完結 役立たずと言われダンジョンに捨てられたが好都合

音爽(ネソウ)

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居なくなった娘

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「どういうことか!」
怒号がビリビリと小さな家屋に響き渡る。家屋と呼ぶには心許無いくらいには貧相な場所である。家主であるバシュロ伯爵は身を縮込めて震えている。長年不摂生にしてきた身体はでっぷりと肥えて、顔中吹き出物だらけだ。

「貴殿に任せておけばアナベラ・オジェラン嬢は無事に過ごしているとばかり!月々の手当とともに送っていた彼女の支度金をどこへやった!まさか私腹を肥やしているとは」
怒りで目を血走らせた王子は激高して近くに合った文机を蹴り飛ばす。

「ひぃ!どうか怒りをお静めください!む、娘は自ら出て行ったのでございます」
「ならば書置きの一つもないのはどういう事か!彼女は自分の出自の事を知っていれば何かしらの手がかりを残すはず」
至極真っ当なことを言う王子は端からバシュロの言い訳を何一つ信用に値しないと思っている。視線を合わせずに目を泳がせて、次は何を言い訳にしようかとバシュロは必死に考える。
そこに空気を読まない、娘のルーシーが帰ってきた。

「お父様、林檎が一個350ですって、どれだけ業吐くなのかしらね!まったくこの辺りの店は高くて」
「お、おまえルーシー!御客人が来ているのだ、控えないさい!」
「は?なんですって?」
質問の矛先がバシュロ伯爵から娘のルーシーに変わった、これは拙いと思ったが手遅れである。


「はぁアナベラですって?あの穀潰しの女が何よ。あんなのダンジョンで燃やして転がして来たわよ」
ケタケタと笑い、焦がしてやった背中が香ばしく焼けたと自慢する。伯爵はもう駄目だと白目になった。
「ほお、香ばしくね……それはそれは」
ツイッと腰に佩いた剣を払い小娘の頬を十字に切った、あまりの速さに斬られた箇所から血が滴るのさえわからない。斬られた頬は二度と戻るまい。


***

「なんてことだ……あの子はもうこの世にいないなど、せめて亡骸だけでも弔ってやらねば」
従者らをぞろぞろ引き連れた王子はあのダンジョンを重い足取りで進む。するとあの女冒険者と偶然あったではないか。

「あら、久しぶり。え~とレイドだっけ?今日は随分大勢ね、もう身分は隠さないの?」
「あ、ああ……ちょっとわけありでね」
心なしかレイドの顔が優れない、従者と思しき彼らは険しい顔で剣の柄に手をやる。見た事もない女冒険者が気易く話かけてきたのだ、無理もない。彼女は肩を竦めて道を開ける「どーぞ、王子様」とおどけて一歩下がった。








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