完結 悪意を向けられたので返しただけですが、何か不満でも?

音爽(ネソウ)

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噛み合わないふたり

捏造した証拠を机に並べてご満悦なヒーナ、対して気が乗らなそうなフレッド王子はボンヤリ空を見つめている。
ヒーナはそんなことは気にもせずに断罪劇の段取りを無い頭で考えていた。
全ては己の欲望を満たすためだ、誰が辛酸を舐め不幸に陥ろうが彼女には無関係なのだ。
「くふふ、楽しみ。大勢の前で恥を掻いて泣き崩れる姿を想像するだけで心躍るわぁ!」
腹黒いことをサラリと言う彼女を、王子は虚ろな目で眺める。散々抱いて愛を囁いた相手なのに何の感情も湧いてこないのだ。

「ヒーナ……キミは王太子妃教育に耐えられそうかい?」
未来の王妃は学ぶことが膨大である、他国の言語を覚えるだけでも相当苦労するに違いない。いま時点でテーブルマナーすら怪しいヒーナは最低限の常識すら身についていない。
最低位の男爵家出身の彼女は平民出の母親を慕っているが、母から習うことは庶民の常識と男を誑かして伸し上がる狡猾さだけだ。

それはそれで処世術の一種であるが、世界のお歴々を相手にできるものではないし通じない。
金持ちの愛人にはなれても王妃の器にはなれないのだ。
あまりにもかけ離れ遠い身分であるのに、夢見てばかりのヒーナは気が付くことはないだろう。

「キミは側室か愛妾が似合っていると思うんだ、いいや側室ですら危うい。主要貴族の名鑑を開いたことはあるかい?」
問われたヒーナは首を傾げて少し考える素振りを見せた、しかしそれはポーズだけでなにも考えていない。
「顔と名を覚えるのでしょ?ん~興味ないオジサンの事なんてヒーナには無理~、若くてイケメンなら頑張れるかもだけどね」
フレッドは期待はしていなかったが、想像以上にバカ丸出しの言葉を吐いた彼女に「やはり王妃は無理だ」と判断せざるを得なかった。


そこで”ナディアを王妃にして愛妾におさまる”ことを提案してみた王子だった。
でも強欲なヒーナはそれを即答で拒否をした、憎たらしいナディアを蹴落とすことが目的で事を進めてきた彼女にとって王子の提案は裏切りなのだから。
「信じらんない!ずっと私と結婚すると妃に迎えたいと言ってたくせに、酷い裏切りだわ!」
純潔まで捧げた相手に本妻にはできないと言われれば怒って当然だろう。

しかし、王子と言う立場上、使えない妃は足手纏いになる。
今更ながら現実を見出したフレッドは、微かに残っていたヒーナへの情すらも霧散しそうになっている。
発端は彼女の本心を聞かされた裏庭でのことだが、逢瀬を重ねる度に不信感が募るばかりで下半身の欲さえ湧いてこないのだ。

近頃はご無沙汰である事もヒーナは気に入らない、どんなに技を使っても淫靡な下着で誘惑しても王子はちっともその気にならない。美貌に絶対的な自信を持っていた彼女は苛立った。
老人でもないのに不能になった王子の心情が理解できないヒーナは彼の身分にだけ執着している。
「なにがなんでも王妃になるから!勉強不足がなに?それをカバーできるほどの魅力を私は持っているわ!」
「……そうか、わかったよ。だがナディアは側室として迎えるそれが条件だ」
「えぇ~?側室にするの?やだー」

面倒な公務全般をナディアに任せると言い聞かせると単純なヒーナは「それならば我慢する」と昏い笑顔で了承した。
愚かな王子はヒーナをお飾りの王妃として迎え、優秀なナディアを公務をこなす側室にすることにした。
とうに公爵令嬢との婚約は破棄になっている事を知らない王子はそれでうまく収まると高を括った。

「断罪劇は卒業パーティ一択よね!全校生徒はもちろん親である貴族も大勢集まるのだもの!」
恥を掻かせる大舞台はそれしかないと鼻息荒いヒーナである。
「そうだな、俺も卒業だから父上もいらっしゃる。盛大な断罪劇を披露せねば」
なるようになれと投げ遣りになったフレッド王子はヒーナに賛同することを決めてしまったのである。


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