完結 愛人と名乗る女がいる

疑惑

「早く出ていけ！ここは私とダーリンが住む予定なのよ！」
派手な格好をした女性が自宅前で喚いていた、対応した門兵が追い払ったようだが散々と悪態をついて帰って行ったらしい。

「以上でございます、奥様。いかがいたしましょうか？」
「そうねぇ、彼とは話が付いているけれど」
浮気をしているのが事実なのならば対応は違ってくる、早急に人を雇い確認を急ぐべきかと家令は言う。だが、それは待てと言った。

「あの人も馬鹿ではないわ、少し待って頂戴な」



「ええ？私が浮気をしているだって？そんなことはしていない、わかっているはずだ！」
「そうよねぇ、貴方ならもっと上手く誤魔化すはずだわ」

晩餐の席でワインを嗜む彼女は「ほぉ」とため息をはいてほろ酔いしていた。逆にワインが苦手な彼は嫌そうに仰け反り「勘弁してくれ」と言った。
「あら、失礼。では蜂蜜酒はいかが、用意させましょう」
「……いや、結構だ。私は失礼するよ」

デザートを食べ終えた夫ルベルトは眉間に皺寄せて食堂を後にする。
「もっと仲が良い振りをしてくれても罰は当たらないでしょうに」
妻はクツクツと笑って残りのワインを嚥下した、ふたりの関係はとうに冷え切っていていつ壊れても可笑しくない。
家人も薄々気が付いていて、見て見ぬふりを決め込んでいた。

「さて、どちらの言い分を信じようかしら？」