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愛が蝕む時
愛人の半数以上を失ったルーファは逆恨みを公爵家へ向けていた。
「やっと50人まで集めたと言うのに!ただの金蔓の分際で!くそがぁあ!」
中でも寵愛していた大商人の娘が捕縛されて打ち首にされたのが痛かった。
平民が公爵家令嬢に暴行したとあって極刑に処された、貴族を軽んじる者への身分制に則った見せしめだ。
暴行事件をきっかけにルーファ自身に恐れた愛人たちが逃げ出した。残ったのは見目の悪い貧乏娘ばかりだった。
ルーファは質より数を優先して集めていたための結果だ。
「母の言う通りに動きここまで成せたのにぃ、許さないぞエリアナ!将来の夫となる俺の足を引っ張ることばかりしやがって!躾が必要だな!ぎひひひぃ!」
ルーファは醜悪な笑みを浮かべて、深夜に屋敷を抜け出した。
謹慎中の身だが息子に甘い子爵家の警備はザルだ、仮に従者と出くわしても見逃すだろう。
「ケハハハ、仮病なんかセコい手を使いやがって俺は騙されないからなぁだって母上がそう言ったのだからぁ!」
彼はどこで手にいれたのかロープと皮鞭、手錠を外套の下へ忍ばせた。
暗がりに紛れて進む先は公爵邸だ、3人の警備兵が一定のリズムを取るかのように左へ右へと警邏していた。
ルーファは舌打ちしたが、警備兵の行動が傀儡のように徘徊していると気が付いた。
物音さえ消せば裏をかけると判断して門壁に沿って歩いた。
後は塀と垣根を縫い従者の通用口へ押し入れば良いと考えた。
軋む木戸に肝を冷やしたがまんまと侵入した。冷静に考えれば都合よく施錠が外れていることを警戒すべきであった。しかし、ルーファは自信過剰なところがあり「慎重に行動した自分の成果」と勘違いした。
「んぐう頭が痛い……」だらりと涎を垂らして薬を飲む。10分ほど蹲ったかと思えば急激にテンションが上がるルーファ。
「よぉし!治っだぞ~!さすが母上の薬だぁ!いひひっひ」
主一家の居室へ伸びる廊下と従業員の居室への廊下が交差する場所へ着いた。
見張りが徘徊するなら当然に一家の方だ、さすがに忍び足でソロソロと歩く。
身を隠す場所はない、遭遇すれば大捕り物に発展するだろう。
だが運良く警備兵はいない、エリアナの部屋は子供の頃に何度か訪ねていたのでなんなく到着する。
「きひぃ!どうやら外ばかり警戒してるようだな、なんてマヌケなんだケケケッ」
誘導されてるとは露ほども思わず彼女の寝室へ忍び込んだ。
天蓋ベッドへソロソロと近づいた、薄い布を除けると白い上掛けの膨らみが上下している。
なにも知らず寝腐っていると下卑な顔するルーファはエリアナの頭部を襲い猿轡をかまそうとロープをかけた。
それから体へ馬乗りになってシーツを捲った。
「やあ~エリアナァ、夜遊びに付き合ってくれよゲヘヘヘ……」
ゲハゲハと薄汚い笑みを浮かべてエリアナを見下ろした。
しかし反応がない、不審に思った彼は彼女の腹辺りを殴った。やはり手応えがなかった。
その刹那、ルーファの目に眩しい光が当てられ目が眩みベッドから転げ落ちた。
部屋がパッと明るく灯る、眩んだ目が慣れてきたルーファは周囲の気配にぎょっとした。
屈強な警備兵20名ほどと公爵がベッド周りを取り囲んでいた。
彼が嬉しそうに跨っていたのはただの寝袋だった。
「チクショー!騙しやがったなぁ!」持参した皮鞭を振り回して無駄足掻きをするルーファ、しかし扱いに慣れていない武器はあっさり奪われて床に押さえつけられた。
「ぐぅぅ!!エリアナー!エリアナはどこだぁ!ぶっ殺してやる!出てごい!殺してやどぅー!」
「おやおや、現在進行形で罪を増やすのか、バカな男だ。不法侵入、婦女暴行未遂、そして脅迫と殺人未遂の追加だ」
公爵の横から久しぶりに見る顔に目を瞠るルーファ。
「に、兄さん!?なんでここにいるんだぁ!母に追い出されだぁ出来損ないぃがあ」
ルーファとあまり似ていない、兄と呼ばれた青年が口を開いた。
「残念だルー、お前はやり過ぎた。マザコンもここまでくると洗脳だな恐ろしい」
「母を侮辱するなー!いつも後妻だとバカにしやがって~!んがぁあ!」
縄でグルグル巻きにされても抵抗を続けるルーファの目は常軌を逸していた。
「ふひっ母のためだ、全部全部、俺達親子が幸せにぃなるためだらぁ、ぎいひひひっ!公爵家は俺達のものだぁあ!」
好き勝手に喚き散らすルーファは涎をグチャグチャ垂らして目が濁っていた。
やがて昏倒させられ連行されたルーファ、身体検査の結果、体内から大量の薬物が検出された。
医者たちの診察によれば、長年に渡り準麻薬剤が投与され続けて精神が侵されていたという。
怠惰で暴力的になり感情の起伏が激しくなって、自我を制御できなくなる物質だという。
母の歪んだ愛情と共に、薬物を飲み続けていたルーファは廃人寸前だった。
「やっと50人まで集めたと言うのに!ただの金蔓の分際で!くそがぁあ!」
中でも寵愛していた大商人の娘が捕縛されて打ち首にされたのが痛かった。
平民が公爵家令嬢に暴行したとあって極刑に処された、貴族を軽んじる者への身分制に則った見せしめだ。
暴行事件をきっかけにルーファ自身に恐れた愛人たちが逃げ出した。残ったのは見目の悪い貧乏娘ばかりだった。
ルーファは質より数を優先して集めていたための結果だ。
「母の言う通りに動きここまで成せたのにぃ、許さないぞエリアナ!将来の夫となる俺の足を引っ張ることばかりしやがって!躾が必要だな!ぎひひひぃ!」
ルーファは醜悪な笑みを浮かべて、深夜に屋敷を抜け出した。
謹慎中の身だが息子に甘い子爵家の警備はザルだ、仮に従者と出くわしても見逃すだろう。
「ケハハハ、仮病なんかセコい手を使いやがって俺は騙されないからなぁだって母上がそう言ったのだからぁ!」
彼はどこで手にいれたのかロープと皮鞭、手錠を外套の下へ忍ばせた。
暗がりに紛れて進む先は公爵邸だ、3人の警備兵が一定のリズムを取るかのように左へ右へと警邏していた。
ルーファは舌打ちしたが、警備兵の行動が傀儡のように徘徊していると気が付いた。
物音さえ消せば裏をかけると判断して門壁に沿って歩いた。
後は塀と垣根を縫い従者の通用口へ押し入れば良いと考えた。
軋む木戸に肝を冷やしたがまんまと侵入した。冷静に考えれば都合よく施錠が外れていることを警戒すべきであった。しかし、ルーファは自信過剰なところがあり「慎重に行動した自分の成果」と勘違いした。
「んぐう頭が痛い……」だらりと涎を垂らして薬を飲む。10分ほど蹲ったかと思えば急激にテンションが上がるルーファ。
「よぉし!治っだぞ~!さすが母上の薬だぁ!いひひっひ」
主一家の居室へ伸びる廊下と従業員の居室への廊下が交差する場所へ着いた。
見張りが徘徊するなら当然に一家の方だ、さすがに忍び足でソロソロと歩く。
身を隠す場所はない、遭遇すれば大捕り物に発展するだろう。
だが運良く警備兵はいない、エリアナの部屋は子供の頃に何度か訪ねていたのでなんなく到着する。
「きひぃ!どうやら外ばかり警戒してるようだな、なんてマヌケなんだケケケッ」
誘導されてるとは露ほども思わず彼女の寝室へ忍び込んだ。
天蓋ベッドへソロソロと近づいた、薄い布を除けると白い上掛けの膨らみが上下している。
なにも知らず寝腐っていると下卑な顔するルーファはエリアナの頭部を襲い猿轡をかまそうとロープをかけた。
それから体へ馬乗りになってシーツを捲った。
「やあ~エリアナァ、夜遊びに付き合ってくれよゲヘヘヘ……」
ゲハゲハと薄汚い笑みを浮かべてエリアナを見下ろした。
しかし反応がない、不審に思った彼は彼女の腹辺りを殴った。やはり手応えがなかった。
その刹那、ルーファの目に眩しい光が当てられ目が眩みベッドから転げ落ちた。
部屋がパッと明るく灯る、眩んだ目が慣れてきたルーファは周囲の気配にぎょっとした。
屈強な警備兵20名ほどと公爵がベッド周りを取り囲んでいた。
彼が嬉しそうに跨っていたのはただの寝袋だった。
「チクショー!騙しやがったなぁ!」持参した皮鞭を振り回して無駄足掻きをするルーファ、しかし扱いに慣れていない武器はあっさり奪われて床に押さえつけられた。
「ぐぅぅ!!エリアナー!エリアナはどこだぁ!ぶっ殺してやる!出てごい!殺してやどぅー!」
「おやおや、現在進行形で罪を増やすのか、バカな男だ。不法侵入、婦女暴行未遂、そして脅迫と殺人未遂の追加だ」
公爵の横から久しぶりに見る顔に目を瞠るルーファ。
「に、兄さん!?なんでここにいるんだぁ!母に追い出されだぁ出来損ないぃがあ」
ルーファとあまり似ていない、兄と呼ばれた青年が口を開いた。
「残念だルー、お前はやり過ぎた。マザコンもここまでくると洗脳だな恐ろしい」
「母を侮辱するなー!いつも後妻だとバカにしやがって~!んがぁあ!」
縄でグルグル巻きにされても抵抗を続けるルーファの目は常軌を逸していた。
「ふひっ母のためだ、全部全部、俺達親子が幸せにぃなるためだらぁ、ぎいひひひっ!公爵家は俺達のものだぁあ!」
好き勝手に喚き散らすルーファは涎をグチャグチャ垂らして目が濁っていた。
やがて昏倒させられ連行されたルーファ、身体検査の結果、体内から大量の薬物が検出された。
医者たちの診察によれば、長年に渡り準麻薬剤が投与され続けて精神が侵されていたという。
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