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回復役の仕事
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「デヤァ!」
「ぎひぃ!」
「ファイアバレット!」
「ひひゃっ!」
「こら、後衛はもっと下がれ!邪魔だ」
「はぃ~!」
剣戟を目の当たりにするのは初めてなノチェであるが、やはり不慣れなことは間違いない。距離感が掴めないまま初戦闘は終わった。
「……自分がいる必要があるのでしょうか」
初戦敗退したような気分のまま、後衛の仕事は終わった。実際は初心者用の手堅い仕事で順当だ。だが、やはり成功とは程遠いと思えてならない。
「実際の仕事を見て貰ったわけだが、どうだ?上手く立ち回れそうか?」
「……ぜんぜん、だめでした。自分はどこにいて、どこへ向かうべきかすら」
しょんぼり気味のノチェは初参戦の手応えを自分なりに評価したが、すべてがダメダメで足を引っ張ってしまったことを猛省していた。そして、山と積まれた芋虫型の魔物を見て青くなる。
「え~と、やっぱり手堅くFランクの仕事を地道に……」
「うん、そうか。怒鳴って悪かった、次は立ち位置を配慮しておこう。後衛は俺達の数メートル背後にいろ」
「え……いやそういう事じゃなくて」
ちっともこちらの意見を聞いて貰えないことに愕然とするノチェは、早くも後悔していた。
「いやすまないな。うちのリーダーは言い出したら聞かなくて」
「は、い……」
「慣れてくれよな!あ、自分は攻撃魔法だけに集中してるからよろしく」
「……はい」
前衛タンク役のパウドと攻撃魔法に特化しているらしいレタルは気さくに話しかけてくれるが、そういうことじゃないと言いたい。
「はぁ……一体どうしろと」
「まぁまぁ、初めての対戦にしてはうまく行ったはずだぜ」
「本当にそう思ってます?」
今のところは大きく消耗する場面ではないので、回復魔法は必要とされていない。それが余計にノチェを圧迫しているのだが、その空気を読む相手はいないようだ。
***
「よおし!昨日に引き続き気張って行こうぜ。今日は飛行タイプの魔物退治だ、うち漏らしは任せたぜ」
「え?」
「おうよ、任せろ!」
「ええ!?」
うち漏らしと聞かされたノチェは青くなったが、攻撃魔法特化のレタルはやる気満々だ。回復魔法で一体なにが出来るだろうとオロオロしてしまう。
「ほら、リーダーその説明じゃだめだ。意味不明過ぎる」
「え、そっかぁ?」
タンク役のパウドが肩を竦めて「ダメだ、こいつ」とやっていた。もっと言ってやってくれとノチェはうんうんと頷く。
「うち漏らしたら回復特化のノチェは何もできやしない。お前が両手両足を縛られて戦えと言われてるようなもんだ」
「あ、……そっか。悪かった、ええと後衛は結界を張って待機しててくれ。できるか?俺達が交代で参戦できるように」
「あ、はい!それならできます」
結界魔法は得意なのでホッと息を吐く、タンク役のパウドが「任せたぜ」と肩を叩く。嬉しくなったノチェは誇らしげにしていた。
「ふぅ~休憩しようぜ、お疲れさん」
「お疲れ」
「は、はい。お疲れ様です」
休憩と言われて落ち着いたノチェは小範囲に結界を張って待機していた。それを見たレタルは「長時間張るのはどうかと思う」と言ってきた。
「え?大丈夫ですよ、これくらい、いつものことでしたし」
「いつものこと?」
「はい、結界を張ってそのうえで回復するのは骨ですがやって出来ないことは」
「ええええ!?うっそでしょ!」
どういう状況でそんな無駄遣いをしてきたのかと素っ頓狂な声を上げられた。言われたノチェはキョトンとしている。
「あの……何か間違っていましたか?とある場所では日常茶飯事でしたので」
「日常って、キミはとんでもないな上級以上だよ」
回復魔法を酷使してきた彼女にとっては当たり前になっていた事だ、今更ながら恐れ入ると彼らは思う。
リーダーであるティアは頭を掻きながら話かけてきた。
「ノチェ、なんていうか……あ~あんま気張り過ぎないでな?それから古傷の回復も忘れないで」
「はい、ありがとうございます」
ノチェは古すぎる傷痕が残る右側の頬を思わず手にした。顔面に残るそれを一番気にしている。
「顔面か……可哀そうに」
「え、あの?」
彼の大きな手が彼女の右側へ添えられた、手厚く介抱できない己を恥じて「申し訳ない」と呟いた。古傷はさすがに乱暴な事は出来ないからという理由だ。
「気にしないでください、これでもちょっとづつ回復してますから」
「うん、だけど……やはり気になってな」
憐憫な顔をする彼に、気持ちだけで嬉しいとノチェは笑う。
「ぎひぃ!」
「ファイアバレット!」
「ひひゃっ!」
「こら、後衛はもっと下がれ!邪魔だ」
「はぃ~!」
剣戟を目の当たりにするのは初めてなノチェであるが、やはり不慣れなことは間違いない。距離感が掴めないまま初戦闘は終わった。
「……自分がいる必要があるのでしょうか」
初戦敗退したような気分のまま、後衛の仕事は終わった。実際は初心者用の手堅い仕事で順当だ。だが、やはり成功とは程遠いと思えてならない。
「実際の仕事を見て貰ったわけだが、どうだ?上手く立ち回れそうか?」
「……ぜんぜん、だめでした。自分はどこにいて、どこへ向かうべきかすら」
しょんぼり気味のノチェは初参戦の手応えを自分なりに評価したが、すべてがダメダメで足を引っ張ってしまったことを猛省していた。そして、山と積まれた芋虫型の魔物を見て青くなる。
「え~と、やっぱり手堅くFランクの仕事を地道に……」
「うん、そうか。怒鳴って悪かった、次は立ち位置を配慮しておこう。後衛は俺達の数メートル背後にいろ」
「え……いやそういう事じゃなくて」
ちっともこちらの意見を聞いて貰えないことに愕然とするノチェは、早くも後悔していた。
「いやすまないな。うちのリーダーは言い出したら聞かなくて」
「は、い……」
「慣れてくれよな!あ、自分は攻撃魔法だけに集中してるからよろしく」
「……はい」
前衛タンク役のパウドと攻撃魔法に特化しているらしいレタルは気さくに話しかけてくれるが、そういうことじゃないと言いたい。
「はぁ……一体どうしろと」
「まぁまぁ、初めての対戦にしてはうまく行ったはずだぜ」
「本当にそう思ってます?」
今のところは大きく消耗する場面ではないので、回復魔法は必要とされていない。それが余計にノチェを圧迫しているのだが、その空気を読む相手はいないようだ。
***
「よおし!昨日に引き続き気張って行こうぜ。今日は飛行タイプの魔物退治だ、うち漏らしは任せたぜ」
「え?」
「おうよ、任せろ!」
「ええ!?」
うち漏らしと聞かされたノチェは青くなったが、攻撃魔法特化のレタルはやる気満々だ。回復魔法で一体なにが出来るだろうとオロオロしてしまう。
「ほら、リーダーその説明じゃだめだ。意味不明過ぎる」
「え、そっかぁ?」
タンク役のパウドが肩を竦めて「ダメだ、こいつ」とやっていた。もっと言ってやってくれとノチェはうんうんと頷く。
「うち漏らしたら回復特化のノチェは何もできやしない。お前が両手両足を縛られて戦えと言われてるようなもんだ」
「あ、……そっか。悪かった、ええと後衛は結界を張って待機しててくれ。できるか?俺達が交代で参戦できるように」
「あ、はい!それならできます」
結界魔法は得意なのでホッと息を吐く、タンク役のパウドが「任せたぜ」と肩を叩く。嬉しくなったノチェは誇らしげにしていた。
「ふぅ~休憩しようぜ、お疲れさん」
「お疲れ」
「は、はい。お疲れ様です」
休憩と言われて落ち着いたノチェは小範囲に結界を張って待機していた。それを見たレタルは「長時間張るのはどうかと思う」と言ってきた。
「え?大丈夫ですよ、これくらい、いつものことでしたし」
「いつものこと?」
「はい、結界を張ってそのうえで回復するのは骨ですがやって出来ないことは」
「ええええ!?うっそでしょ!」
どういう状況でそんな無駄遣いをしてきたのかと素っ頓狂な声を上げられた。言われたノチェはキョトンとしている。
「あの……何か間違っていましたか?とある場所では日常茶飯事でしたので」
「日常って、キミはとんでもないな上級以上だよ」
回復魔法を酷使してきた彼女にとっては当たり前になっていた事だ、今更ながら恐れ入ると彼らは思う。
リーダーであるティアは頭を掻きながら話かけてきた。
「ノチェ、なんていうか……あ~あんま気張り過ぎないでな?それから古傷の回復も忘れないで」
「はい、ありがとうございます」
ノチェは古すぎる傷痕が残る右側の頬を思わず手にした。顔面に残るそれを一番気にしている。
「顔面か……可哀そうに」
「え、あの?」
彼の大きな手が彼女の右側へ添えられた、手厚く介抱できない己を恥じて「申し訳ない」と呟いた。古傷はさすがに乱暴な事は出来ないからという理由だ。
「気にしないでください、これでもちょっとづつ回復してますから」
「うん、だけど……やはり気になってな」
憐憫な顔をする彼に、気持ちだけで嬉しいとノチェは笑う。
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