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裏切り
しおりを挟む用意していた馬が動けなくなった、飼葉もままならなくなったせいである。止む無く痩せ馬と馬車を手放して路銀の足しにした。だが、我儘が過ぎるベネッタがすぐに使い果たしてしまうのだ。
「なあ、もう少し考えて使ってくれないか?これでは城に戻るまで持たないぞ」
「何を言っているの、私は王太子妃なのよ!最上のものを用意して貰わないと」
「はぁ……話にならない」
頭を悩ませるテベリオは安宿で目を覚まして、なるべく早く発とうと思う。辻馬車を利用するのは憚れたが、身分を隠して乗り込む他はないだろうと結論づけた。
「さあ、起きるんだ!グズグズしている暇はない、なるべく早く城に着かなければ」
「う~ん、何よう……まだ陽が明けてないわ」
外は真っ暗で早朝と見えた、こんなに早く起きるのは初めてのことだった。さっそく不満を言うベネッタだが、それを許す余裕は彼にはなかった。
「グズグズするならば置いて行く!お前のせいでどれほど無駄な時間を食ったと思ってるんだ!」
語気荒く言う王太子の変化にビクリとするベネッタである、散々と我儘を言って来た彼女は顔色が悪い。
「そ、そんなに怒らなくても……ねぇ待って!お願いよ」
「ならば早く仕度をするんだ!侍女なんていないんだからな!」
最早、賃金を払う余裕がなかった王太子は彼女らを解雇していた、残るのは側近と騎士達だけなのだ。
準備を整えて待っていると側近たちが中々出てこない、怠慢が過ぎると怒る王太子だ。だか、いくら待ってもその姿が見えない。止む無く宿の主人に「起こしてくれないか」と尋ねる。
「は?お連れの方たちでしたらとっくに出て行きましたが」
「なんだって!?それはいつだ!」
「え~と、確か昨夜のうちに……うん、間違いない夕飯を食べた後にはもう」
「そんな!」
とうに見限っていた側近と騎士達は逃亡していたのだ、城からの報告を受けてのことだ。最早戻ることは叶わないと知った従者たちは方々に散った後だった。
「くそう!酷い裏切り行為じゃないか!」
「え?何、なんなのよ?」
事態を把握していない呑気なベネッタを見て”こんなにも苛立つ女だったのか”と今更ながら思う。
「とにかく私は城に戻る!付いてくるならば勝手にしろ!身分は隠せよ」
「ま、待ってよぉ!おいて行かないでぇ」
辻馬車に乗り込むとなるべくベネッタから離れて乗った、グズグズと文句ばかりを言う女にイライラするからだ。それを知ってか知らずか、狭い馬車内で「テベリオ~」と呼ぶ彼女だった。
それを聞き咎めた誰かが言う。
「テベリオだって?落ちた王太子と同じ名じゃないか」
「そうよ!その王太子なのよ!ねぇ、テベリオ?」
身分を隠せと言われたのをすっかり忘れた彼女は自慢げに話してしまう。王太子は頭が痛くなった、どうしてこう無能なのだろうと思う。やはり見た目だけで選んだ妃は役に立たないのだと。
色々と危惧した彼だったが「こんな所に王族がいるものか」と笑い飛ばされてしまった。
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