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後日談
初恋2
しおりを挟むアルフォイ・ロッシーニ公爵令息は金髪碧眼の美青年である。
それゆえ一見冷淡な印象を植え付ける、だがそこが良いのだと女生徒たちは騒ぐのだ。
それに付け加え勤勉で成績も優秀だ、剣術においても追随を許さない。そういう点でも王女クリスティナと肩を並べるライバルといえた。
「やぁ、王女殿下。さきのテストでは1位を逃したねぇ?調子が悪かったのかな、いやでも20点近くも差があったか」
「あらぁ、ロッシーニ公爵令息。たかが12点差ですわ、大袈裟に言わないでくださる?」
「いいや、20点差だね!」
「12点差です!」
バチバチと火花を散らす二人は犬猿の仲といえた。
前期のテストでは王女が大差をつけて1位になったものだから、ロッシーニは今回も嫌味が酷いのだ。ぺったりとした金髪を更にぺったりとさせて御髪を乱れることなく「では」と言って去っていく。
「ぐぬぅううう!アルフォイの分際で!」
今回のテストで抜かったことをクリスティナは苛立った。時間が足りずに最後の一問を手付けずに終わったのだ。
「口惜しや!次回は負けませんからね!」
むかむかイライラが収まらないクリスティナはこうしてデザートを爆食いしているのである。
「もう一個おかわりしよう!」
「ええ?またぁ?」
ハンナはいい加減にしないとお腹を壊すわよと諌言した。それでも彼女は「もう一個だけ」と言ってカウンターへ向かうのだ。
「プリンをもう一つ」
「プリンをくれ」
”プリンを”の部分だけハモったふたりはギョッとして互いを見つめ合う。
「あ~ら、誰かと思えば」
「ふん、王女殿下じゃないですか」
嫌悪丸出しで睨みつける王女と取り澄ましたアルフォイは対照的と言えた。どこまでも反りが合わない二人である。
「あのぉ、最後の一つでして、どうしたら?」
食堂の配膳係が困った顔でこちらを見つめていた、だがやはり二人は譲り合うはずもなく。
「こちらが最初に声をかけたのだわ」
「なんだと!王女は一つ食べたじゃないか!」
睨み合いはヒートアップしてどちらも譲ろうとしないのだ。困り果てた配膳係は泣きそうな顔である。
そこにハンナが割って入った。
「はいは~い、そこまで!一つしかないなら仕方ないわ。互いに半分こでいかが?」
「はあ?」
「なんだと?」
ハンナはニコニコしながら最後のひとつを受け取ってそそくさとテーブルへ向かった。後を追うふたりは我先にと走ってきた。
「はい、半分こで~す。仲良くね?」
「なんで……」
「ぐぬぬ」
トッピングの苺を無理くり半分こにして、ハンナは二人に分けた。
「はい、あとはお二人で半分にしてくださいね?」
「「……」」
ふたりは寸分たがわず半分にするともしゃもしゃと食べた。怒りに任せて食べたアルフォイは味が分からない。
だが、クリスティナの方は美味しそうに平らげる。
「美味し~い♪」
「な!?」
その顔は蕩けるような表情だった。子供のようにニコニコで、それでいて何処か色気があった。彼はすっかり見惚れて「可愛い」と口走っていた。
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