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創作物
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「名前つけただけで、そんなに喜んで貰えるとは思ってなかったよ」
「ご主人ちゃんに貰ったもので、しかも名前だよ! 喜ぶに決まってるじゃん」
ようやくモブ男、改めアレクの腕から解放されたおれは、彼と二人並んで歩いていた。
おれ達が倒れていた森林の中から少し歩いたところに、明らかに人が整備したと思われる街道があったのだ。
森の中で目覚めた時、どうして街中に近いところに転移してくれなかったのかと神様に文句を言いたい気持ちになったが、よく考えれば街中にいきなり人間二人が出現するとかマジックショーを通り越してホラーショーな事態である。だからきっと、街から少し離れた森林の中に転移せざるを得なかったのだろう。
なので、今はアレクと二人で並んで、街へと続く道を歩いている最中だ。
「……しかし、アレク。眷属といっても、なんでそんなにおれのことを慕ってくれるんだ?」
「うん?」
この異世界に転移してからずっと抱いていた疑問に対し、アレクが首を傾げた。
「主人って言っても、お前に命を与えたのは神様だろ? おれ、何もお前にしてやれてないし。なんでおれにそんなに……その、おれに良くしてくれるのかと思って」
おずおずとアレクに問いかける。
眷属のアレクがおれのことをかなり慕ってくれているのは分かっていたが、それでも、アレクの外見からかやはり未だに緊張感が抜けない。
これはもう仕方がない。慣れるまで時間をかけるしかないだろう。確かにおれは今まで同人誌でチャラ男にヒロインが寝取られる話は、今までに十冊以上は描いてきた。
だけど、彼のようないかにもといったアウトドア系なリアルな人間……趣味がサーフィンとかボーリングとかスノーボードでもやっていそうなカーストの人間を友人に持ったことは、今まで一度もないのだ。
おれの友人と言えば、同じ穴の狢の、趣味といえば漫画、動画巡りのインドア系の人間オンリー。そんなおれに対して、グイグイ来るアレクの態度は本当に対応に困るのだ。
……困ってるだけであって、嫌とか、そういうわけではないんだけど。
「えー? だって、ご主人ちゃんがいなかったら、オレ、産まれてないし」
「そんな重いことをあっさり!?」
おれの疑問に対し、アレクからさらりと返してきた言葉の重さに、相手に感じていた緊張感を忘れて思わずツッコミを入れてしまった。
しかし、アレクはおれのツッコミにも不思議そうな顔をしている。
「だって、ご主人ちゃんは俺にとって、生みの親であって唯一神で絶対者であって、忠義と愛情を尽くすべき御方だし?」
「ア、アレクに命を与えたのはおれじゃなくて神様だろう?」
「命をくれたのは神様だけど、魂をくれたのはご主人ちゃんだよ」
アレクは、どうしてそんな当たり前のことを聞くの?、と言わんばかりの表情でおれを見返してくる。
しかし、ふとその表情がひやりとするようなシニカルな笑みへと変わった。
「もしかして、あの神様が言ったこと気にしてる?」
「え?」
「気にしなくていいよ、神様の言葉なんて。あの神様は『眷属も同じ人間だから眷属が裏切ることもある』なんて言ってたけど、それは神様の勘違いだよ。なんとなくだけどさ、この世界、マンガとか小説とか……創作物ってのがそんなにないんじゃないかな」
「なんでそう思うんだ?」
アレクの言葉はどことなく、神様の言葉を小馬鹿にするような口調だった。
まだ邂逅から一時間ほどしか経っていないが、アレクのそんな態度は初めて見るので、ちょっとヒヤリとしてしまう。
「俺ってただの眷属じゃなくて、創作物なんだよ。創作物からしたら作者が絶対的なのって当たり前でしょ? だって、その人が望んでくれたからこそ、俺らは産まれてこれたんだから。もうその人に望まれなくなったら、存在している意味なんかないんだよ」
「ふ、ふぅん……?」
いやになく、熱の入ったアレクの語り口に、おれは余計な口を挟まないように相槌を打つにとどめた。
相手が自分の好きなものや主義主張について語っている時は、疑問をいだいたとしても、とりあえず最初は黙って聞いているのが一番だからな。
……あ。こういう所、よく考えたらおれとそっくりかも。
やっぱりおれが生み出したモブ男だから、おれに似たんだろうか。
そう考えると、親子みたいだな。
「だから、裏切るなんてあるわけないじゃん。まぁ、愛情や忠義が行き過ぎることはあるかもだけど。でさ、俺らみたいなのの気持ちが理解できないであんな発言をしたってことは、この世界には、地球にあるような小説とか漫画……読み物系の創作物ってのが存在しないんじゃないかなーって。もしもこの世界にもそういう読み物があれば、俺らの気持ちも理解できてるはずじゃん?」
「へぇ……」
アレクの説明は、なんだか分かったような、分からないような感じだった。
にしてもアレク、おれと神様との会話の内容を知ってるんだな。あの場所にアレクは存在していなかったはずだけれど、後で神様が聞かせたんだろうか。
「そうなのか……読み物がない世界かぁ」
それが本当なら、おれにとっては大変なことだ。何せ、この世界じゃマンガも小説も読めないってことなのである。
あー、手塚先生の作品、ちゃんと全部読んでおけばよかった……! くそ、あとはあのマンガも小説も、続きが気になるのになぁ!
あっ、それに今回のシリシリコンさんの新刊、全部読ませてもらってないし!
「あっ。でもホラ、もっと人のいる都市に行けば、この世界独自の読み物なんかがあるかもだね! まずは人のいる街を目指そーよ」
「そうだな……」
おれが落ち込んでいることが分かったのか、語っていたアレクが慌てたように声をかけてきた。
そうだな、何はともあれ人の街に行かないとどうしようもない。
それに、この世界に小説や漫画はないとしても、確かに異文化の読み物とか創作物なんかがあるのかもしれない。漫画や小説に関わらず読書好きで、アマチュアとはいえ自身も同人漫画作家であるおれにとっては、読書とは大事なライフワークだ。元の世界での読み物が読めなくなったことを嘆くよりは、まだ見ぬこの世界での読み物がどんなものかに思いを馳せるようにしよう。
……ああ、でも、手塚先生の『火の鳥』は全巻読めてないんだよなぁ……! 本当に悔やんでも悔やみきれない! 死ぬまでに読んでおけば良かったちくしょう!
うう。何かの機会に、どうにかして神様に頼めないかなー……。
そういや……神様といえば、アレクのさっきの発言……。
生みの親であって唯一神で絶対者、だっけ?
アレクの軽いノリの口調だと、なんか、あんまり実感が沸かないけど。でも、それでもコイツがおれに対して一生懸命色んなことをしてくれようと、頑張ってくれようとするのは分かる。
未だにアレクの外観に対する緊張感は抜けないけど、でも、そこまでおれのことを慕ってくれているなら、おれもアレクに対して同じものを返せるように頑張っていこう、うん。主人と眷属っていう立場に、あぐらをかかないように気をつけないと、ああは言ってくれたものの、やっぱり見限られるってこともあるかもだしな。
……はぁ。それを考えるとつくづく、最初の時の対応を間違えたのが悔やまれるなぁ。
おれはアレクを横目でちらりと伺う。
アレクは鼻歌を歌いつつ前方を見て歩いていたが、おれの視線に気づいたのかすぐにこちらに顔を向けると、にっこりと嬉しそうな笑顔を向けてきた。おれは慌てて外して顔を背ける。チャラ系モブ男とはいえ、イケメンの笑顔は心臓に悪い。
……その笑顔に、緊張感と同時に心が罪悪感で痛む。
はぁ、アレクは今はもう気にしてないみたいだけど……おれの態度は最悪だったよな。よもや女の子じゃないからって落ち込むとか、本当に何様だよって感じだし。
アレクはもう気にはしていないみたいだけど、本当に気をつけよう……。
「ご主人ちゃんに貰ったもので、しかも名前だよ! 喜ぶに決まってるじゃん」
ようやくモブ男、改めアレクの腕から解放されたおれは、彼と二人並んで歩いていた。
おれ達が倒れていた森林の中から少し歩いたところに、明らかに人が整備したと思われる街道があったのだ。
森の中で目覚めた時、どうして街中に近いところに転移してくれなかったのかと神様に文句を言いたい気持ちになったが、よく考えれば街中にいきなり人間二人が出現するとかマジックショーを通り越してホラーショーな事態である。だからきっと、街から少し離れた森林の中に転移せざるを得なかったのだろう。
なので、今はアレクと二人で並んで、街へと続く道を歩いている最中だ。
「……しかし、アレク。眷属といっても、なんでそんなにおれのことを慕ってくれるんだ?」
「うん?」
この異世界に転移してからずっと抱いていた疑問に対し、アレクが首を傾げた。
「主人って言っても、お前に命を与えたのは神様だろ? おれ、何もお前にしてやれてないし。なんでおれにそんなに……その、おれに良くしてくれるのかと思って」
おずおずとアレクに問いかける。
眷属のアレクがおれのことをかなり慕ってくれているのは分かっていたが、それでも、アレクの外見からかやはり未だに緊張感が抜けない。
これはもう仕方がない。慣れるまで時間をかけるしかないだろう。確かにおれは今まで同人誌でチャラ男にヒロインが寝取られる話は、今までに十冊以上は描いてきた。
だけど、彼のようないかにもといったアウトドア系なリアルな人間……趣味がサーフィンとかボーリングとかスノーボードでもやっていそうなカーストの人間を友人に持ったことは、今まで一度もないのだ。
おれの友人と言えば、同じ穴の狢の、趣味といえば漫画、動画巡りのインドア系の人間オンリー。そんなおれに対して、グイグイ来るアレクの態度は本当に対応に困るのだ。
……困ってるだけであって、嫌とか、そういうわけではないんだけど。
「えー? だって、ご主人ちゃんがいなかったら、オレ、産まれてないし」
「そんな重いことをあっさり!?」
おれの疑問に対し、アレクからさらりと返してきた言葉の重さに、相手に感じていた緊張感を忘れて思わずツッコミを入れてしまった。
しかし、アレクはおれのツッコミにも不思議そうな顔をしている。
「だって、ご主人ちゃんは俺にとって、生みの親であって唯一神で絶対者であって、忠義と愛情を尽くすべき御方だし?」
「ア、アレクに命を与えたのはおれじゃなくて神様だろう?」
「命をくれたのは神様だけど、魂をくれたのはご主人ちゃんだよ」
アレクは、どうしてそんな当たり前のことを聞くの?、と言わんばかりの表情でおれを見返してくる。
しかし、ふとその表情がひやりとするようなシニカルな笑みへと変わった。
「もしかして、あの神様が言ったこと気にしてる?」
「え?」
「気にしなくていいよ、神様の言葉なんて。あの神様は『眷属も同じ人間だから眷属が裏切ることもある』なんて言ってたけど、それは神様の勘違いだよ。なんとなくだけどさ、この世界、マンガとか小説とか……創作物ってのがそんなにないんじゃないかな」
「なんでそう思うんだ?」
アレクの言葉はどことなく、神様の言葉を小馬鹿にするような口調だった。
まだ邂逅から一時間ほどしか経っていないが、アレクのそんな態度は初めて見るので、ちょっとヒヤリとしてしまう。
「俺ってただの眷属じゃなくて、創作物なんだよ。創作物からしたら作者が絶対的なのって当たり前でしょ? だって、その人が望んでくれたからこそ、俺らは産まれてこれたんだから。もうその人に望まれなくなったら、存在している意味なんかないんだよ」
「ふ、ふぅん……?」
いやになく、熱の入ったアレクの語り口に、おれは余計な口を挟まないように相槌を打つにとどめた。
相手が自分の好きなものや主義主張について語っている時は、疑問をいだいたとしても、とりあえず最初は黙って聞いているのが一番だからな。
……あ。こういう所、よく考えたらおれとそっくりかも。
やっぱりおれが生み出したモブ男だから、おれに似たんだろうか。
そう考えると、親子みたいだな。
「だから、裏切るなんてあるわけないじゃん。まぁ、愛情や忠義が行き過ぎることはあるかもだけど。でさ、俺らみたいなのの気持ちが理解できないであんな発言をしたってことは、この世界には、地球にあるような小説とか漫画……読み物系の創作物ってのが存在しないんじゃないかなーって。もしもこの世界にもそういう読み物があれば、俺らの気持ちも理解できてるはずじゃん?」
「へぇ……」
アレクの説明は、なんだか分かったような、分からないような感じだった。
にしてもアレク、おれと神様との会話の内容を知ってるんだな。あの場所にアレクは存在していなかったはずだけれど、後で神様が聞かせたんだろうか。
「そうなのか……読み物がない世界かぁ」
それが本当なら、おれにとっては大変なことだ。何せ、この世界じゃマンガも小説も読めないってことなのである。
あー、手塚先生の作品、ちゃんと全部読んでおけばよかった……! くそ、あとはあのマンガも小説も、続きが気になるのになぁ!
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おれが落ち込んでいることが分かったのか、語っていたアレクが慌てたように声をかけてきた。
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……ああ、でも、手塚先生の『火の鳥』は全巻読めてないんだよなぁ……! 本当に悔やんでも悔やみきれない! 死ぬまでに読んでおけば良かったちくしょう!
うう。何かの機会に、どうにかして神様に頼めないかなー……。
そういや……神様といえば、アレクのさっきの発言……。
生みの親であって唯一神で絶対者、だっけ?
アレクの軽いノリの口調だと、なんか、あんまり実感が沸かないけど。でも、それでもコイツがおれに対して一生懸命色んなことをしてくれようと、頑張ってくれようとするのは分かる。
未だにアレクの外観に対する緊張感は抜けないけど、でも、そこまでおれのことを慕ってくれているなら、おれもアレクに対して同じものを返せるように頑張っていこう、うん。主人と眷属っていう立場に、あぐらをかかないように気をつけないと、ああは言ってくれたものの、やっぱり見限られるってこともあるかもだしな。
……はぁ。それを考えるとつくづく、最初の時の対応を間違えたのが悔やまれるなぁ。
おれはアレクを横目でちらりと伺う。
アレクは鼻歌を歌いつつ前方を見て歩いていたが、おれの視線に気づいたのかすぐにこちらに顔を向けると、にっこりと嬉しそうな笑顔を向けてきた。おれは慌てて外して顔を背ける。チャラ系モブ男とはいえ、イケメンの笑顔は心臓に悪い。
……その笑顔に、緊張感と同時に心が罪悪感で痛む。
はぁ、アレクは今はもう気にしてないみたいだけど……おれの態度は最悪だったよな。よもや女の子じゃないからって落ち込むとか、本当に何様だよって感じだし。
アレクはもう気にはしていないみたいだけど、本当に気をつけよう……。
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