捻くれ賢者の輪廻転生

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
3 / 7
赤子サバイバル

野趣あふれるスープ

しおりを挟む
「あいああういああいあう」
(有難くいただきます)


俺は絶命した熊に陳謝して、仕留めてすぐに解体処理に忙しくなった、本当は眠くて仕方ない。
やたら眠いのは体の成長に必要なのだろうな、もっと赤ん坊の身体について学んでおくべきだった。
ほぼ不死とも言える存在だったため結婚というものをしたことが無い、当然子孫もいない。

便利な異能だが巫山戯た遺伝が子に継承されるのを避けたかった、生を繰り返していても楽しいことはあまりなかったからだ。

しかし、乳幼児時期の身体の知識を持たなかったのは迂闊だった。いくらでも知る機会はあっただろうに。
こんな偏った知識のどこが賢者だ!急に恥ずかしくなったぞ……。
そもそも赤子を捨てるという発想が俺になかったから仕方ないと思う。
毒親とは恐ろしい存在だよ。


体力のなさに苛立ちながら己にバフ魔法の体力強化と覚醒効果をかけた。
力がみなぎり眠気は吹っ飛んだ、爽快な気分で解体作業をすすめる。

覚醒魔法は最初からかけていれば楽だったろうが、赤子の身体では後の反動に耐えられるか不安だからな。
もし死んだら次に転生できるのはいつになるか定かじゃないし人間に生まれる保証もない。
今世こそを果たしたい。

とりあえず丸一日は元気に行動できる程度に留めよう。


血抜きの間だけ休み、栄養を摂った。砕いて水に溶かした胡桃のミルクはまぁまぁだった。
砂糖があればより美味しいだろうが、蜂蜜さえこの辺りには見当たらないからな。


それから風魔法の斬撃を駆使して毛皮と肉、骨を分けた。
骨はスープを取れるし、肉は干して貯蔵しよう。歯が生えたら肉スープが食べられるぞ。

やっと栄養価の高いものを口にできそうだ、だが固形はやはり無理だろうから骨スープだけで過ごそう。
岩塩があれば良いのだが今のところ発見できてない。

見つけたとしたらそこは獣が寄り付く、ミネラルを欲する野生動物が舐めに現れるからな。
いずれはその周辺に罠を仕掛けて鹿肉などが取れたら嬉しい。


熊の解体が終わると器具がないことに気が付いてガッカリした。
スープを煮込みたくても鍋がない、食器は木を削ればなんとかなってもこればかりは……。

「いあああい、えんいんううあ」
(仕方ない、錬成するか)

錬成には魔力をたっぷり消費するので加減が必要だ。
鉄分を含んだ岩石を探して重圧魔法で粉砕した、鉄鉱と石灰がとれた足りない材料は魔法で補い実行する。
直径20センチほどの小鍋を作った、もっと大きくしたかったが乳児の体力ではこれが限界のようだ。

洗浄してバキバキに砕いた骨を早速煮込んだ。
恐ろしく獣臭い湯気に吐きそうになったが贅沢は言えない、煮たててアクの出た汁を全て捨ててまた洗浄する。
二度目の骨煮込みには野生の香草を採取して多めにぶち込む。
塩がないので不味そうだが白濁したスープが完成した。

コラーゲンたっぷりだろうから栄養は摂れるぞ。
アクと浮いた脂を捨てて旨味の部分だけを口元へ運んだ、もちろん空気魔法を使って。
程よく冷えたスープをおずおず飲み込む。

うん、思ったよりも悪くない。
アク抜きして香草で煮たお陰で匂いはマシになったようだ、塩はなくても乳児の舌は敏感なのか旨味だけで十分だった。成長したら米か麺を入れて食べてみたい。



***

翌日、熊の毛皮を鞣すことにした。
腐らないうちにに仕上げなければならない、内側にこびりついた脂を丁寧に削ぎ落す。
樹脂液を使って防腐する必要があるな、魔の森ならばミチェスの木が良い、どこにでも生えてるし。木の皮を煮込んでタンニンをだな……、浸す桶がないことに気が付いて丸太の反面をくり抜き細長の桶にした。

それにしても、またも煮込むのか……なんて面倒なんだ。
魔法ばかりに頼らず竈を造ったほうが楽かもしれないな。


そもそも乳児がサバイバル生活をしなきゃならないのは不憫すぎないか?
つくづく俺を捨てて行った親を怨むぜ。
魔法が使えなかったらと想像してゾッとした。せめて仲間がいればと思い、土傀儡を作ることも考えたが失敗すると手に負えない。

傀儡が暴走したら赤ん坊の俺を殺す危険をはらむ。
……せめて5歳くらいまでは我慢するか。


毛皮が完成するのは数カ月は先だ、ぎりぎり冬までには完成させたい。
周囲の景色を見るに初夏といったところだろうか。

ならば樹脂取りついでに木綿を作れないか?
幸いコウゾは生えているし、良い案かもしれない。なによりパンツが欲しいからな。
不織布でも良いから布が欲しい。この襤褸切れよりはいくらかマシだろう。



そうと決めた俺はタンニン液に毛皮を浸して、コウゾの木まで移動することにした。
生活拠点が出来たことで気が大きくなっていた。

這いまわるわけにもいかないので風魔法に浮かんで探索をした。
人の目があったら何事かと騒がれるだろうな。

「ん、おういああおううあえうあうはいうおあ?」
(ん、そう言えば魔法が使えるヤツはいるのか?)


鳥として生きて、人の子に転生してからどれほど年数が経ったかいまだに把握してない。
知る前に孤児になったからな、これはシンドイぞ。

最後に人として生きた時代には魔法師は国に数人いた程度だった。
魔力はあっても魔法を使える技量がなければ意味はない、魔法自体の力が衰退していたら無闇に使うのは良くないな。


うーむ、俺を捨てた両親はたぶん使えない。
わざわざ馬車を使ってここまで来たんだ、簡単な移動魔法すら使えない無能ということが確定してる。
そんなことをツラツラ考えていたらコウゾの赤い実が群生する所に辿り着いた。

先ずは腹ごしらえとばかりに千切って食べた。
種をペッペッと吐いては吸い付いつくこと十数分。軽く眠気が来たので隣に生えるブナの木の上で休むことにした。
葛の蔦があったのでそれを体と木に巻きつけて船を漕ぎ始めた。


どれほど寝たのか、下方から聞こえる唸り声に目を覚ました。
声から察するにモルテベアのようだ、観察した限りではヤケに小さいのが2頭いた。まだ子熊のようだ。
ということは……近くに親がいてもおかしくないぞ。厄介な事に仔連れの熊は余計に気が荒い。


無視してコウゾを刈り取るのも良いが、再び熊と戦うのは面倒に思う。
無闇に命を狩るのは好きじゃないし。

さて、どうしようか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...