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赤子サバイバル
いきなり捨てられた俺
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何かが至近距離で喚く声が煩い、どんどん不機嫌になるが一向に改善しないようだ。
――あぁ、なんだ俺が泣いてる声か、ならば口を噤めばいい。
視界ははっきりしないが、ぼやける目に家屋の天井らしきが映る、今世は人間として生まれたようだ。前世は小鳥だったな囀りしか出来ない生命体は自由があっても不便だったな、たしか3年くらいで死んだ。
生死を繰り返す特異な存在の自分は何万回も転生をしていて数えるのも面倒になった。
8割は人間として転生するが、酷い時は虫だったり良くて獣だ。植物になったことはない、あったのかもしれないが思考能力がないのなら経験した記憶も残らないので確認しようがない。
こうして毎回なんらかに産まれて赤子から自我を認識できても言葉が発せない脆弱さが腹立たしい。
しかし、何千何百年も命を繋ぎ経験を積んで得た知識は膨大だ。俺の財産と言える、これだけは誇りに思う。
かつては賢者などと呼ばれるほどには叡智を保持している。魔王と言われて迫害されたこともあるが……。
それにしても腹が空いたな、だが己では立てそうもない。
力は使えそうか?……うーむ、魔力は高く問題はなさそうだ。しかし、感知を使ってみたがこの家に食べ物は何もないぞ。
さては貧乏か……だったら親孝行はたくさんしてやろう。
産んでくれた事に最大の感謝をしよう、今世の人生で己の能力を存分に発揮しなくては――。
そう思ってたのに……。
自分が生まれた環境を把握するのは早かった。いつも通りだ。
言語はなんとなく理解できたが、癖があって聞き取りにくかった、俺の身体に不気味な痣があって嫌だと母親が毎日泣いていた。
父親は俺の瞳の色が左右違うことも指摘して、貧弱そうで働き手としても期待できないと暴言を吐いて酒をあおる。
容姿で差別する傾向がある国のようだ、俺はうんざりした。
終いには『この見た目では奴隷として売れそうもない』と言いやがった。
産みの親は相当のクズのようだ。
恩返しを1ミリもしたくないレベルだな。
ある日、父親らしきが俺を雑に抱えるとボロ馬車に乗り込み街から離れた。
どういうことだ?
ドンドンと人家がない方向へ走っている、とても嫌な予感がした。
役に立たない赤子を仕事に同行させる意味はない、体を捻って逃げようとしたが揺れが激しくままならない。
魔法を使っても良いが得策じゃないと耐えた。
おそらく親は俺を捨てる気だ、忌み嫌う赤子がそんなことをすれば何をされるかわからない。
やがて馬車は鬱蒼と茂る森へ入ったようだ、陽光がほとんど射さない暗い森だ。
しばらくして馬車が停車した、馬車が入れないほど道が狭くなったのか父親が俺を乱暴に掴んで歩き出した。
「ジアジアミイ、エンゾフ ザッザオウデエアヘヲ」
ふむ、なるほど。
俺をさっさと捨てたいと言いたいのだな?
折角転生したんだ、殺さずに放置してくれよな……それくらい親として情けをかけて欲しい。
馬車から30分ほど歩いた辺りで父親が立ち止まった。
山へと続く道は緩やかな斜面だがその下には河が流れている、赤子が投げ捨てられたら無事では済むまい、最悪を想定した俺は自身にコッソリ保護魔法をかけた。
幸い父親は気が付いていない、俺は身構えて時を待った。
襤褸布を巻かれた俺は茂みへ隠すように捨てられた。
投げられなくて良かったと安堵した、こんな不幸な状況だが毒親に育てられず僥倖とさえ思った。
放置された地面を伝って父親が馬車に乗り込み去って行く音が遠くから届いた。
「あえあえ、おいあえうえいら」
(やれやれ、とりあえず飯だ)
くそっ、独り言も碌に喋れない。これだから赤子の喉は弱くて嫌いだよ。
俺は寝転んだまま周辺を感知した、木の実らしいものをいくつか発見できた。
しかし、寝返りもできない赤子だ。
こんな最低な仕打ちをされたのは初めてだったので混乱する。どうしたものか、身体強化はしても元が弱すぎる。
せめて3歳くらいまでは面倒をみて欲しかったよ!
この国には孤児院すらないのか?酷いところに生を受けてしまったぞ。
愚痴はこれくらいにして食べるものが欲しい。
己で移動ができないのなら、食い物からこっちへ来されば良い。
5mほど先に小さなサルナシが生っている、”タルラ”(牽引)と念じた。言語が上手く発せないので仕方ない。
数秒で緑の実が目の前にやってきた、成功したことに安心する。
これなら飢えることはないだろう。
フヨフヨと浮かぶそれをなんとか口に入れた、歯がないので吸うしかない。
甘酸っぱい汁が口に広がった、誤飲は怖いのでゆっくり吸った。
「はふぃ」
小さな体は数個も食べると満足した、すると厄介なのが襲って来た、睡魔だ。
こんな所で寝たら野生動物に食われてしまうだろう、それにこの森の気配は普通ではない。
たぶんだが魔の森だろう、樹木と岩の形が何とも言えない不気味さがある。
かつて生きた記憶の端に重なるものをみつけた、まぁ魔物がいようと食えるものがあるならそれで良い。
問題はいかにして身体を防衛し生き残るかだ。
まさか生後数カ月でサバイバル生活をする羽目になるとは驚きだ。
さて、身体を匿うくらいの小屋は欲しいな。
眠い目を叱咤して倒木を搔き集めた、だがそこが限界だった。
仕方ないので半径3m範囲の結界を作って休むことにした。
――あぁ、なんだ俺が泣いてる声か、ならば口を噤めばいい。
視界ははっきりしないが、ぼやける目に家屋の天井らしきが映る、今世は人間として生まれたようだ。前世は小鳥だったな囀りしか出来ない生命体は自由があっても不便だったな、たしか3年くらいで死んだ。
生死を繰り返す特異な存在の自分は何万回も転生をしていて数えるのも面倒になった。
8割は人間として転生するが、酷い時は虫だったり良くて獣だ。植物になったことはない、あったのかもしれないが思考能力がないのなら経験した記憶も残らないので確認しようがない。
こうして毎回なんらかに産まれて赤子から自我を認識できても言葉が発せない脆弱さが腹立たしい。
しかし、何千何百年も命を繋ぎ経験を積んで得た知識は膨大だ。俺の財産と言える、これだけは誇りに思う。
かつては賢者などと呼ばれるほどには叡智を保持している。魔王と言われて迫害されたこともあるが……。
それにしても腹が空いたな、だが己では立てそうもない。
力は使えそうか?……うーむ、魔力は高く問題はなさそうだ。しかし、感知を使ってみたがこの家に食べ物は何もないぞ。
さては貧乏か……だったら親孝行はたくさんしてやろう。
産んでくれた事に最大の感謝をしよう、今世の人生で己の能力を存分に発揮しなくては――。
そう思ってたのに……。
自分が生まれた環境を把握するのは早かった。いつも通りだ。
言語はなんとなく理解できたが、癖があって聞き取りにくかった、俺の身体に不気味な痣があって嫌だと母親が毎日泣いていた。
父親は俺の瞳の色が左右違うことも指摘して、貧弱そうで働き手としても期待できないと暴言を吐いて酒をあおる。
容姿で差別する傾向がある国のようだ、俺はうんざりした。
終いには『この見た目では奴隷として売れそうもない』と言いやがった。
産みの親は相当のクズのようだ。
恩返しを1ミリもしたくないレベルだな。
ある日、父親らしきが俺を雑に抱えるとボロ馬車に乗り込み街から離れた。
どういうことだ?
ドンドンと人家がない方向へ走っている、とても嫌な予感がした。
役に立たない赤子を仕事に同行させる意味はない、体を捻って逃げようとしたが揺れが激しくままならない。
魔法を使っても良いが得策じゃないと耐えた。
おそらく親は俺を捨てる気だ、忌み嫌う赤子がそんなことをすれば何をされるかわからない。
やがて馬車は鬱蒼と茂る森へ入ったようだ、陽光がほとんど射さない暗い森だ。
しばらくして馬車が停車した、馬車が入れないほど道が狭くなったのか父親が俺を乱暴に掴んで歩き出した。
「ジアジアミイ、エンゾフ ザッザオウデエアヘヲ」
ふむ、なるほど。
俺をさっさと捨てたいと言いたいのだな?
折角転生したんだ、殺さずに放置してくれよな……それくらい親として情けをかけて欲しい。
馬車から30分ほど歩いた辺りで父親が立ち止まった。
山へと続く道は緩やかな斜面だがその下には河が流れている、赤子が投げ捨てられたら無事では済むまい、最悪を想定した俺は自身にコッソリ保護魔法をかけた。
幸い父親は気が付いていない、俺は身構えて時を待った。
襤褸布を巻かれた俺は茂みへ隠すように捨てられた。
投げられなくて良かったと安堵した、こんな不幸な状況だが毒親に育てられず僥倖とさえ思った。
放置された地面を伝って父親が馬車に乗り込み去って行く音が遠くから届いた。
「あえあえ、おいあえうえいら」
(やれやれ、とりあえず飯だ)
くそっ、独り言も碌に喋れない。これだから赤子の喉は弱くて嫌いだよ。
俺は寝転んだまま周辺を感知した、木の実らしいものをいくつか発見できた。
しかし、寝返りもできない赤子だ。
こんな最低な仕打ちをされたのは初めてだったので混乱する。どうしたものか、身体強化はしても元が弱すぎる。
せめて3歳くらいまでは面倒をみて欲しかったよ!
この国には孤児院すらないのか?酷いところに生を受けてしまったぞ。
愚痴はこれくらいにして食べるものが欲しい。
己で移動ができないのなら、食い物からこっちへ来されば良い。
5mほど先に小さなサルナシが生っている、”タルラ”(牽引)と念じた。言語が上手く発せないので仕方ない。
数秒で緑の実が目の前にやってきた、成功したことに安心する。
これなら飢えることはないだろう。
フヨフヨと浮かぶそれをなんとか口に入れた、歯がないので吸うしかない。
甘酸っぱい汁が口に広がった、誤飲は怖いのでゆっくり吸った。
「はふぃ」
小さな体は数個も食べると満足した、すると厄介なのが襲って来た、睡魔だ。
こんな所で寝たら野生動物に食われてしまうだろう、それにこの森の気配は普通ではない。
たぶんだが魔の森だろう、樹木と岩の形が何とも言えない不気味さがある。
かつて生きた記憶の端に重なるものをみつけた、まぁ魔物がいようと食えるものがあるならそれで良い。
問題はいかにして身体を防衛し生き残るかだ。
まさか生後数カ月でサバイバル生活をする羽目になるとは驚きだ。
さて、身体を匿うくらいの小屋は欲しいな。
眠い目を叱咤して倒木を搔き集めた、だがそこが限界だった。
仕方ないので半径3m範囲の結界を作って休むことにした。
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