮効果に感覚の鋭敏化、そして弛緩効果か……。あまりいいモンじゃねェな。明日は少し辛いかもしれんぞ」
「強壮効果……」

強壮効果に感覚の鋭敏化? 症状?
そういやさっきから、ヴァンはなんかよく意味の分からないことを言ってるんだよな……。さっきのウッドデッキにいた時も……確か、「発情系」がどうとかって言ってたっけ?
そういえばおれの身体のこのぞくぞくする感じ、おれがあのお店のお酒を飲んでから急激に出てきたんだよな……。もしかしておれのこの症状は、あの店が原因なのか?

「あの酒……」
「なんだ? 酒はもう懲り懲りか?」
「……ふっ、そうだな」
「はは、そう軽口を叩ける余裕があるならまだ大丈夫そうだな。……お前が発散しきれるまでは俺が付き合ってやるが、俺の理性が保つかは保証しきれんからな。俺のタガが外れそうになったら止めてくれ」

――なるほどな。
ようやく状況が掴めたぞ。やはり、おれのこの突然のぞわぞわ症状は、あの店のお酒が原因らしい。

あのお店は元の世界でいうところのキャバクラ……女性の働く風俗店だった。
おれには誘いは来なかったが、もしかすると、あのお店ではエッチな肉体的営業も普通にやっているのかもしれない。
そのため、あのお店で振る舞われているお酒には、高い強壮効果があるのだろう。もしかすると、漢方薬みたいなものが混ぜられているのかもしれない。現代で言うところのバイアグラみたいなものだろうか。
だが、この世界の人々には、その強壮効果はそこまで強い威力を発揮することはないようだ。何故なら、おれ以外の三人の男性たちは平然とした顔をしていたからである。このような症状が出ているのはおれだけだ。

つまり、事の次第はこうだ。
お店側が強壮効果のあるお酒を客に出す。それをおれたちが呑む。
しかし、異世界から来たために、お酒の強壮効果への抵抗力が薄かったおれだけが、三人と比べてひどい症状が出てしまった……というわけだ。

そして、ヴァンがおれにキスをして、なおかつ今、現在進行系でおれの服を剥いている理由……。
それはヴァンが、おれのこの症状に対して、責任を感じてしまっているからだろう。「コイツは外人なんだから、あらかじめ酒を呑みすぎるなって注意してやれば良かったぜ……」ってところか? ヴァンがさっき、責任がどうこうって自分から言ってたから間違いないだろう。

いや。でも、そうだとしたら――おれは今、ヴァンにものすごく甘えてしまっているんじゃないか?

お酒の強壮効果のことだって、おれがもっと気をつけていればよかったのに。異世界の飲食物なんだから、おれももっと気をつけるべきだったのだ。それがうっかり、女の子に囲まれてウハウハ状態で調子に乗って、酒をガンガン飲んでしまうからこんなことになったのだ。

それなのに、ヴァンの責任感に漬け込むような真似をして、自分の性欲発散をヴァンにやらせようとするなんて……!
おれはなんて最低な男なんだ!

そう考えると、このままヴァンに甘えているわけにはいかない。
というか自分の性欲発散くらい、自分でなんとかしなければマジで。
そうこう言う間に、だいぶおれの服が脱がせられてるんだけどね! もうシャツは完全にどっかに言ってるし、ジーンズは前がくつろげられてる状態だし! 
た、対面している人間の服をこんなに手早く脱がせられるとか、すごい技だな……。なんかこう、百戦錬磨というか、ヴァンのこなしてきた経験数を感じさせるぜ……。

「っ、ヴァン……その、さっきはああ言ったが、やはりおれは……っ、ひぁっ!」

へ、変な声出た……!

ヴァンを止めようと思って声をかけたものの、それは悲鳴に変わってしまって、最後まで言い切ることができなかった。というのも、厚い生地の上からおれの股間に掌を這わせていたヴァンの手が、そろりとジーンズの中に入りこんできたからだ。
まだ下着一枚を隔てているが、そのゴツゴツした節くれだった指が入ってくる感触に、思わず声が出てしまった。自分の声に驚いていると、ヴァンが優しげな声でおれを宥めるように話しかけてきた。

「俺には気を遣わなくても構わん、ヤマト。お前は、俺と俺の部下の恩人なんだ。俺は、お前のためにできることがあるなら何でもしてやりてェと思ってる」
「ヴァン……」
「それに、俺も案外楽しんでるからな。まァ、何が言いたいかっつーと、どうにもならねェ状況なら、お互い楽しんだ方が得じゃねェかってことさ」

そ、そうなのかなぁ?
うーん、でもヴァンがそう言ってくれても、やっぱりおれが甘えすぎのような気がする……!
命を助けたとは言っても、おれ的にそれってこの帝国に連れてきてもらったことで相殺されてるし。そもそも命の恩人だからと言ってそれを傘に来て、下の世話をヴァンに任せていいのか?

でも、そうは言っても、確かに今のおれが身体的にすごく辛い状況なのは確かなんだよな……。正直に言うと、だんだん身体を動かすのも辛くなってきた。自分の腕がまるで鉛みたいに重くて、持ち上げることすら億劫だ。そのくせ、下半身の熱はどんどんと昂ぶってくる。

……いくら夜のお店とは言えど、こんな凄まじい強壮効果のあるお酒を客に提供するのはどうかと思うんだが……。風俗営業法とかどうなってるんだ、この国?
でも、見た感じヴァンは何ともないみたいだしなぁ。やっぱり異世界人のおれだからこんな風になってるのか。おれも慣れていけば平気なのかな?

「……ヤマト……」
「ぁ、ヴァン……っ」

おれが悶々と考えている合間に、ヴァンの手がおれの下着を下半身からずるりとずらしてしまう。
そして、あらわになってしまった、頭をもたげている陰茎の先端部分を、人差し指でカリ、とひっかかれた。

「ぁ、ッ! ……っ、ァ、ふっ」
  
かと思えば、節くれだった親指と人差し指で作った輪の中にカリ首の部分をが捉え、ゆっくりと上下する。
強壮効果のせいで過敏になっているそこは、すぐに透明な露をどんどん溢れだし、シーツにはしたないシミをつくり始めた。

「んんっ……ぅ、ぁ」

おれの陰茎をいじくる右手はそのままに、ヴァンの左手がおれの胸元に手を這わせ始めた。
人差し指で左の乳輪の部分をなぞってくる。
くすぐったいような、むずむずとする快感に身じろぎすると、指先が乳首の先端に触れてきた。
自分で触ったことすらない場所を、他人の指で触れられる未知の感覚に、思わず身体がびくりと跳ねた。

「ヴァ、ヴァン。なんでそんなところ……っ」
「うん? ここを触られるのは初めてか?」

初めてに決まってますけど!?

なんでそんな不思議そうな顔で……あっ、そうか。そういやこの世界、同性愛とか普通にありの世界なんだよな。道理でヴァンもおれの身体を触るのにあまり嫌そうじゃないわけだ。まぁ、ヴァンが同性との触れ合いに拒否感を持っているタイプの人間だったことは、この状況では幸いだったと言っていいかもしれないが。

「へぇ、ヤマトはあまりネコ役はなったことがないのか? 普段はタチか?」
「っ……いや、おれは……」
「初めてっていうんなら、俺の役得だな。まぁ、下ばっかり触られても辛いだろうからよ。気を抜いて楽にしてな」

……いえ、その、ネコとかタチとかという前に、おれは童貞なんですけど……。
なんでヴァンはおれが経験者の前提で話を進めるんだ。持つ者には持たざる者の気持ちは分からないとはこういうことだろうか? なるほどな、世の中から憎しみと戦争が絶えないわけがこんな所で分かってしまった。

そんな会話の合間にも、ヴァンはおれの左乳首をくりくりといじるのを止めなかった。
その左乳首が真っ赤に尖り始めると、ヴァンはようやくそこを離してくれた。しかし、なんと今度は右乳首の方に指先が伸びてくる。

「っ、ヴァン……! ま、またそんなところを……」
「なんだ、嫌か? でも、こっちはそうは言ってないぜ?」

身体を屈めておれの耳元で囁きながら、ヴァンが陰茎をいじっていた指先を、おれの目の前に持ってくる。そこは陰茎からあふれた透明な露で、ねっとりと糸を引いていた。

「でも、あんまり焦らすのも可哀想だからな。そろそろちゃんと触ってやるよ」

ヴァンの言葉に思わず身じろぎをしたのは、不安半分、そして期待半分だった。
……お酒の強壮効果のせいで、おれの陰茎はすっかり頭をもたげて、腹につきそうなくらいになっていた。先ほどからヴァンはおれの陰茎にゆるく触れてくるばかりで、しっかり触れてくるのは胸だけだ。そのため、思わず期待するようにヴァンを見上げてしまう。

「ふっ……なんて顔しやがる」

ヴァンはおれの顔を見下ろすと、自分の下唇をぺろりと舐めて嗤った。
なんだか、まるで肉食獣が舌舐めずりするような笑みだ。

しかし、おれの期待とは裏腹に、ヴァンが触れてきたのはおれの胸だった。
先走りでしとどに濡れている指先で、ぬるぬるとした露を塗り込まれるように、クリクリと乳首を揉み込まれる。

「ぁ、ンあッ……!」
「可愛い声だな。お前でも、そんな声を出すとは……」

今まで人生で一度も触れたことのない部位なのにも関わらず、ヴァンがそこをいじると、びくびくと身体が跳ね、喘ぎ声が漏れた。

う、嘘だろ、こんなの。
おれ、こんな場所ですごく気持ちよくなってる……!

酒の強壮効果のせいにしても、もはや戸惑いを通り越して恐怖だ。しかし、ヴァンの両手が容赦なく指先で両方の乳首をつつき、そしてこねくり回し始めたので、その恐怖はあっという間に押し寄せる快楽に上書きされた。

過ぎる快楽は、まるで乳首を通して電流を流されているようだった。しばらく両の乳首をいじられ続け、そこがまるで果実みたいに真っ赤になってきてしまった頃には、おれはもはや肩で息をしている状態だった。

「っ、は……ぁ、ふっ……」

肩でぜぇぜぇと息をするおれ。それを見下ろすヴァンが、おれの額に汗ではりついた前髪をそっと払ってくれた。その手の冷たさが心地よくて、そっと目を細める。

「ヴァン……」
「うん?」
「……すまない。おれは、ヴァンにこういう事をさせるつもりはなかったんだが……」

肩で息をしながら、それでもどうにかヴァンにそう言うと、ヴァンがまるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。そして、手で俺の頭をくしゃりと撫でる。

「なーに言ってんだ。言っただろう? ヤマトは俺の命の恩人だし、この行為だって俺の役得だしな。だから、ヤマトがおれに謝ることなんか何一つないんだよ」
「ヴァン……」

……な、なんていい男なんだ……。

さっき、憎しみと戦争が絶えないわけが分かった、なんて偉そうに言ってしまったが、撤回しよう。先ほどのはただのおれの僻みであった。
ヴァンは確かにイケメンだが、真にイケメンなのは外見ではなくて内面だったのだ。この男前っぷりなら、確かに男も女もよりどりみどりできるぐらいモテるのは当然だった。

おれが感動してヴァンを見上げていると、不意に、その紺色の瞳が間近に迫った。

そして――あ、と思った瞬間にはもう、唇が重なっていた。

しかし、先ほどのような性急なキスではなく、まるで絡まった紐を手解いていくような、優しいキスだった。唇で優しく触れ合い、そして、舌先で優しく唇をやんわりと舐められる。その心地よさに、おれも自然と目を閉じて口を開くと、ヴァンの舌をおずおずと受け入れた。

「んっ、ふぅ……」

おれが口を開くと、ヴァンの舌はすぐに腔内に入ってきた。
そして、キスを交わしながらもヴァンの右手は下腹部に滑り降りていくと、先走りでしとどに濡れたそこを、掌で握りこまれる。

「んっ、ぁ、ァっ……!」

ヴァンの指先を小刻みに蠢き、竿の表面に滑るようにしごく。かと思えば、先走りを潤滑剤にするように、そこをぬるぬると上下に揺すられる。
おれの陰茎はヴァンの手が動くたびに、あふれる先走りでぐちゅぐちゅと濡れた水音を部屋に響かせるほどになっていた。
そして、それと同時に、左手で再び乳首を弄られる。時には右手で亀頭をすりすりと撫でるのと連動して、乳首も同じ動きでいじられた。もうおれの身体は限界で、どこに触れられても、まるで打ち上げられた魚のようにビクビクと痙攣した。

「んっ……はぁ……ヴァン……っ」

ちゅ、と音を立ててヴァンが唇と離すと、おれの唇とヴァンの唇をつなぐように、銀色の糸が引いた。
すがるように見上げると、おれの言いたいことを察してくれたのか、ヴァンが微笑みながらかすかに頷いた。そして、おれの頬を優しく手の甲で撫でると、ヴァンの手が再び責めを再開させた。

右手で陰茎をぐちゅぐちゅと弄くられ。
左手で乳首をつつかれ、こねくり回され、時にはつねられて。

「ぁ、あっ、ぁァっ……!」

もう、限界だった。
頭の中で真っ白な閃光がばちばちと弾ける。精液が陰茎の中をかけ上がってくるのすら分かるようだった

「んッ、あっ……ぁあァッ……!」

どくどくっ、と、見たことのないような量の白濁液が陰茎から噴き上がった。
そして、それに伴う快楽もまた段違いだった。天国に昇るような快感なんてものじゃない。あまりの気持ちよさに、身体が、心がばらばらになってしまいそうなほどだった。

しかも、常なら一瞬で終わるはずの射精なのに、時間すらも長かった。ヴァンのごつごつした指が、絞り出すように陰茎をしごくと、まだ新たな精液がどくどくっと勢いよく出てくる。
射精がようやく終わった頃には、シーツはまるでお漏らしをしたみたいにぐっしょりと濡れてしまっていた。

「……イったな。気持ちよかったか?」
「……っ……」

あまりの快楽の余韻に、もはや声も出せない。過ぎたる快楽は、もはや拷問に近かった。
おれはヴァンに向かってこくりと一つ頷く。おれが頷いたのを見て、ヴァンは「よし」とつぶやいた。

「なら良かった。じゃあ、次にいくか」
「…………………次?」

ヴァンの言葉に、おれは信じられない気持ちで彼を見上げる。
しかし、彼から返ってきた言葉は非情なものだった。

「気づいてないのか? ヤマトのここは、まだ満足してねェみたいだぜ」
「っな……」

慌てておれは自分の下半身を見る。しかし、残念なことに、確かにヴァンの言う通りだった。
おれの陰茎は射精の直後だというのに、再びゆるく頭を持ち上げ始めている。しかも、下半身に溜まっている熱はいまだに楽になっていなかった。

「な、なぜ……」
「そういう薬効だから。ま、あと何回かヤれば楽になるだろ」

そう言って、おれの陰茎に再び手を這わせ始めるヴァン。
おれの心とは裏腹に、そこはヴァンの手に触れられて嬉しいというように、再び先走りを流し始める。

「大丈夫だ、ヤマト。お前が満足できるまで俺が付き合うからな」

そう言って、なぜか愉しげな表情で、ちゅっとリップ音を立てて口づけてくるヴァン。
おれはその唇を受け入れながら、ヴァンの言葉とまるで収まらない熱に呆然とする。


……あの、すみません。
今すぐに気絶できる方法ってありませんかね?

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