隣の芝はやっぱり青い

音爽(ネソウ)

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「ハァ、素敵な殿方だわぁ、所作からして洗練されていて正に貴公子ね!」
アニタ・エイムスはオペラグラスを片手に隣家の状況を見ていた、とても褒められた所業ではない。だが、新興貴族の彼女は無作法なことを気にしていないのだ。

メイドに”お止めください”と注意を受けても右から左なのだ。




「それでカントリーハウスに戻りたいと思ったの?フハッ!サミーは相変わらずだなぁ」
クラレンス・アクロイドは遠慮知らずの隣人の話を聞いてケラケラと笑い飛ばす。その様子を見たサマンサは立腹して「笑い事ではないのに」と頬を膨らませる。

「余程の知り合いでもなければ垣根越しに話し掛けたりしなないわ!しかも初対面でね!ほんと失礼しちゃう」
マナーに煩いアクロイド家にとって大事だと彼女は譲らない、相手に軽く見られたことが許せないようだ。
「しかも相手は子爵でしょ、伯爵家が舐められているのよ。これが許されると思って?」

プリプリと怒る彼女を見て流石のクラレンスは拙いことになりそうだと肩を竦める。
「分かったよサミー、隣家にはそれとなく注意しておこう約束する。臍を曲げないでおくれ」
「まったく貴方ときたら呑気なのだから……近いうちにお願いね」
「はいはい」

近いうちと念押しされたクラレンスは早速と手紙を認めて執事に手渡した、貴族にとって”近日”とは今すぐにという意味にになるのだ。それほどに怒っていると知ったクラレンスは泡を食う。



***


一方で無頓着に過ごしていたアニタ・エイムスは伯爵家から手紙が届いたと聞かされ、何を勘違いしたのか歓喜していた。そして、封を切るや「まぁ!」と黄色い声を上げた。

「見て!アルド、クラレンス様から直接手紙が届いたのよ!とっても嬉しいわ、身てこの字の達筆な事、貴公子に相応しいわ」
抗議文をどう解釈したのかアニタは喜びに満ちていた、季節の時候から始まった彼の手紙はやんわりと「我が家と関わりを持たないで欲しい」と綴られていたのだが、貴族の遠回しの言い方を曲解した彼女は有頂天である。

「へぇ、良かったじゃないか。向こうから接触してくるなんて手間が省けた」
同じように兄のアルドも「知り合いと思わられたくない」という貴族の嫌味をスルーしてしまう。きっとアニタの事を見初めた隣人がこのように粉をかけて来たのだと勘違いしたのである。

「うふふ、折角のシーズンだもの!早速とお茶にお誘いしましょう、あぁドレスはどれにしようかしら?ワクワクが止まらないわ」









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