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実はミックの手紙の封書にはご親切にもサイン済の離縁状まで添えてあった。
本気さをアピールさえすれば妻は慌てて頭を下げて帰宅すると踏んだらしい。
「バッカみたい、でもありがとう!さくっと他人になれて嬉しいわ」
「良かったわねネイベル、晴れて自由の身ね!今度こそ素敵な殿方と縁を結ぶのよ」
「え、いやよ。しばらくは男はコリゴリなんだから」
ネイベルは離婚が成立したことをご丁寧に手紙を送った。
返事は来なかったが、諦めたのだろうと放置した。
だが、祖母の屋敷に買い手がついて追い出されたミック達はネイベルの実家へ怒鳴り込んで来た。
「てめぇ!勝手に家を売るなんて頭おかしいのか!あの家の主人は俺なんだぞ!」
「そーよ!ミックは大黒柱で偉いのよ!」
やはり勘違いしたまま暮らしていたらしい二人は、予想通りの反応をしてネイベルを呆気に取らせる。
「……頭おかしいのはそちらでしょ?あれは祖母の生家を改装して私が貰い受けたものだわ」
「え……ええ?そうだっけ……で、でも俺は夫だし妻のものは俺のじゃないのかよ」
「どんな思考でそうなるの、譲渡契約などしてないのに」
「あっれー?でも、でも……俺は夫で」
「とっくに離婚成立してるでしょ、いつまで夫気取りなの。貴方の妻はそこのオバサンでしょ」
「う……」
言葉につまるミックだが、それでも諦めがつかない事情を抱えているのか帰ろうとしない。
「ちょっとミック!話が違うじゃない!早く家を取り返して」
「なんだよ!何も知らない癖に黙ってろよ!」
喚き散らす二人を余所にネイベルは追い打ちをかける、同席していた弁護士に目配せして後を任せる。
「ゴホン、白熱している所を申し訳ないが本題に入ります。不貞して家庭を壊したアナタ方には慰謝料の請求と他人の家に居座り続けた迷惑料を払っていただきます。逃げても無駄ですからね、財や給与差押は当たり前に執行します」
「え」
「な」
弁護士に現実を叩きつけられた二人は茫然として言葉が出なかったが、ミックは我に返ると図太い提案を出してきた。
「な、なぁネイベル。これまでの事は水に流して……やり直すとか」
「寝言は寝て言え!どこまで私の娘をバカにする気だ!」
応接室の隅で静観していた父親が愚かなミックを怒鳴りつけて殴りかかった。吹き飛ばされた彼は数回転がって壁にぶつかる。
「ひっ!痛いよぉ……そんなに怒らなくても……お願いだよ話を聞いてぇ」
それでもしつこく食い下がってくる彼のことをアバネシー氏は恫喝して屋敷から追い出した。
「ふぅ、警備員でも雇ったほうが良さそうだな」
「そうね、アフォが来る度に応対してたらキリがないもの」
***
完全に縁が切れて数年後。
風の噂でミックたちの現状を知ることになった。
元夫と愛人は、一応は夫婦として続いていたようだが荒れているらしい。
病気がちだというベティの身体の事は嘘で、妊娠までしたらしい。かなりの高齢出産で危ぶまれたが無事に子を成した。
しかし、明らかに毛色がおかしくミックの子ではなかったという。
「ベティの浮気がバレて離縁したらしいわねぇ」
ネイベルの母が街で拾った噂を面白おかしく娘に聞かせた、さして興味はないネイベルは面倒そうに感想を述べた。
「でしょうね、アイツ種なしだったもの」
完
本気さをアピールさえすれば妻は慌てて頭を下げて帰宅すると踏んだらしい。
「バッカみたい、でもありがとう!さくっと他人になれて嬉しいわ」
「良かったわねネイベル、晴れて自由の身ね!今度こそ素敵な殿方と縁を結ぶのよ」
「え、いやよ。しばらくは男はコリゴリなんだから」
ネイベルは離婚が成立したことをご丁寧に手紙を送った。
返事は来なかったが、諦めたのだろうと放置した。
だが、祖母の屋敷に買い手がついて追い出されたミック達はネイベルの実家へ怒鳴り込んで来た。
「てめぇ!勝手に家を売るなんて頭おかしいのか!あの家の主人は俺なんだぞ!」
「そーよ!ミックは大黒柱で偉いのよ!」
やはり勘違いしたまま暮らしていたらしい二人は、予想通りの反応をしてネイベルを呆気に取らせる。
「……頭おかしいのはそちらでしょ?あれは祖母の生家を改装して私が貰い受けたものだわ」
「え……ええ?そうだっけ……で、でも俺は夫だし妻のものは俺のじゃないのかよ」
「どんな思考でそうなるの、譲渡契約などしてないのに」
「あっれー?でも、でも……俺は夫で」
「とっくに離婚成立してるでしょ、いつまで夫気取りなの。貴方の妻はそこのオバサンでしょ」
「う……」
言葉につまるミックだが、それでも諦めがつかない事情を抱えているのか帰ろうとしない。
「ちょっとミック!話が違うじゃない!早く家を取り返して」
「なんだよ!何も知らない癖に黙ってろよ!」
喚き散らす二人を余所にネイベルは追い打ちをかける、同席していた弁護士に目配せして後を任せる。
「ゴホン、白熱している所を申し訳ないが本題に入ります。不貞して家庭を壊したアナタ方には慰謝料の請求と他人の家に居座り続けた迷惑料を払っていただきます。逃げても無駄ですからね、財や給与差押は当たり前に執行します」
「え」
「な」
弁護士に現実を叩きつけられた二人は茫然として言葉が出なかったが、ミックは我に返ると図太い提案を出してきた。
「な、なぁネイベル。これまでの事は水に流して……やり直すとか」
「寝言は寝て言え!どこまで私の娘をバカにする気だ!」
応接室の隅で静観していた父親が愚かなミックを怒鳴りつけて殴りかかった。吹き飛ばされた彼は数回転がって壁にぶつかる。
「ひっ!痛いよぉ……そんなに怒らなくても……お願いだよ話を聞いてぇ」
それでもしつこく食い下がってくる彼のことをアバネシー氏は恫喝して屋敷から追い出した。
「ふぅ、警備員でも雇ったほうが良さそうだな」
「そうね、アフォが来る度に応対してたらキリがないもの」
***
完全に縁が切れて数年後。
風の噂でミックたちの現状を知ることになった。
元夫と愛人は、一応は夫婦として続いていたようだが荒れているらしい。
病気がちだというベティの身体の事は嘘で、妊娠までしたらしい。かなりの高齢出産で危ぶまれたが無事に子を成した。
しかし、明らかに毛色がおかしくミックの子ではなかったという。
「ベティの浮気がバレて離縁したらしいわねぇ」
ネイベルの母が街で拾った噂を面白おかしく娘に聞かせた、さして興味はないネイベルは面倒そうに感想を述べた。
「でしょうね、アイツ種なしだったもの」
完
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