捻くれ賢者の輪廻転生

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
7 / 7
童子下剋上

名無の少年と狐たち

しおりを挟む
あれから同じ季節を数えて5度目になった。正直言えば俺にとって季節は無関係なんだけどな。
ここに住み付いて5年、魔の森が薄暗い原因が上空に漂う瘴気のせいと知った俺は己のナワバリ周辺を掃うことで陽光を手に入れた。
光を存分に浴びた地はみるみる豊かになり、畑はもちろん森も実りが多くなっていた。
おかげで魔物の性格も大分丸くなったと言える、獰猛さは完全には消えないけど。

どうしてここまで瘴気が濃くなったのかは不明。
いずれは原因の究明をしたいが、生態系が崩れるのも危惧する。
余計な人間も来ないから、それなりにここを気に入ってるんだ、だから急には動く気になれない。


自分も成長して手足が伸び、魔力もぐんと跳ね上がった。5年も生き延びれた、これは単純に嬉しい。
全盛期に比べれば魔力量は4分の1にも満たないがレッサードラゴンの群れくらいは殲滅できる。

ぶっちゃけこの国の魔の森の頂点にいるわけだ、今の所だけど。

「つーまーりー俺に敵なし?別に戦ってもないけどな」
家の屋根に寝そべって小ぶりの林檎を齧る、まだ酸っぱいが食えなくはない。
もう少し改良しないといけないな。


「アノン、すっかり言葉がうまくなった」
軒下から熊のドナが声をかけてきた、足元には収穫したばかりの山葡萄の山がある。
そろそろ葡萄酒が欲しいな。身は子供でも中身はオッサンだから欲に勝てない。

「まぁね、俺も5歳だから舌を噛むようなことも減ったさ」
フワリと屋根から降り立てばドナが「相変わらずデタラメなヤツだ」と文句を言う。
彼らから見れば羽も生えてない人間がどうやって飛ぶのか理解し難いらしい。

「そんなことよりウモはどうしたの?きょうは魚が取れないのかな」
いつもなら籠いっぱいの魚を持って帰るころだ。俺のためだけにいつも狩りをしてくれるのだ。
完全草食のモルテベアにとっては肉類は興味ないだろうに。

彼らと棲むうちに呼び名が必要になり、俺は名前さえ貰えず捨てられたから”アノン・ニモ名を持たぬ者”と自らに付けた。ドナとウモは単純に女と男と呼ぶようになった。

それなりに気に入っているから変更するつもりはない。名前に拘っても無駄だからな。
成人になり本来の力が戻るまで平和に生きれたらそれでいい。



***

ウモが戻ったのは陽が傾いた頃だった、お小言のひとつもと思ったがそれどころではなくなった。
すっかり成獣のオスに成長したウモは、その背後に魔物の集団を連れて帰ってきたからだ。
うーむ、どっから突っ込めば?


気位が高くて接触ひとつさけていた狐の魔物ドーロボルペ達が大勢いた。
とても面倒で嫌な予感がした、碌なことはないとわかってはいるが黄金の狐は嫌いじゃない。
だって成獣は大きくてカッコイイし、子狐はコロコロしていて可愛いからな。

「アノン、済まない。独断で連れてきた、少々哀れな話だったのだ」
ウモが申し訳なさそうに言うので無下にもできない。

「ああ、話くらいなら聞いてやる。まずは手負いのものを癒そうそれから飯だ」
目に見えて虫の息と見える若い2頭の狐をゴザの上に横たえさえて具合を見る。
赤黒く壊死した部位を洗浄して、傷の様子を見た。

「……なるほど毒にやられたのか、息が辛そうなのは失血だけではないな」
解毒魔法をかけてやると”ハッハッ”と短い呼吸で辛そうだった狐の息が長く深いものに変化した。
2頭ともに同じ毒を受けたようだ、辛かったな。


「ストラレ、オーメントサングエ」
二頭に縫合魔法と増血をかけてやった、俺は医者じゃないからこれくらいしかできない。
体力はありそうだから死ぬことはないだろう。

俺は庭の中央に藁ゴザを敷いて簡易な宴の場を設えた。
狐は雑食だから適当に精がつきそうなものを出して彼らを歓迎してやった。
族長らしい、ひと際でかい狐が人型に化けて一歩前へ出てきた。

精悍な顔つきの青年の姿はとても美しい。


「手厚い看護と歓迎に感謝する、我は族長デモテスタだ。我が同胞が助かって嬉しい」
「あぁ、俺はアノン。見ての通りただの人間だ、楽にしてくれ」


孤高の種族とはいえ、ここまでされれば交流するほかないだろう。
俺は取って置きのサルナシ酒を提供して族長の出方を見た、デモテスタは大人しく酒を飲んだ。
盃を交わすことは他種族同士の同盟を表す。俺は密かにほくそ笑んだ。


「それで、ドーロボルペ黄金の狐ほどの強い魔物を苦しめる相手はなんだ?集団で狩りをする君達が負ける相手なのか」

俺がそう問うとデモテスタは苦い顔をしたが吐露する。
彼らを襲ったのは東から流れてきたオーグル族だと言った、鬼の魔族が敵と聞いて俺は酒を吹きだしそうになった。
ヤツらは狡猾で残忍な化物だ、できれば関わりたくない。

「なってこった、静かに暮らしたかったんだがな」
俺の感想を聞いてデモテスタが申し訳なさそうに頭を下げた。

「我の名も鬼の意味を含む、それなのに鬼人相手では歯が立ちそうにもない。面目が立たぬ」
「……まぁまぁ、俺を頼ってくれたのはシンプルに誇らしいよ。役に立てるのは悪くない」

「それでは!?」
「あぁ、盃を交わしちゃったからな。狐のみんなは俺が守ってやろう」

族長は本来の姿に戻ると俺に擦り寄って感謝を表した。尻尾がグルングルンと旋回していて嬉しそうだ。
若干獣臭いがこのモフモフの肌触りは悪くないな。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

処理中です...